ガンスリンガー

限界集落村人

9

こんな死にそうになった経験はいままでない。そもそも自衛隊は実戦経験が無く、自分の実力がどこまでなのか分かる機会はなかった。
俺は強いのか、それだけが知りたかった。だから、この龍を倒せば俺は強いのかどうか分かる。
俺はやっぱり自分でも思うほどバカなやつだ。
上空を旋回していた邪悪龍は、俺を死んでいるのかと勘違いしている様子だった。
俺がそっと起き上がった時、ハミルが俺を呼んだ。
「手出しするな!これは俺のだ。」
俺はそう言って今にも戦闘を中断しかねないハミルを止めた。
俺はこちらに気づいていない邪悪龍を見て、背中に背負っていたFIM92 スティンガーを構えた。
最初に放ったM82A1の弾倉の初段にだけ、強力な赤外線を放つ改造弾。
「これでゲーム終了だな。」
俺はスティンガーを放つ。邪悪龍はそれに気づき、ミサイルを回避しようとするが、スティンガーは赤外線を放つ邪悪龍を追跡した。
先制攻撃で急所を狙った事もあり、邪悪龍は弱っていた。そしてついに失速し、スティンガーが命中する。
邪悪龍はそのまま上空からじめんに真っ逆さまで落ちた。
すぐにハミルとマリが駆け寄ってきた。
「裕一殿ーーー!私は感動致しましたぞ!あの邪悪龍をたった一人で倒してしまうなんて!」
「ハミル、お前途中で足がすくんで動けなくなっていただろ。」
「あの龍を前に私は恐怖のあまり足が震えて動く事もできず…。ですが、マリは裕一殿が吹き飛ばされた時女々しく裕一ぃー!って叫んでおられましたよね?」
「ば…、私がそんな事言うわけがないだろう!」
たしかに一回だけ変な声が聞こえたと思ったら、あれはマリだったのか。
でも、びびって助けに入らなかったのか、俺の言ったことを守ってくれたのかどちらかは分からないが、まぁこれだけは言える。
マリは意外と可愛い面がある。

俺は証拠として邪悪龍の皮と角を持ち帰り、マルス伯爵の屋敷に行った。
俺がマルスに邪悪龍の皮と角を渡すと、マルスは首を傾げ、一言。
「なにこれ?」
「なにこれって、邪悪龍の皮と角ですけど。」
俺がそう言うとマルスは邪悪龍の皮と角を俺に返し、ため息をついた。
「これ、邪悪龍のやつじゃないけど…。」
俺はそれを聞いた瞬間倒れそうになった。あれだけやったのに邪悪龍じゃなかった落ちなんて、最悪すぎる。
「まぁ、中級クラスのドラゴンかなぁ。大体冒険者レベル27相当だから、ギルド協会で申請したら昇進してバッチ変えてもらえるから…。」
そう言われ俺はマルスの屋敷を出ると、ハミルとマリがやって来た。
「本当にすまない。私はあれが邪悪龍だとばかり思っていて。すまない、本当にすまない。」
ハミルは土下座して謝った。
「顔あげてくださいよ。まぁ失敗は誰にでもありますし。それにもし本当の邪悪龍とやってたら死んでたかもしれないですし、今回は結果的に生きていてよかったということで。」
俺がハミルにそう伝えると、ハミルは号泣し始めた。
「なんと心の広いお方なんだ!素晴らしい。私はあなたを心から敬意を表します。」
「いやいや決してそんな事は……ていうか質問なんですけど、中級クラスのドラゴンってどのくらい強いですか?」
するとさっきまで無口になっていたマリが急に態度を変えて笑いながらこう言った。
「中級クラスのドラゴンじゃ、私が一人で戦っても勝てるよ。」
俺はショックを受けてその場から逃げ出したくなった。強さを知りたいとか恥ずかしすぎて死にたくなった。
「それより、あんたが使ってるその魔法器、かなりの威力だな」
「魔法器って…これはそんな代物じゃないぞ。」
「は?あんたあのドラゴン相手に魔法使ってなかったし、魔法器でも使ってなきゃ人間がドラゴンを倒すなんてありえないって。」
「言っとくが、俺は魔法も魔法器も使ってないぞ。これだって人間が作った武器だぜ?」
俺がそう言った瞬間、二人はまさかという表情をしていた。
「裕一殿、生身の人間が魔法も使わず、更に魔法器なしでドラゴンを倒すのは無理ですぞ。ドラゴンは弓や剣などでは死にません。私たちはレベル50の冒険者ですが、魔法を使わなければドラゴンを倒すことなどできませんぞ。もし本当にそれが魔法器でないのなら、あなたは生身でドラゴンを倒した王国の歴史上最初の人物になりますぞ。」
二人の顔を深刻な表情になり、少し怖くなった。
「いやいや、大袈裟だろ。」
「大袈裟なんかではありません。もしこの噂が広まればあなたは王国で伝説として讃えられるでしょう。」
最初は落ち込んだが、今は逆に嬉しいを通り越して怖くなって来た。
「できればこの話は秘密にしてくれませんか?マルス伯爵にも言わないでもらえると…お願いします。」
俺はハミルとマリに深く頭を下げて頼んだ。
「しょうがないな、特別にマルス様にも話さないでやる。」
「裕一殿の頼みなら全く問題ありませんぞ。」
二人がわかってくれたようでよかった。
俺は「ありがとう。」と一言言った。
「ただし、条件がある。」
「条件?」
「ああ、私の依頼を受けてくれ。」

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