異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

第18話

「皆さん、凄いです。お強いんですね」

 俺は空からリゼット達の下へ舞い降りて微笑みながらそう言った。
お世辞ではなく、割と素直に俺はそう思った。
パーティでの戦闘は初めて見たので、協力し合いながら戦うのは大したものだと思う。
息もあっていたし、魔法発動直前の動きはまさに阿吽の呼吸といったところ。
念波でもローラが飛ばして全員に魔法の発動を知らせたのかな?
なんにせよ、力合わせて戦うってのは憧れはある。

「うちの連中、なかなかのもんだろう?」

 リゼットはポポロを撫でながら自慢気に言う。

「リゼットさーん、いきなり突っ込むのは勘弁してくださいよー。
こっちは何かに乗ってる訳じゃないんですから、追い付くのも必死なんですよ」

 そう言ったのは長剣と盾を持ったお兄さんだ。
鉄の鎧を身に付けている茶髪の短髪。
爽やかな若者である。


名称:ガウェン・ギルムンド
性別:男
種族:人族

身体能力

レベル:30

体力:2950
マナ:210
魔力:130
筋力:540
耐久:640
俊敏:290

特性

・騎士の心得

スキル

・剣術lv.6 ・盾術lv.5 ・格闘術lv.4 ・ウォークライ ・身代わり ・対話術

【特性:騎士の心得】
 騎士学校を卒業した者の証。

【スキル:ウォークライ】
 気迫の一声を発し、自身の筋力と耐久を上昇させる。
また、相手に畏怖を与える場合もある。

【スキル:身代わり】
 敵からの攻撃を優先的に受けるようになる。



「足が遅すぎるのよ。
リゼットさんに遅れるのが悪いわ。
気合い入れて走りなさい」

 そう言ったのは籠手を両手に付けたお姉さん。
両手には籠手のガントレッドを付けて、下は黒のレザーパンツ。
上はビキニのような際どい服を着ている。
黒烏色の髪はポニーテールにして、目付きの鋭い美人のお姉さんだ。
顔付きからもキツそうなイメージがする。


名称:サリア・ルッツベルト
性別:女
種族:人族

身体能力

レベル:34

体力:1980
マナ:130
魔力:100
筋力:640
耐久:260
俊敏:810

特性

・当身の極意

スキル
・格闘術lv.7 ・縮地 ・対話術

【特性:当身の極意】
 格闘術の技を覚え易くなり、技の威力が上昇する。
また、手合わせ時に相手の次の動作を読み取る力を持つ。



「ガッハッハッ!
相変わらず手厳しいのぉ、サリア嬢。
俺ぁついてくのがやっとだってのによ」

 豪快に笑うのは渋いおっちゃんだ。
上半身は裸で、下半身にはボロボロの皮のズボンを履いているだけ。
腕には布が申し訳程度に巻き付けられている。
上半身の筋肉は物凄かった。
坊主頭の無精髭マッチョメンである。

「ローランドさんはその斧が大き過ぎるんです。
小斧を二つにした方がまだマシでしょう!?」

 サリアは咎めるように言う。

「豪快さこそ、男のロマンよ。
わかるか?小僧」

 何故か俺に振られるその同意。
わかんねーよ。


名称:ローランド・ガウリー
性別:男
種族:人族

身体能力

レベル:41

体力:3010
マナ:110
魔力:50
筋力:940
耐久:510
俊敏:180

特性

・なし

スキル

・斧術lv.8 ・剣術lv.5 ・槍術lv.4 ・格闘術lv.6 ・状態異常耐性lv.3 ・ウォークライ ・狂乱の闘気 ・対話術

 

「でも、リゼットさんはどうしてあの茂みにいるのがわかったんです?
お陰で僕も先手が打てたので助かりましたが」

 そう言ったのは弓使いの青年だ。
上下は布の服を着ているだけの見た目は完全に村人Aみたいな青年だ。
長めのウットボウと、矢筒を背負い、短剣を越しのベルトにさしている。
少し気弱そうだが、さっきの戦闘を見る限りかなりの弓の腕だ。



