ガンスリンガー

限界集落村人

6

次の日の朝、モヤモヤした気持ちをなんとか排除して、メイサと共にカイヤという人物の元へ向かった。
ルイスは爆睡し、起きる気配がなかったため置いてきた。
「あの、裕一様……聞いてもいいですか?」
「ん?」
「あの、その…昨日私の父と話してた事……。」
これは不覚だった。あの場にいないから大丈夫だと思っていたら、聞かれていたとは。
「考えさせて下さいって言ってましたよね……。」
「い、言ったけど…、君は嫌だろ、俺は今24だ。君とは歳が離れてる。」
「私は嫌じゃないです……むしろ裕一様なら……。」
メイサはそう言って顔を赤くしていた。
まずい。年頃の女の子、更に異性経験が少なく、恋愛に無知なんだろう。初めてのことで、多分緊張のせいでこんな事になってしまっているんだろう。
しかしどうだ、すごく俺のタイプだ。真面目で優しい性格、どストライクだ。昔一度だけ狂気のような女と付き合っていたが、それに比べたら最高だ。
メイサと結婚したら、むふふな毎日が過ごせると考えると、頭がそれだけでいっぱいになってしまう。
カイヤの家に向かいながら、俺の心は思春期の少年のようになっていた。
「着きましたよ、ここがカイヤさんの自宅です。」
メイサはそう言ってノックを二回して扉を開けた。そして中にずかずかと入っていくメイサ。
「おいおい、勝手に入って大丈夫なのか?」
「ああ、この村の人はみんな仲がいいので鍵も閉めてないんです。カイヤさんは寝てることが多いからみんな用があるときは広間まで行くんです。」
鍵もしないで無警戒なんて、山奥の小さな村に住む俺のばあちゃんと同じだ。
広間に行くと、ひとりの老婆が椅子に腰掛けて座っていた。
「カイヤさーん、メイサでーす。」
メイサは少し大きな声で呼びかけるが、聞こえていないのか反応していなかった。
するとメイサは耳もとで呼びかけると、くるっと振り返り、「あら〜メイサちゃん、今日はどうしたんだい?」と答えた。
「今日は遠くから14地区の領主様の使いの方がやってきましたよー。」
「あらぁ、遥々ご苦労様〜。」
カイヤは今にも眠くなりそうなピッチで喋っていた。
これじゃあ情報を聞くのは難しそうだ。
俺は無理かと思いながらも、大魔術師を知らないかとカイヤに尋ねた。
「大魔術師かい?」
「ええ、グリムホークの大魔術師と呼ばれていた方なのですが。」
「ああ、それは私だねぇ…。」
「……え?あ、何ですか?」
「だから、私がグリムホークの大魔術師じゃよ。」
一度耳を疑ったが間違いない、この老婆は自分が大魔術師だと言っていた。
「で、私に何の用だい?また戦争の手伝いかい?」
「いえ、あなたを連れて来いという命令でして、そこまでは。」
「しょうがないねぇ、日本の兵隊さんは。」
「え…!?今なんて?」
「あんたは日本から来た自衛隊の兵隊さんなんじゃろ?」
「何故それを!?あなたは日本を知っているんですか?」
「知ってたわけじゃないさ、あんたの頭の中をちいと覗いただけじゃよ。」
「頭の中を覗いた…?」
一瞬なにを言っているのかと思ったが、頭の中を覗いたって、そんなことが可能なのか。
しかし、これでもはや大魔術師だと確認するまでもない、決定的な証拠になった。
「カイヤ殿、どうか第14地区まで同行願います。」
「でも私はもうこんなでね、今じゃ歩くこともできない体になってしまって、14地区まで行くのは大変じゃよ。動いたら死んじゃうかもしれんよ?」
「しかしこちらとしてはどうしても来て頂きたいのですが……。」
「ならメイサを連れて行くといい。メイサは私の一番弟子、今の私より魔力は強大なもの。今みたいにあなたの頭の中を覗くのも容易じゃぞ。」
メイサはそう言われて明らかに戸惑っていた。というかもしかして俺の頭の中をのぞいてだなんてないだろうな、あったら恥ずかしすぎる。
「決めるのはメイサ、あんた次第じゃよ。」
「わ、私、裕一様と一緒にいこうと思います!」
メイサのその決意の表情を見たカイヤは、頷いて笑顔を浮かべていた。
「父上にも相談すれば分かってくれよう。だがメイサを連れて行くのは条件付きじゃろうがの、あっはっはっはっはっはっは!!」
カイヤは俺を見て大笑いしていたが、理由は言うまでもない。
俺とメイサはカイヤの家を後にした。

