『非正規社員 石田三成』~ショートストーリー集~

坂崎文明

パナマ保育園

「わーい! わーい!」

 最近、開園した『パナマ保育園』で子供たちが笑顔で遊んでいる。
 日本の2万人に及ぶ待機児童問題は『パナマ文書スキャンダル』によって一気に解消に向けて動き出した。

「タックスヘブンに租税回避していた政治家、有名人、大企業から大量の寄付が集まり、日本にも『パナマ保育園』が沢山できてよかったですね」

 石田三成は今日は黒いジャージの上下という私服で、ここで保育士している真田幸村に話しかけた。

「違法性はないということになったが、やっぱり、後ろめたいのでそういうことになったんだろうけど」

 幸村は微妙な表情で答えた。

「しかし、あの文書を盗みだしたのは誰なんでしょうね?」

「総勢400名にも及ぶ『ICIJ』とかいうジャーナリスト、専門家集団らしいが」

「僕の情報網では何者かが『パナマ文書』を彼らに渡したらしいですよ。幸村さんではないですよね?」

「まさか。さて、そろそろ仕事に戻りましょうか」

 幸村は何ともいい表情で破顔した。

 三成は彼の部下である佐助が『パナマ文書』を盗み出したことを知っていたが、自給3000円に跳ね上がった保育士のアルバイトも忙しいので、それ以上の追求は避けた。

 ちなみに彼の勤務する保育園は『ドランゴ保育園』である。





◇ パナマ文書を読み解く集団「ICIJ」とは何者か 調査に長けたジャーナリスト団体の素顔
http://toyokeizai.net/articles/-/112693?page=2

◇ 『パナマ文書』で大企業に追徴課税すれば保育園がつくれるのではないか?
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880246141/episodes/1177354054880813651

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