名称:ラント・クルーガー
性別:男
種族:人族

身体能力

レベル:34

体力:1850
マナ:210
魔力:130
筋力:260
耐久:190
俊敏:690

特性

・鷹の目

スキル

・弓術lv.8 ・剣術lv.3 ・狙撃術 ・対話術



「あれは坊やが知らせてくれたんだ。
どうやら、生体感知を持ってるようでね。
本当に大した奴だよ」

 リゼットさんそう答えると皆が俺を見る。

「何処までも規格外な子ね。
一体どれ程の力を隠してるのかしら」

 ローラが俺を見て呆れたように言う。



名称:ローラ・アネクシス
性別:女
種族:人族

身体能力

レベル:38

体力:980
マナ:1230
魔力:1050
筋力:80
耐久:100
俊敏:130

特性

・魔道士の心得

スキル

・魔力操作lv.5 ・雷魔法lv.6 ・魔力感知lv.3 ・広域魔法 ・マナ変換 ・身体強化 ・身体硬化 ・自然マナ回復 ・対話術

【特性:魔道士の心得】
 魔道士学校を卒業した証。





 あ、やべ、ローラさん魔力感知持ってる。

 俺が鑑定しているとローラが目を見開いて俺を見つめる。

「あ、あなたっ!
まさか、鑑定眼でステータスを見れるの!?」

 あちゃー、バレた。

「あはは、皆さんのステータスが気になってしまって」

 俺は頭を掻いて正直に認める。

「なんだって?
ステータスを見れる程に鑑定眼を鍛えるには相当経験が必要なはず……。
そもそもスキルを会得するのも難しい。
それなのに、この歳でもう使いこなしているってのかい?」

 そう言って驚くリゼットさん。
そういやリゼットさんも持ってたな、鑑定眼。

「はい、それなりに。
えっと、やっぱ見ちゃマズかったですか?」

「下手に人のステータスを覗くのは争いの種になる。
あまりオススメはしないね。
とは言え、見られたものはどうしようもない。
別段、隠すようなものもないからね」

 リゼットさんはそう言って呆れたように言った。
お咎めは無いようだ。
だったら毒を食らわば皿まで。
最後の一人も覗きます。
修道服の美少女を見て鑑定する。



名称:セリーヌ・アストリー
性別:女
種族:人族

身体能力

レベル:29

体力:730
マナ:670
魔力:540
筋力:90
耐久:80
俊敏:110

特性

・聖母の加護

スキル

・光魔法lv.4 ・治癒魔法lv.6 ・マナ変換 ・広域魔法 ・自然治癒 ・対話術


【特性:聖母の加護】
 祈りを捧げ、女神の慈愛によって授かった聖なる力を扱える。




 へぇ、つまり、プリーストですな。
しかし、バランスの良いパーティだ。
前衛がリゼットさんを合わせれば四人。
後衛の弓兵が一人に魔法使いが一人。
そして回復役の聖職者が一人。
最低人数でも、これ以上ない組み合わせと言える。

「いやぁ、やっぱスゲェな、リゼットの護衛団はよ。
行商人の中でもここまで精鋭を集めた護衛はなかなかいねぇからな!」

 そう言って荷馬車の陰に隠れていたザドが近付いてくる。

「ザドさん、次は僕らの出番らしいですよ?
頑張りましょうね」

 俺はそう言って満面の笑みでザドを見る。

「ば、バカ言うなよっ!
俺が矢面に立ってもすぐにやられちまうっ!」

「子供一人で戦わせるつもりですか?」

「リゼットっ!手ェ貸してやれ!」

 あんたはどうしても戦いたくないのな。
いや、戦えないだけか。

「ふぅん?
どうしてもってんなら手ェ貸しても構わないが、うちの護衛団は高く付くよ?」

 ニヤリと笑うリゼット。

「足下見やがってぇ……。
シン坊っ!目にもの見せてやれっ!」

 結局俺に頼るのか。
それにしてもこの男、ダメ男まっしぐらだな。
プライドは無いのか。

「冗談ですよ。
契約はしてるんです。
一生懸命護衛しますから、心配しないで下さい」

 俺は皮肉たっぷりに笑顔で伝える。

「……お、おう。頼んだぞ……」

 流石のザドも小さくなる。
とりあえず大人しくしといてくれ。

 その後、リゼットさん御一行は盗賊から金目になるものを回収していく。
もやはどっちが追剥ぎなのかわからんな。

 盗賊の中には死人もいる。
人はこうも簡単に死ぬのか、と改めて思う。
魔物は沢山殺したが、未だに人は殺めていない。
どうにも、殺人には抵抗がある。
でも、向こうはこっちを殺しにかかってきてるのだ。
だから俺の考え方は甘いんだろう。
いずれは……俺も人を殺す日が来るんだろうか?

