その弾丸の行先

須方三城

最終話 世界を変える弾丸

 何故、僕はこんなにも無力なんだろう。


 傷を負い、血を流し、みっとも無く逃げ生き延びる。


 大切な人がいたはずなんだ。その人に言われたままに、ただただ逃げている。


 我ながら最低だと思う。


 いくら彼女自身が命じた事とは言え、密かに愛した女性をしんがりに、逃げ出したのだから。


 しかし、何処に逃げればいいのだろう?
 この世界にはもう、逃げ場は無い。


 国を失い、この一ヶ月あまり、逃げて逃げて逃げ続けて、このエンバレスまで逃げて来た。


 でも、もうこの国は共生国家では無い。
 共に国から脱出した仲間達ももういない。


「こんなのって…無いですよね……」


 夜闇の路地裏。
 空は雲に覆われ、星すら見えない。


 薄汚れたマントでその軍服と尾を隠しながら、彼は弱々しい足取りで歩いていた。


 今にも倒れそうだ。
 国を出てから、まともな食事など取っていない。睡眠もだ。
 とっくに限界だった。


 追い打つ様に、雨が降り始める。


 膝から、力が抜ける。


 彼を受け止めるのは、ただただ冷たい地面。


 僅かに溜まり始めた水たまりに、絶えず波紋が広がるのが見える。


「……なんか、なつかしい……ですね」


 行き倒れるのは、初めてでは無い。昔、一度だけあった。奇しくも、この国の、同じような路地裏で。


 その時は、都合良く救いの手が差し伸べられた。


 雨が、強さを増していく。


 …きっと、あの時の様な都合の良い救いは、無い。


 わかっている。


 雨は、止まない。なら、もう泣いてもいいだろう。


 どうせ、わかりはしない。雨が、全部洗い流す。


 血も、涙も、そして命も。


「カッ!……まぁた行き倒れてる上に泣いてんのか。飽きねぇな、テメェも」


 降りかかる声。それは、彼を馬鹿にした様な声。そして、彼に取って聞き覚えのある声。


 彼の体を襲っていた雨が、止む。


 いや、彼の上に、傘が差されたのだ。


「…………何、で……」


 その問いに答える声より先に、何かが彼の目の前に落とされた。


 それは、コンビニで売っている様な菓子パン。


「面白れぇくらいただの偶然だよクソ行き倒れ。あんまりにもあん時と似た状況だから、ちょっとあん時と同じ事してみただけだ」
「…………あなたも、やっぱり……」
「……当然だろ。俺もテメェと同じだ。行き場を失った。……つぅか、今の世の中の魔人ぁ大抵そんな状態だろ」 
「……ほんと、奇遇、ですよね」
「あぁ。嫌になるくらいにな」


 2人は、笑う。


「とっととそれ食え。お望みならまだあんぞ」


 彼の頭上で、ビニール袋が揺れる音がする。


 きっと袋いっぱいにパンやおにぎりが詰まっているのだろう。


 このご時勢、魔人がコンビニで買い物できるとは思えない。
 きっと、それもあの時と同じなのだろう。


「……ははっ……」


 涙が溢れ始めたばかりなのに、笑いが止まらない。


「……いいんですか?…僕は、二度もあなたを……」
「今もまた俺を殺そぉってんならぶっ殺すが、そぉでも無ぇだろ?」
「……ええ」


 彼は、投げられたパンを手に取る。 


「……生きにくい世の中になりやがったモンだ。くっだらねぇ」
「ですね……」
「…俺ぁとりあえず『昔』に戻るつもりだ。傭兵になるよりも、前のな。……テメェはどぉする?」
「……あなたが許してくれるのなら、僕も戻りたいですね……」


