ガンスリンガー

限界集落村人

1

防弾仕様車に対する攻撃は色々ある。貫通弾を使用した運転手の狙撃、IEDや地雷で破壊、対戦車ロケット砲を打ち込むってのもあるが、弓矢っていう時代遅れの古代武器で攻撃してきたってのはこれが初めてだ。
防弾で完全武装したM998A1が二両、ストライカーが一両。弓矢でいくら攻撃しようが俺たちが全滅する事はない。
心配性のイギリス軍特殊部隊、SASのイーライはやけに俺に大丈夫かと質問してきた。だから俺はその度にイーライに安心しろと言ってやっている。
一向に止まない弓矢の攻撃も止み、俺は窓の外を確認した。
敵の姿は約50m先に100人ほど見えていたが、弓を撃つのをやめていた。やつらはもしかするとこの土地の原住民って可能性がある。この公式には発表されていない太平洋上の島。そんなのがいてもおかしくは無い。
俺とイーライは一番先頭の車両にいるから敵の姿が見えているが、後列にいるやつやら敵を視認できていないだろう。
無線はなぜか使用できない。最新鋭の衛星通信システムが役に立っていない。これならまだ従来のやつのがマシだ。
俺はサイドミラーで後ろの車両にハンドサインで敵の数と距離を教えた。
サイドミラーを再び見ると、後ろの車両から撃ち返せとジェスチャーしている姿が見えた。
「撃ち返せだとさ。イーライ、別に殺す必要は無い。威嚇射撃でもして様子を見てくれ。」
俺はイーライにそう言って向こうの様子を見た。
イーライは搭載されたM2を敵の方に向け、撃ち始めた。
すると連中は慌てて逃げ出し、周囲に人影は無くなった。
「イーライ、もういいぞ。」
俺がそう言うとイーライは撃つのをやめ、辺りをキョロキョロ見回した。
「しかしあいつらなんだったんだ?あんなもんで俺たちを攻撃してくるなんていい度胸だぜ。」
「まぁ大方検討はつくさ。この島に住む原住民と言ったところだろ。外と接触してないから時代が止まってるんだろ。」
「にしては連中の着てる服は古代ローマ帝国の歴史に出てきそうな格好してたぜ?それにこれを見てみろよ。」
イーライはそう言って車両の上に刺さらず落ちていた弓矢を一本俺に渡した。
「これがどうしたんだ?」
「この弓矢、原住民が作るにしてはよくできてるし、それにこれだけ精巧に量産する技術があるなんて思えない。原住民なんてお前は言っているが、ブリーフィングの衛星写真でこの島を見たときも人が住んでるような場所はなかったぞ。」
「なんだ、じゃああいつらはなんだって言うんだ?上司が用意したサプライズかなにかか?」
「さぁな。俺にも分からんが、やつらが原住民なんかじゃ無いってのは確かだ。とにかく奴らは居なくなったしあいつらと話し合おう。」
イーライはそう言って車から降り、後ろの車両に向かった。
イーライがいうあいつらとは、この演習の為組織された部隊の連中だ。各国の精鋭が集められて組織されている。
アメリカ、イギリス、ロシア、ドイツ、中国、カナダ、そして日本。
まず言っておきたいのが、ロシアとアメリカという最悪な組み合わせをどうにかしてほしい。よりによってこの二大国のやつらは一緒に組まされ、上の決定でロシアから来た女兵士、スペツナズに所属するディーナがこのチームの小隊長に任命された。そんな事に納得できないアメリカのSeals所属のクーパーは演習が決まった時から苛立っている。
ディーナは俺たちに現状報告を求めた。
「負傷者0、車両も問題ありません。ただ通信設備が故障。本部とも通信は繋がらず、我々の使用する無線も使えません。」
ドイツのKSKのユーゲルがそう報告した。
するとカナダのJTF2に所属するクラークは19キロ先の合流地点に向かうべきだと言い、中国のSLCUのリーはそれを反対し、一度引き返して米海兵隊がいるキャンプに行くべきと言った。俺やイーライはリーの意見に賛成したが、ユーゲルはクラークの意見に賛成していた。アメリカ人のクーパーは何故か黙りを決め込んでいた。
「一度海兵隊のキャンプに戻る。それでいいいな?」
ディーナは皆にそう言って引き返す準備をするよう言った。しかしクーパーがここで反論する。
「ちょっと待て。海兵隊のキャンプに戻るのはいいが、合流地点で合流するはずのやつらはどうするつもりだ?あいつらはまだ新兵だ。そんなやつらがもし俺たちと同じ状況だとしたらどうする?通信も繋がらない、俺たちもこない。そんな状況でさっきの連中に遭遇したら死傷者が出るかもしれんぞ?」
クーパーが心配するのも分かる。合流地点に来るのは各国の若い兵士達。そいつらについてるのは士官学校出たてのやつらだ。通信が繋がらないなんていう状況に慌て、そんな状態でさっきの敵に遭遇すれば負傷者を出しかねない。
「決定事項だ。キャンプに引き返す。」
ディーナはクーパーの言葉に耳を傾けず、車に乗り込んだ。
俺はクーパーの背中を軽く叩き、「早くいくぞ。」と声をかけた。
クーパーは納得していない様子だった。