 そんな事を考えながら、俺はしゃがんで静かに盗賊の亡骸に手を合わせる。
こんな事をする必要もない連中なんだろうけど。

 そんな俺に近づいてきたのはセリーヌである。

「キミ、お祈りをしているの?」

「……そこまで、真剣に死を悼んでる訳じゃないです。
自分は聖職者でも何でもないので。
ただ人が死ぬのとか、あんまり慣れてないので。
なんとなく、手くらい合わせておこうかと」

 そう言って立ち上った俺をセリーヌはジッと見つめている。

「僕、何か変な事言いました?」

 首を傾げて尋ねると、彼女は首を横に振る。

「いいえ。とても殊勝な事だと思います。
小さいのに、とても立派な心持ちなのですね。
そして、人の死を悼む優しい心を持った人でもあるわ。
キミのような人は、とても珍しい」

 セリーヌはそう言って微笑んで、俺と並んでロッドを掲げる。

「“慈しみ深き聖なる神よ。
迷える魂を導き、清めたまえ”」

 セリーヌは目を閉じて祈りを捧げる。
その声はまるで子守唄のように優しいものだった。
その声に呼応するかのように、事切れた盗賊の身体が淡い光に包まれ、その光は天へと消えていった。

「こうして天に魂を送らないと、その魂を魔の者達に取り込まれ、新たな魔物が生まれてしまう。
そのように、私は教わりました」

 悲しそうな目をしてセリーヌは言う。
そういうものなのか。
いや、そういう考えもあるだけ、だろうか?

「……セリーヌさんは、人殺しに抵抗はありませんか?」

 俺の問いに、セリーヌは困った顔をする。

「命を奪わずに済むのならそれに越した事はありません。
しかし、放っておけば彼等は多くの人の道を阻む。
それは許し難い行為です。
誰かが止めなくては」

 そう強い意志と覚悟を込めるように、セリーヌは言った。
いずれは俺も、そう思う日が来るのだろうか?



 再度俺達は進む。
あれから何に襲われる事もなく、夜になった。
次の村まではまだ距離がある為、野営をする事にした。
リゼットさん達のテントはなかなか大きさだ。
対してザドのテントは一人用である。
子供の俺なら一緒に入れない事は無いが、夜中になるとザドの五月蝿いイビキでとても眠る事が出来なかった。
まったく、お酒まで煽って眠るからである。
人の気も知らないで気持ち良さそうに眠ってるし。
蹴り飛ばしてやろうか。

 俺はテントの外に出ると、リゼットさんとローラさんが篝火の前に座っていた。
火の番と見張りだろう。
二人ともテントから出てきた俺を同時に見つめてくる。

「なによ、あんた。眠れないの?」

 ローラが話し掛けてくる。

「えーっと、イビキが五月蝿くて眠れません。
隣、良いですか?」

 俺がそう言うとローラは苦笑いする。
俺は二人の隣に座り、篝火に手をかざす。

「坊や。明日の昼にはヴェルド峡谷に着く。
そこからはゴーレムの出没地域だ。
危険度がはね上がる。
今夜はゆっくり休んだ方が良い」

 リゼットさんはそう言って忠告する。

「心配無用です。
マナ変換を使えば疲労は回復しますから」

 俺はそう言って笑う。
突如、悪寒が身体を走り抜けた。

「大したものだよ、本当に。
明日、あんたが戦うのを見るのが楽しみだね」

 リゼットさんは挑戦的な眼差しを送ってくる。
俺も不敵に笑い返す。
しかし、俺のその顔はすぐに真顔へと変貌する。
身体に強烈な悪寒が走ったのだ。

「……魔物……ですね」

 俺は声を低くし、顔を引き締める。
その言葉を聞いた二人も真剣な顔つきになる。
数は六。
少ないが、少し厄介な連中だ。

「シザースナイトです。
ナイトメアハウンドを五匹連れてます」

 その言葉に二人は顔を強張らせる。

「シザースナイト!?
こんな田舎道に何故そんな奴が……。
ここから近いの?」

 ローラが尋ねてくる。
その顔は青ざめている。

「いえ、こちらにはまだ気づいていないかと。
しかし、ゆっくりこっちへ向かってきます」

 俺はローブの袖を捲る。
その姿を見てリゼットさんが俺の肩に手をやる。

「坊や、相手がシザースナイトなら勝ち目は無い。
一度退いた方が良い」

 リゼットさんはそう言ったが、俺は首を横に振った。

「“この程度”なら問題はありません。
しかし、万が一の為、テントの守りはお願いします」

 そう言って俺は相手のいる方角を見る。

「坊やっ!すぐに逃げるべきだっ!」

「いえ、多分もう遅いです。
連中が動き出しました。
転移してくるかもしれません。気を付けて」

 俺が警告し終えたと同時に、テントのすぐ横に暗闇のモヤが出来上がり、大きな野犬のような魔物が飛び出してきた。
ナイトメアハウンドである。
夜にしか基本行動しないが、とても獰猛で、かつ頭が良い。
ナイトメアハウンドは地面に着地するのと同時にリゼットさんらのテントに飛びかかった。
慌ててリゼットさんが鉄の鞭を引き抜いたが、それより早く俺のバレット・ショットがナイトメアハウンドの頭蓋を粉砕する。
ローラとリゼットが驚いて目を見開いているが、構ってる暇はない。