俺とメイサが村に戻ると、そこには銀の鎧を着た兵士達がメイサの父となにやら話をしていた。
するとルイスが息を荒げて俺たちの元に走ってきた。
「どうしたんだルイス?」
俺が尋ねると、ルイスは息を詰まらせながら必死になにかを言おうとしていた。
「落ち着けルイス、なにがあったんだ?」
「今、村に19地区の兵士が来ていて、裕一殿を探しています。」
「それがそんなに慌てることなのか?」
「そりゃあもう非常事態ですよ!19地区は反王政派閥なんですよ。」
「ん?だからなんだ?」
「あなたなんにも知らないんですか!!?」
怒られても、俺はこの世界に関する歴史や文化は全く知らない。だからしょうがない。
「世界に国は帝国、王国、共和国、聖戦同盟、魔族とありますが、王国は巨大な故に、内部でも敵対している地区があるんですよ。僕たちの主は王政派閥、19地区は反王政派閥なんですよ。だから敵対してる領地に入られるとなにかといちゃもんつけてその人間を捕らえたりするんですよ。」
「でもここは確か18地区だろ?19地区は関係ないんじゃないのか?」
「それが18地区の領主はまだ歳は11で、19地区はそれをいい事に18地区を自分たちのもののように扱っているんです。だから18地区の兵士は王政派閥の地区の人間を見かけたら捕まえはしないものの、19地区に報告しているんですよ。だから18地区の首都で休憩した時に報告されたんでしょう。あの時は私もあなたに任せて身分証明を詰所で見せたのが間違いでした。」
「今更言われてもなぁ……。」
「とにかく今は逃げましょう、メイサさんの父上殿が時間を稼いでいますが長くは持たないと言っていました。」
この世界でも内輪揉めってやつはあるのか。
全く面倒な事態だ。例によって、こういう場合従わない者は罰するのだろう。口を割らないメイサの父は殺される可能性もある。黙って逃げるなんてもちろん俺にはできない。日本の自衛隊入った時から、他人を助けたい衝動にかられるバカで、考えるより先に体が動いてしまう。
「ルイス、メイサを頼んだ。」
俺は走ってハンビーが止めてある村の入り口まで向かった。

ハンビーの周りには兵士が四人立っていた。俺は離れていた一人を後ろから首の骨をへし折り、死体を草むらの陰に隠した。
そいつの持っていた剣をハンビーの近くに立っていた一番近い兵士の首元に一撃、その後もう一人の腕をとって向かい側にいた兵士に投げ飛ばし、剣を素早く拾って喉を切り裂いた。
ハンビーの周りに敵はいなくなり、俺は積んであったM4カービンを取り、村の中心に向かった。
村の中心には村人が集められ、案の定死刑執行が始まろうとしていた。
一番偉そうに支持している白馬に乗ったブタ兵士が指揮官だろう。数は全部で五十人前後。
「貴様らは19地区の領主に逆らった罪で反逆罪とし、全員死刑とする!」
村人たちはみな怯えて泣き喚いていた。そりゃそうだ。自白しなかったら殺すなんてナチスのような外道だな。
俺は少し小高い場所を陣取り、狙いを定めた。
指揮官の男は村人を一列に並べてしゃがませ、兵士に斬首を命令していた。
「よし、やれ!」という合図の瞬間に俺は指揮官の手前の兵士の頭を撃ち抜いた。指揮官はなにがおきたのか分からず、顔についた血を確認して騒ぎ出す。俺は他の兵士の頭も次々と撃ち抜き、兵士の半数が走って逃げ出す始末。
「馬鹿者!逃げるな!」
俺は一人、また一人と撃ち殺し、広場を制圧する。
最終的には指揮官だけが死体に囲まれその場に取り残された。
俺が広場に出てくると、指揮官は突如うずくまり、命乞いを始めた。
「お願いします!命だけは助けてくだされ!!」
「どうしよっかなぁ〜……。」
「本当に、なんでもします、許してください。」
すごい誠意の無いその場しのぎだとは分かっているが、一応捕虜として連れて帰るとしよう。
俺は指揮官を縛ってハンビーに乗せた。
「我々を救ってくださり、もうなんと言っていいやら……。」
メイサの父は俺に深く頭を下げて、すごく感謝された。
するとそこへ隠れていたメイサとルイスがやってきた。
「大丈夫だったお父さん?」
「私は大丈夫だ、それより裕一様に折り入って頼みがあります。」
メイサの父はそう言って地面に膝をつき、俺の見覚えねある体制をとった。
「メイサと結婚してやってください。」
それは土下座だ。


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