 彼の言葉に、傘を持った青年は一笑する。




「好きにしろ」
















 ✽








 現在、新星歴1061年、3月。


 魔国事変から二年弱の間に、世界は急変していた。




 その激動のきっかけは、魔国事変終結から3ヶ月後の新星歴1059年11月。


 魔国事変の際にも僅かながら投入されたエグニアの人間兵器、『獣人ビースト』達。


 合計7体の獣人が、魔国タルダルスを襲撃。その襲撃した一部地域を占拠した。


 魔国侵攻のための第一段階、それが、この攻撃。「獣人計画ビーストフェイズ」。


 超常の力を持つ7匹の獣を前に、魔王軍は苦戦。
 獣人達を撤退させるまでに3ヶ月もの時間をかけてしまった。


 それが、致命的だった。


 獣人計画の目的を、充分に果たさせてしまったのだ。




 3ヶ月間で採取された魔石磁場のありとあらゆるデータ。それを元に、超大国エグニアはおそるべき技術を完成させる。


 その名は、『EPイビルパッケージ』。


 魔石磁場を構成する、「GMを無効化する磁気」の周波数などを全て解析し、相殺効果を持つ周波数を作り出す技術を生み出した。


 その周波数発生機構をGADに組み込み、外へ向けて放つ事で魔石磁場の効果を打ち消し、磁場内でのGAの活動を可能にする。それがEP技術。


 魔国内で活動出来るGA、『EPイビルパックGA』の開発に成功した。


 それはつまり、「魔国に攻め入る術を手に入れた」という事。
 それと同時に、別の意味も持つ。


 EPは、言い換えれば小型のGジャマー。
 それを大型化すれば、何が出来るか。


 簡単だ。


 GMに頼る共生国家の機能を、麻痺させられる。エグニア自身が魔国事変の際に体験した様に。




 エグニアの行動は、迅速。


 まず、EPGA主体の大隊を結成。2つの魔国への侵攻を開始。侵略される事を全く想定していなかった魔国が崩壊するのは、とても早かった。


 総司令が死亡し、1人になった魔王も捕らえられるのに、2週間もかからなかった。


 そこから魔王アロンが処刑されるまでの一ヶ月程は魔王軍も決死の抵抗を見せたが、結局、軍事に長けたエグニアが相手では歯が立たつ訳も無い。


 魔国崩壊、魔王軍壊滅。


 そして、魔王の公開処刑の光景を世界に見せつけながら、人王は全ての共生国家へ宣告した。


「今すぐ我がエグニア帝国の属国へと下れ」と。


 それは、共生国家思想を破棄せよと言っているのと同じだった。


 しかし、共生国家諸国は、抗うことは出来なかった。


 既にその時、エグニアが開発した超規模Gジャマーにより、国の機能を殺されてしまっていたのだ。


 エグニアに下らなければ、このGジャマーによる制裁行為を永遠に続けられる。


 生活の9割がGMに依存する現代、それがどういう事か、理解できない者はいない。






 新星歴1061年、2月24日。


 全ての国がエグニアに降伏宣言をしたその日。


 この星から、魔人の居場所が無くなった日。
















 ✽












焼払部隊ヴァーンアップ』。


 それは、未だ世界中に潜伏する魔人達を殲滅するために結成された『魔人殲滅小隊』の一つ。


 最初の成体獣人であるアシド=リヴァルフレイム少佐を隊長、シトキ=ノームミスト小尉を副長とした隊だ。


 その構成員は至って普通の者達だが、この2人の獣人が異質過ぎる。


 生身での戦闘で魔人を圧倒的に制圧し、与えられた特機も難なく乗りこなしEAを粉砕する。


 故に、この隊にはアシドとシトキの特機以外のEPGAは支給されていない。それで充分だから。


 ただ、彼らにはある意味問題がある。


 それは、魔人を殺す事への興味の無さ。


 アシドはただ闘いたいだけなので、戦闘不能になった魔人に「もう興味無ぇわ面倒くせぇ」とトドメを刺そうとしない。


 シトキはそもそも戦う事すらアシドに同調しているだけで、何かに精力的に取り組む事すら無い。


 この部隊の構成員の仕事は、主にそれらの処理だ。2人がトドメを刺さなかった魔人を仕留める事。


「さぁて、楽しい追いかけっこも、そろそろ終いだなぁ……」


