冒険者の日常
洞窟の攻防 2
剣が、刀が舞い踊る。互いの首を切り落とそうと躍起になる。その剣が空気すらも切り裂き僕の首へ向かって直進する。この距離では防御は間に合わない。直感がそう叫び本能に任せて咄嗟に首を倒す。剣が僕の頬を浅く切りつける。鈍い痛みが頬を伝う。
剣戟が止んだ。恐らく倒したと思ったのだろう。リザードマンに隙が生まれる。
「油断したら……ダメなんだよ、いついかなる時も」
お返しだと言わんばかりに突きを放つ。刀を引き付け刃を上に向けて迅速に繰り出した。超高速で放った突きは狙ったはずのリザードマンの急所を外れ肩に刺さった。それでもそれは肩をえぐるだけで止まらなかった。衝撃波によって洞窟の壁に亀裂が走る。
「えっ……?」
アイシャの顔が驚嘆を露わにする。慟哭が洞窟を反響する。
(しぶといな。それに今の反応、理性をよるものじゃない)
僕の攻撃は外れたんじゃない。避けられたのだ、恐らく直感にも似たモンスターの中にある生存本能によって。ここぞという時のそれには毎度毎度驚かされてきた。だから僕は驚かない、そもそも今ので倒せるなんて毛頭思っていない。
刀を手の中で半回転させる。
「ふっっ!!」
それを素早く下へと切り下げる。刀は地面を静かに割った。
***
「ネロ、あなたにこれを」
あれは確かパーティーを組んで1年になった時にヤオラから記念にと譲り受けたものだ。
ちなみに僕はみんなにそれぞれの特性にあった魔道具を渡した。確か、永続的な対象ステータスの上昇……だった気がする。
それは置いときこの刀切れ味が抜群なのだ。
例えば机の上に1つのリンゴがあるとしよう。それをこの刀で切るとしたらただ、リンゴの上に刃を添えるだけだ。振りかぶる必要はなく切り下げる必要も無い、刀の重さと重力でリンゴが切れるという代物なのだ。というのが鍛冶師からの言伝だった。真偽を確かめるために1度やってみたのだが確かに切れた、ついでに机も切れた、気持ちよく切れすぎて若干戦慄した。ヤオラ曰くヤマト随一の刀鍛冶師が作ったそうで、歴代最高の出来だったそうだ。だから滅多なことでは使わない。そんな刀を振り下ろせばリザードマンの腕はリンゴと同じ……いや、それ以上だ。
切り落とせるのは道理だ。
赤い飛沫が暗い洞窟を染める。
一瞬の静寂の後、突如として自分の左側が軽くなった。そして自分の傍らに落ちているそれを見て絶句した。彼は確かに倒したと思った人間から攻撃された。当たったと思った攻撃は人間の顔を少し傷付けただけだった。
その次の瞬間、白い閃光が自分を殺そうと迫ってきた。咄嗟の行動で何とか心臓の位置は避けた。避けることが出来た。それでも閃光は肩に刺さった。確認するまでもなく肩には燃えるような痛みが広がっていった。
でも彼は何が起きているかがわからなかった。その後切られた自覚がないまま左手だったものは落下した。さっきみたいな痛みは無い。それでも傷口からは血が出ていく。どんどん流れ出ていく。既に洞窟の床には血が水溜まりを作っている。
「ガッ、アァァァァァーーーー!?」
突然の左手の消失にリザードマンは混乱を隠せない。それでも彼は本能に従って慌てて傷口を握りつぶした。かなり荒療治な止血法だ。
そうして彼は模索する。もしかしたら自分は自分で思っているほど強くないのかもしれない。そんな不安が焦りが焦燥が自分を追い詰める。
ーーーーいや、そんなはずない。自分は強いはずだ、何体もの同胞を喰らい、冒険者を喰らいその力を自分のものにしてきた。でも、それなのに自分は腕を失った。
自分はこのまま負けるのだろうか? 
今まで自分は何をしてきた? 
自分には力がないのか?
