《ハーレム》か《富と名声》か。あの日、超一流の英雄王志願者パーティーを抜けた俺の判断は間違っていなかったと信じたい。
4 合流
「アイラ! チキ!」
俺は二人を追って走り出し、少しいった先の木陰で二人を発見した。
俺の呼び掛けに気付いた二人はこちらを一瞬見てから、また足早に歩き出した。
「ちょっと! 待ってよ!」
そんな俺の呼び掛けを無視するように、こちらを振り返りもせずアイラは応える。
「何の用ですか。私達はもう仲間ではないんです。ほうっておいて下さい」
「…………」
そういうアイラの声はわずかに震えていて、泣いていた事が容易に見てとれた。
「ちょっと待ってってば!」
俺は二人の手を掴んで引き止める。同時に振り返った二人の顔、アイラは目元をわずかに濡らしてはいるものの、いつものように気丈に振る舞っている。しかし、チキはと言えば声こそ押し殺しているものの、その無垢な瞳からはまるで幼い子供のように大粒の涙が溢れ落ちていた。
そして、無理矢理に引き止められた事に興奮気味のアイラが言う、
「ーーーーっ離し…………」
だが、アイラはそこで言葉を失った。
少し遅れてチキも異変に気付いたのか、涙で濡れた瞳を大きく見開いて俺を見つめる。
「どうして……」
「何で……カミュが泣いてるんだよぉ……」
俺は二人に言われてはっと我に返り、目元を右手で雑に拭いながら作り笑顔で言う、
「いや~……ははは。ビックリした。何だコレ。ごめんごめん。何で泣いてんだ俺。訳が分かんねぇ。はははは……二人の顔みたらーーみたら急に……。ははは……」
「かみゅ~……」
足にしがみついて来たチキの頭を撫でながら、とめどなく溢れ出してくる涙を必死に拭う。
「カミュ、あなた……」
俺は必死に涙をこらえて言う、言葉にならないかも知れないが必死に言う、
「アイ……アイラ、チキ。俺も、俺もシリウスの。シリウスのパーティー……抜けて来た」
「えっ……」
「何で……?」
至極当然なチキの質問に、俺は答えられない。
あのままシリウスのパーティーに居ればきっと英雄王のパーティーとして、一生遊んで暮らせる筈だった。その方が俺にとって幸せである事は間違いなかった。
なのになぜ、そんな魅力的な未来を蹴ってまで、今、俺はここにいるのか。
アイラとチキは俺の答えを固唾を飲んで待っている。
シリウスのパーティーを抜けた自分の気持ちははっきりとは分からないけれど、でも、この決断は間違いではない筈だ。
その想いを、何とか言葉にして二人に届けないと。
「えっと……」
「…………」
「…………」
素直に、正直に、伝える。
「二人がいないと寂しいから。かな?」
必死の作り笑顔で言う。
「カミュ……」
「かみゅ~!」
その後、しばらくの間三人で笑ったり、また泣いたりしながら時間だけが過ぎていき、エルフの森からは風が鳴らす心地良い小枝の弾ける音が響いていた。
俺は二人を追って走り出し、少しいった先の木陰で二人を発見した。
俺の呼び掛けに気付いた二人はこちらを一瞬見てから、また足早に歩き出した。
「ちょっと! 待ってよ!」
そんな俺の呼び掛けを無視するように、こちらを振り返りもせずアイラは応える。
「何の用ですか。私達はもう仲間ではないんです。ほうっておいて下さい」
「…………」
そういうアイラの声はわずかに震えていて、泣いていた事が容易に見てとれた。
「ちょっと待ってってば!」
俺は二人の手を掴んで引き止める。同時に振り返った二人の顔、アイラは目元をわずかに濡らしてはいるものの、いつものように気丈に振る舞っている。しかし、チキはと言えば声こそ押し殺しているものの、その無垢な瞳からはまるで幼い子供のように大粒の涙が溢れ落ちていた。
そして、無理矢理に引き止められた事に興奮気味のアイラが言う、
「ーーーーっ離し…………」
だが、アイラはそこで言葉を失った。
少し遅れてチキも異変に気付いたのか、涙で濡れた瞳を大きく見開いて俺を見つめる。
「どうして……」
「何で……カミュが泣いてるんだよぉ……」
俺は二人に言われてはっと我に返り、目元を右手で雑に拭いながら作り笑顔で言う、
「いや~……ははは。ビックリした。何だコレ。ごめんごめん。何で泣いてんだ俺。訳が分かんねぇ。はははは……二人の顔みたらーーみたら急に……。ははは……」
「かみゅ~……」
足にしがみついて来たチキの頭を撫でながら、とめどなく溢れ出してくる涙を必死に拭う。
「カミュ、あなた……」
俺は必死に涙をこらえて言う、言葉にならないかも知れないが必死に言う、
「アイ……アイラ、チキ。俺も、俺もシリウスの。シリウスのパーティー……抜けて来た」
「えっ……」
「何で……?」
至極当然なチキの質問に、俺は答えられない。
あのままシリウスのパーティーに居ればきっと英雄王のパーティーとして、一生遊んで暮らせる筈だった。その方が俺にとって幸せである事は間違いなかった。
なのになぜ、そんな魅力的な未来を蹴ってまで、今、俺はここにいるのか。
アイラとチキは俺の答えを固唾を飲んで待っている。
シリウスのパーティーを抜けた自分の気持ちははっきりとは分からないけれど、でも、この決断は間違いではない筈だ。
その想いを、何とか言葉にして二人に届けないと。
「えっと……」
「…………」
「…………」
素直に、正直に、伝える。
「二人がいないと寂しいから。かな?」
必死の作り笑顔で言う。
「カミュ……」
「かみゅ~!」
その後、しばらくの間三人で笑ったり、また泣いたりしながら時間だけが過ぎていき、エルフの森からは風が鳴らす心地良い小枝の弾ける音が響いていた。
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