異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

第1話

 深夜二時、俺は自室にてパソコンに向かい、萌えアニメに没頭していた。
なんてったって三ヶ月ぶりの二連休だ。
ずっと遅くまで仕事続きで趣味もまともに楽しめなかった。
今夜は夜更かしして朝まで堪能するぞ、と意気込んだものの、もはや俺は29歳のアラサーだ。
この時間になると眠気が襲ってきた。
コンビニ行って何か眠気覚ましになるものでも買うか、と俺はアパートを出て歩いて五分のコンビニへ向かう。

 欠伸をしながら自動ドアを抜けると、目の前に黒ずくめの男が鋭利なナイフを店員に突き出していた。
男と店員の視線が俺に集中し、店内には入店の音だけが響く。
ご、強盗!?
 誰よりも先に動いたのは強盗の男だった。
店員が差し出したであろうお金の束をつかみ、俺に向かって突進してくる。
俺はあまりの衝撃的な現場に硬直して咄嗟に反応出来ず、強盗に突き飛ばされて後ろに倒れ込んだ。
強く頭を打ち付け一瞬目の前が真っ白になる。

 いてぇ……。

明点する視界の中でゆっくり身体を起こそうとするが、胸に鋭い痛みが走る。
焦点を合わせると、俺の胸にナイフが深々と突き刺さっていた。

 あ、あの野郎、突き飛ばしたじゃなく、俺にナイフを……っ!

 身体に力が入らない。
口からゴポリと血が吐き出される。
あ、これヤバイやつだ、と薄れていく意識の中で感じる。
ぼやけま視界に店員が駆け寄ってくるのが見えた。
スマホを耳に当ててどこかに連絡してるようだ。
顔はもう真っ青になっている。

 はは、マジか。
俺こんな風に死んじまうのかよ。
そういやパソコンの電源落としてねぇや。
思いっきりアニメの見られたくないシーンが映ってるぞ。
せめて電源切って……出てくりゃ……良かった……。






 視界が真っ暗になる。
何か声が聞こえた。
赤ん坊の泣き声?
それはとても近くから聞こえた。

 ガラガラッと真上にあった何かが退かされると、光が視界に差し込んでくる。
ぼやけた視界に人影が映った。

「人族の赤子か。よく生きていたものだ」

 その人影は俺へとゆっくりと手を伸ばし、抱きかかえられる。

「両親の息は……無いようだな……。
生き残りはお前だけか」

 その人影はそう呟くと、俺を抱いたまま歩き出した。
なんだかとても眠くなる。
俺の視界はまた闇に包まれ、意識が遠ざかる。




 それが俺、速水  慎太郎ハヤミ  シンタロウとエルフの男、ジノ・オルディールとの出会いだった。
そして、地球で命を落とした俺が異世界に転生した始まりだった。

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