 隊の仮設拠点で、隊長を務める赤髪の青年、アシドはにんまりと笑った。


「……中々、粘りましたね……連中……」


 テントから顔を出したのは副長、シトキ。


「まぁあの金ピカに乗ってるのは俺と生身で殺り合って生き延びた運もスタイルも最高にイイ女だからな。……その運の強さももう種切れだろうがよ」


 遠く眺める方角。
 その先は、元タルダルス王城があった場所。


「かち合う度連中の数は減るわ疲弊してくわ、もうそろそろ限界が来てる頃だ。今日で決めて、次探そうぜ」


 ヴァーンアップが現在追っているのは、魔王軍騎士長が率いる魔王軍残党の中でも最も大きな組織。


 ただ、もう風前の灯火だ。


 ヴァーンアップがあの残党達と対峙したのは今年の5月。もう12月だ。


 アシド達に追い詰められ始めてもう半年以上が経過し、上手くヴァーンアップを退けているが、もう限界だろう。


 初めてあの残党達とヴァーンアップが対面した時と比べ、連中の規模は10分の1程度にまで減っている。


「さぁて……」


 アシドが向かったのは、EPGAの輸送車。


 一歩一歩踏みしめながら、口角を釣り上げていく。


 そこに積まれているのは、アシドの特機。
 己の髪と同じ、紅い装甲をした機体。


『血まみれの粉砕者』と称される、その機体の名は、


「魔国事変からの因縁のケリだ。最高にキメてやろうぜ、『キオウ』」
















 ✽












「ったく、面倒くせぇ……」


 某所。


 肩に掛かるくらいに伸びた灰髪の青年。その右目には黒い眼帯。
 ある機体の前で、灰髪の青年は溜息を付いた。


「GAに乗んの、あんま好きじゃねぇんだがなぁ……」


 灰髪青年は過去にGAで苦い思いというか酷い目にあっている。なのに周りの連中はこの特別な機体に乗れ乗れとうるさい。


 あっちの空飛ぶ黒いの程では無いらしいが、この機体はパイロットにかなり肉体的負荷を強いるらしい。


 テストの結果、乗りこなせるレベルの頑丈馬鹿は2人だけ。その内1人は向こうの黒い奴に乗るので、自動的に灰髪青年しかいなかったそうだ。


 シュミレーターには嫌というほど乗らされたので操縦は出来るが、出来るとやりたいは=では無い。


「仕方無いじゃないですか。EPGAを生身で相手取るのは不可能だって言われてるんですから」


 黒いのに乗る予定の優形の青年がこっちの気も知らずに軽い調子で言う。


「……クソッタレ。こんな事なら、この『ふね』の連中に手ぇ貸してやるなんて言わなけりゃよかった」
「そんなに嫌なんですか?」
「あぁ嫌だね」
「まぁそう言わずに…お願いします。今回だけでも良いですから」
「……あぁ、そぉいや、そこにいるんだったか。テメェの『譲れねぇモン』が」
「……はい」


 灰髪の青年はもう一度大きな溜息を付き、その後ろ髪をヘアゴムで軽く束ねる。


「……今日の晩飯、肉よこせ。…とアレだ、デザートもよこせ」
「ええ、イイですよ。その代わり、お願いしますよ」
「あぁ。期待以上にやってやる」


 では、と優形の青年は自らが乗る黒い機体の元へ。


 その背中を見送りながら、灰髪の青年はもう一度自分の乗るべき機体を見上げる。


「……ケッ……」


 青年の髪と同じ、全体が灰色にカラーリングされた機体。


「灰色ってのが、そんな御大層なモンだとは思わなかったぜ」


 白と黒。
 相反する2つの色が混ざり合って織り成される色、それが灰色。
 そこに、この機体を作った連中は願いを込めた。


「……まぁ良い。やってやるよ。…俺だって、今この世界に不満が無ぇ訳じゃねぇんだ」


 願わくばこの灰色の様に、白と黒が、人間と魔人が入り混じった世界の実現を。


 そんな願いを乗せた、この機体の名は、


「くっだらねぇ連中なんざとっととぶっ潰すぞ、『アーティミシア』」
















 ✽










 絶望とは、一度で終わってくれない。


 何度も何度も、生きている限り、絶望は追いかけてくる。


 弟を失い、部下を失い、主君を失い、国を失い、次は、何を失うのだろう。


(ああ、そうか。やっと、私の番なのか)