車両は動き出し、樹海の獣道を低速で進んでいた。
キャンプまでは6キロもない距離だからすぐに着くはずだ。
俺は運転しながら、さっき攻撃して来たやつらの事を考えていた。
「なぁ裕一、漫画貸してくれないか?」
「バックの中に入ってるけど全部日本語だぞ?」
「実は日本語の勉強をしようと思っててな。前々から日本語に興味があったんだ。」
「それと漫画が関係あるか?」
「漫画で勉強するんだよ。漫画なら絵が書いてあってこのキャラクターがどんなこと言ってるのか想像できるだろ?」
「なるほどな……。」
俺はイーライに対する関心よりも、さっきの敵が気になって仕方がなかった。
にしても方角はあっているはずなのに、中々樹海から抜けられない。
「もうだいぶ来たはずだが......。」
「迷ったのか?」
迷うなんて事はあり得なかった。この島は34平方キロメートル。そのうち平坦な場所は半分程であとは岩場。樹海なんていっても富士の樹海に比べたら規模は小さい。
そんな場所で迷うなんて事はまずない。方角を間違えようが、直進していれば必ず島の端にたどり着くはずだ。しかしあれから40分近く経っている。海兵隊キャンプの方角なら低速で移動していてもつかないのはおかしい。
そんな事を考えていた時だった。
「おい、樹海の出口じゃないか?」
イーライが助手席から指を指してそう言った。
イーライが指を指す先には陽の光が見えていた。樹海の隙間から射すわずかなものではなく、明らかに眩い陽の光が見えた。
やっとかと思っていざ出てみれば、そこに海兵隊のキャンプは無かった。あるのは広がる草原と、巨大な都市、そして険しい山々。
俺とイーライは驚愕のあまり言葉を失っていた。
「おいおい、これは夢か?夢だとしたらいつから夢だったんだおい......。」
イーライは目を大きく開いてその光景に夢じゃないかと疑っていた。
これは緊急事態どころの騒ぎではない。超非常事態。数多くの実戦経験を積んだ俺たちが状況の把握が全くできていなかった。
どう考えようが、ここは俺たちのいた島ではない。だがいつの間にこんな場所に迷い込んでしまったのだろうか。
俺たちが動揺して車を止めていたいたその時だった。
地響きが鳴り始めたかと思えば、前方から信じられない数の騎馬兵が押し寄せて来た。平原に一列に並んだ騎馬兵は最後尾が見えなかった。その瞬間、俺たちは身の危険を感じとった。
俺は車から素早く降り、イーライはM2を構えて臨戦態勢に入る。後列の全員も一斉に構える。
しかし騎兵の大群は止まり、一人だけが白い旗を掲げて馬を走らせてこちらに来た。
「みんな銃を下げてくれ!」
俺は全員に銃を下げるように言った。
馬に乗った一人の男が一定の距離で馬から降りた。
「イーライ、援護してくれ。」
「お、おいよせ!」
イーライは俺を止めたが、俺はその男の方へゆっくりと歩いていった。
男に近づくと、その男は身長が高く、俺を見下ろしていた。黒い兜に黒い鎧、そして赤いマント、腰には剣を携えていた。
その男は黒い兜を外し、地面に置いた。
「そなたたちは何者だ?」
男はそう言った。
「俺たちは、旅人みたいなものだ。君たちに敵意はない。実は道に迷ってしまってね……ここがどこか教えてくれないか?」
俺はそう言って男に聞き返した。
「ここはゲルマン王国領の第14地区ハネスハイムだ。」
男が口にしたのは聞いたことのない国の名前だった。
「我が兵が申すのだが、そなたらは見たこともない武器を使う魔術師と聞いた。」
男はそう言って車両に搭載されたM2見て指をさした。
「さっきはすまない、突然攻撃をされたもんだから威嚇程度に使わせてもらった。」
「そのことはよい、それより私にもその武器を見してはくれぬか?我が居城に招待して夕食をご馳走しよう。」
「ちょっと待っていてくれ。」
俺はそう言ってディーナの元に走って向かった。
「ディーナ少佐、向こうに敵意はありません。現状がわからない今、彼らに話を聞くのがいいかと。」
俺はがそう言うと、ディーナはあの男の元へ行った。
なにやら話している内容は聞こえなかったが、俺たちはあの男のの居城とやらに向かうことになった。

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