……否、自分は強い。それは今までの事実が証明している。こんなにやつに負けるわけがない。こいつも、その後ろの女も喰らって自分はもっと強くなる、ならなければいけない。
彼は必死に対抗した。自分の中で産声を上げた恐怖に抗い、逆らい、少しでもその不安から逃れるために彼は咆哮を洞窟に響かせた。
そうして自分に言い聞かせた。
「グゥガァァァァァーーーー!!」
剣戟が止んだ。恐らく倒したと思ったのだろう。リザードマンに隙が生まれる。
「油断したら……ダメなんだよ、いついかなる時も」
お返しだと言わんばかりに突きを放つ。刀を引き付け刃を上に向けて迅速に繰り出した。超高速で放った突きは狙ったはずのリザードマンの急所を外れ肩に刺さった。それでもそれは肩をえぐるだけで止まらなかった。衝撃波によって洞窟の壁に亀裂が走る。
「えっ……?」
アイシャの顔が驚嘆を露わにする。慟哭が洞窟を反響する。
(しぶといな。それに今の反応、理性をよるものじゃない)
僕の攻撃は外れたんじゃない。避けられたのだ、恐らく直感にも似たモンスターの中にある生存本能によって。ここぞという時のそれには毎度毎度驚かされてきた。だから僕は驚かない、そもそも今ので倒せるなんて毛頭思っていない。
刀を手の中で半回転させる。
「ふっっ!!」
それを素早く下へと切り下げる。刀は地面を静かに割った。
***
「ネロ、あなたにこれを」
あれは確かパーティーを組んで1年になった時にヤオラから記念にと譲り受けたものだ。
ちなみに僕はみんなにそれぞれの特性にあった魔道具を渡した。確か、永続的な対象ステータスの上昇……だった気がする。
それは置いときこの刀切れ味が抜群なのだ。
例えば机の上に1つのリンゴがあるとしよう。それをこの刀で切るとしたらただ、リンゴの上に刃を添えるだけだ。振りかぶる必要はなく切り下げる必要も無い、刀の重さと重力でリンゴが切れるという代物なのだ。というのが鍛冶師からの言伝だった。真偽を確かめるために1度やってみたのだが確かに切れた、ついでに机も切れた、気持ちよく切れすぎて若干戦慄した。ヤオラ曰くヤマト随一の刀鍛冶師が作ったそうで、歴代最高の出来だったそうだ。だから滅多なことでは使わない。そんな刀を振り下ろせばリザードマンの腕はリンゴと同じ……いや、それ以上だ。
切り落とせるのは道理だ。
赤い飛沫が暗い洞窟を染める。
一瞬の静寂の後、突如として自分の左側が軽くなった。そして自分の傍らに落ちているそれを見て絶句した。彼は確かに倒したと思った人間から攻撃された。当たったと思った攻撃は人間の顔を少し傷付けただけだった。
その次の瞬間、白い閃光が自分を殺そうと迫ってきた。咄嗟の行動で何とか心臓の位置は避けた。避けることが出来た。それでも閃光は肩に刺さった。確認するまでもなく肩には燃えるような痛みが広がっていった。
でも彼は何が起きているかがわからなかった。その後切られた自覚がないまま左手だったものは落下した。さっきみたいな痛みは無い。それでも傷口からは血が出ていく。どんどん流れ出ていく。既に洞窟の床には血が水溜まりを作っている。
「ガッ、アァァァァァーーーー!?」
突然の左手の消失にリザードマンは混乱を隠せない。それでも彼は本能に従って慌てて傷口を握りつぶした。かなり荒療治な止血法だ。
そうして彼は模索する。もしかしたら自分は自分で思っているほど強くないのかもしれない。そんな不安が焦りが焦燥が自分を追い詰める。
ーーーーいや、そんなはずない。自分は強いはずだ、何体もの同胞を喰らい、冒険者を喰らいその力を自分のものにしてきた。でも、それなのに自分は腕を失った。
自分はこのまま負けるのだろうか? 
今まで自分は何をしてきた? 
自分には力がないのか?
……否、自分は強い。それは今までの事実が証明している。こんなにやつに負けるわけがない。こいつも、その後ろの女も喰らって自分はもっと強くなる、ならなければいけない。
彼は必死に対抗した。自分の中で産声を上げた恐怖に抗い、逆らい、少しでもその不安から逃れるために彼は咆哮を洞窟に響かせた。
そうして自分に言い聞かせた。
「グゥガァァァァァーーーー!!」
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