 魔王城跡地。


 金色の巨大騎士、アーテナは、もう半壊に近かった。


 魔国事変後、更なる改良を加えながら修復されたのに、あの時以上の損壊を受けていた。


 対峙するのは、紅蓮の鬼。
 紅い装甲で全身を包んだEPGA、『キオウ』。頭部には、後方へと長く伸びる2本の角。腕部は異常に長く、不気味なシルエットになっている。


『ハッ!良いザマだなぁ騎士長ちゃん』


 キオウから発せられるアシドの声。


 良いザマか、とアムは自嘲気味に笑う。
 ああ、笑えるザマだ。もう、自分しかいない。


 ここまで共に戦ってくれた者達も、もういない。


 騎士長アム=アイアンローズは、1人だ。


「……私は……」


 もう、何が残っているだろう。


 何も残ってはいない。


「……せめて、お前を道連れにする…!」


 目の前にいるのは、戦争が好きなどと言い放ったクソッタレだ。
 こいつだけは、殺してやる。


 もう、何も残っていないのだから、せめて…


「あぁぁああああぁああぁぁぁああっ!!」


 巨大なビームシールド、アイギィスを起動し、黄金の騎士が紅鬼へと突進する。


「くはっ!そうこなくっちゃなぁ!」


 キオウの中でアシドの笑顔が弾ける。


 あまりに一方的過ぎて、アムが戦意を喪失しやしないかとひやひやしていたが、それが杞憂に終わった喜び。


 さぁ、叩き潰そう、本日最大、極上の獲物を。


 シールドを先頭に突進して来る巨大騎士に対し、キオウはその長い腕を振るう。


「ぎゃは!ぃインパクトォ…バァァウンドォッ!」


 キオウの拳の装甲が展開し、内部から赤黒い拳が現れる。それは、衝撃増幅性質のGMの塊。


 拳先が触れた物体を砕き散らす、最凶の拳。


 インパクトバウンド。


 魔動兵装サイ・ブラスト最堅の盾、アイギィス。そのビームシールドを砕き、赤黒い拳が、アーテナの右手を破壊する。


 右手だけでは済まない。そのまま、黄金騎士の頭部まで、その赤黒い一撃は抉り抜く。


 衝撃に、アーテナが倒れる。


「……くっ…そ……」


 道連れすら、叶わないのか。


 メインカメラを破壊され、コックピットを砂嵐が包む。


 そのコックピットの外壁が、外から強引にもぎ取られる。


『さぁ、2年前の続きをしようぜ騎士長ちゃんよ』


「……っぅ……」


 もう、無理だ。
 どうせ、アシドには勝てやしない。
 なら、もう抵抗なんて辞めてしまおうか。


 そう思いかけた時だった。


 こじ開けられたコックピットの中から、ある物が見えた。




 それは、小さな石碑。




「……!」


 ロイチと共に建てた、部下達の、ギャッリーゾのための慰霊碑。


 いつの間にか、元植物園だった場所まで来ていたらしい。


 その碑の前、半分砕けたプランターの中で、アーティミシア・ワームウッドは、まだ生きていた。


 もう1年近くもほったらかされていたはずなのに、平和を祈るその植物は、まだ枯れてはいなかった。自分の力で、逞しく生き抜いていたのだ。


「……ああ、そうだな……!」


 まだ、諦めるな。


 何のために今まで抵抗してきた?


 アムははっきりと言える。


 私は、死にたくなかっただけだ。


 大切なモノを失い続け、とうの昔に立派な目的など見失った。今のアムは、ただ生きているから、死なないために戦っている。


 それでいい。もう、それでいいんだ。


 なら、最後までみっともなく足掻こう。どうせもう、何も残って無いのだから。


 優しく気高い騎士長は、もういない。


 でも、私はまだ生きているから。


 シートベルトを外し、剣を抜きながら、コックピットから這い出る。


『……へぇ……あん時とは種類が違うが、良ぃ目じゃねぇか』
「うるさい。さっさと降りろ。……殺してやる」
『イイねぇ…その気はねぇはずなのに、SMに目覚めちまいそうなくれぇ刺激的な目だぜ』