 続いて三つ、テントの周りの様々な場所からモヤが出来上がり、ナイトメアハウンドが飛び出してくる。
 今度は地面に着地するとそのまま地面に“潜り込んだ”。
これが奴等固有のスキル。
闇隠れ。
闇に紛れて襲いかかる厄介なスキル。
まったく、獣のクセに無駄に能力が高い。

 しかし、このスキルには弱点がある。
直ぐ様俺はフラッシュを打ち上げ、辺りを照らす。
闇が無くなり、奴等の隠れ場が無くなると途端に姿を現した。
一匹はテントの目の前に。
一匹はローラの背後に。
残る一匹は俺の背後に。
知覚を極限まで引き上げ、術式を高速で組み立てる。

 俺が魔法の中でも風と雷を組み合わせた理由。
それは汎用性と圧倒的な速度の利点からだ。
“烈風迅雷の魔巧”のスキルによって編み出した俺だけの固有魔法。
迅雷の風鎌 ストームリーパー。
掲げた片手に二重の魔法陣が出現し、そこから三本の刃が解き放たれる。
雷速で動くその刃はジグザグの軌道をとり、光の残像を残し三匹のナイトメアハウンドの頭を刈り上げる。
直後、その身体は雷撃の力によって眩い光を放ち、塵も残さず消滅する。

 それは一瞬の出来事。
ローラは俺の攻撃がナイトメアハウンドに当たる直前に振り返ったので、その大口を間近で見てしまったのだろう。
腰を抜かして地面にヘタレ込んでいる。
リゼットさんもその場を動く事も出来ないようだ。
しかし、まだ終わっていない。
ここにいきなり魔物を送り込んできた張本人。
シザースナイトと、残りのナイトメアハウンドが残っている。

 そして一際大きなモヤが出来上がると、そこから鉄仮面を付けたボロボロのプレートアーマーを着たモノが出て来た。
その両腕は錆びた剣になっている。
仮面の中から紫の瞳が不気味に輝いている。
その両脇にはナイトメアハウンドが
一匹控えていて、唸り声を上げている。

「本当に……シザースナイトなのかい。
どうして、こんなのがここにいるんだい……」

 あのリゼットですらその身体を震わせながら言う。

「最近の魔物の多さは少々異常ですから。
魔族がまた何か企んでるかもしれません。
何にせよ、コイツは放っておけない。
ここで、倒します」

 その言葉にローラとリゼットは唖然とする。
それを気にも留めず、俺は改めてシザースナイトに向き合い、ゆっくり間合いを詰めていく。

「久々の大物だ。かかってこいよ。
俺の糧にしてやるよ」

 その言葉に反応したのか、プレートアーマーをガタガタと震わせ、甲高い絶叫、もとい雄叫びを上げるシザースナイト。
その紫の瞳の輝きは一層強くなり、こちらを睨みつけているようだった。

 そして、魔法少年と、狂気の騎士の戦いの火蓋が切って落とされた。




名称:シザースナイト
種類:アンデッド
危険度:S

身体能力

レベル:72

体力:9500
マナ:8600
魔力:7560
筋力:8530
耐久:8120
俊敏:6390

特性
・殺戮者 ・吸血の刃 ・吸魂の刃 ・呪われた鎧

スキル
・血塊魔法lv.MAX ・闇魔法lv.MAX ・隠密lv.8 ・剣豪lv.7 ・格闘術lv.MAX ・縮地 ・虚空移動 ・致命の一撃 ・狂気の宴



【特性:殺戮者】
 人型の生体を殺せば殺す程身体能力を上昇させる。

【特性:吸血の刃】
 扱う刃によって相手の血を流させると、その血を吸い上げ自身の力に変える。

【特性:吸魂の刃】
 扱う刃によって相手の魂に攻撃が可能になり、精神異常を引き起こさせる。

【特性:呪われた鎧】
 物理、魔法防御を引き上げる防具だが、身に付けた者の精神は崩壊する。

【スキル:狂乱の宴】
 周囲に狂気の精神異常を起こさせ、自身の身体能力を引き上げる。

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