 相変わらずふざけた怪物だ。
 絶対に、その首を叩き落してやる。


 そう剣を構えた時だった。


『……あん?』


 怪訝そうなアシドの声が、スピーカーに乗った。その原因は、すぐにアムにもわかった。


 向こうの空から、巨大な何かが、来る。


「なっ……」


 戦艦、だ。
 規模は小さめだが、どう見ても戦艦。それが、空を飛んでいる。


「……馬鹿な……」
 コックピットの中でつぶやいたのは、シトキ。


 彼が乗っているのは全身に亀甲の様な六角パネルを纏ったEPGA『ジャガーノート』。


「……重力圏で空中航行する戦艦…なんて聞いた事……無い…!」
『ハッ!まぁ良ぃじゃねぇかシトキ。細けぇ事はよ……何か来るぜ』


 通信越しでもワクワク感たっぷりなアシドの表情が想像出来る、そんな声。


 アシドの言った通り、空飛ぶ戦艦から、2つのシルエットが射出された。


 1つは降下用パラシュートを展開。もう1つは、光の巨翼を広げた。


「……!?ブラックベールか!?」
 2機の内、1機に、アムは見覚えがあった。


 シャリウスが開発したというロイチの特機、ブラックベールによく似ている。


 しかし、細部が異なる。


 ベール状だった兜は王冠の様な形態になっているし、ビームウイングの大きさも桁違い。何より、全体的にフレームが太い。


 パラシュートで降下する灰色の機体に見覚えは無いが、デザインラインがアーテナと良く似ている。つまり、GAよりEAの面影が濃ゆい。


 黒い機体はそのまま空を舞いながら、灰色の機体はこちらへ向け地面スレスレを滑空する形で迫ってくる。


『ハッ!こっちの方が食い応えありそうじゃあねぇか!』


 アムは後回しだ。
 アシドはキオウを操縦し、灰色の機体を迎え撃つ態勢を取る。


 灰色の機体は特に武装を抜く動作を見せない。


「おぉう…まさかキオウと同じで拳が武器ってか?」


 面白い。キオウを走らせる。


 紅蓮の鬼と灰色の巨人が激突する。
 取っ組み合いだ。リーチが長い分、キオウが有利。


「ぎゃは!」


 アシドは全力でスラスターを蒸す。キオウのスラスター出力は殺人的だ。
 このまま押し倒してやる。


「力比べでキオウに勝てると思うなよ灰色一辺倒が!潰れ……っ……!?」


 動かない。
 キオウも、灰色の機体も。


「な……に……!?」


 灰色の機体の目が光り、組み合った2機が、動き出す。
 キオウが、押される形で。


「何ぃぃぃぃっ!?」


 そのまま、紅蓮の鬼が地面に叩き付けられる。






「っ……アシドさん……!」


 助けに入ろうとしたシトキのジャガーノート。


 そのジャガーノートに高速で迫る黒い機体。


「っ……空を飛ぶ戦艦とか機体とか……なんなんだお前ら……!」


 ジャガーノートは、GA初のビーム兵器を搭載した機体だ。


 その六角パネルの下には、無数の砲門が収納されている。その砲門を5つ開放し、5連装のレーザーを放つ。


 黒い機体はあっさりとそれを回避。そして、両腰に帯びた双剣の鞘を開放。投げ出された双剣を空中で掴み取り、ジャガーノートを狙う。


「剣装……無駄だ…!」


 ジャガーノートの全身を覆う六角パネルは衝撃拡散性質や対衝撃硬化性質など、とにかく防御に使えるGMをふんだんに使用している。


 あのアイギィスを砕いたインパクトバウンドでさえ、一撃ではジャガーノートの装甲を抜く事は出来ない。


 しかし、黒い機体の振るった大剣は、僅かにだがジャガーノートの装甲に傷を付けた。


「っ……」
 それだけでは無い。


 一度ジャガーノートを斬り付けた黒い機体は緊急浮上。そして機体を翻し、今度は鋒を向けてジャガーノートへ襲いかかった。


 その鋒は、針の穴を縫うようにパネルとパネルの隙間、右肩と胴体の接続部を刺し貫く。


「……そんな…!?」


 剣を振り上げながら大空へと舞い上がる黒い機体。
 その動きに合わせ、ジャガーノートの右腕が跳ぶ。


 ジャガーノートはEAの擬似皮膚装甲の技術を応用し、パネルの下も関節部は堅い装甲で覆われている。


 それを、あっさりと斬り裂いた。








「ぐぎ……こ……の!」


 アシドは力で押し返すのは不可能だと判断し、両方の拳を展開、インパクトバウンドで灰色の機体の腕を吹き飛ばしてやろう、そう考えた。


 しかし、灰色の機体の方が早かった。


 キオウの肩部分を掴む掌から、ビームソードを噴射した。


 そのビームソードに貫かれ、キオウの腕への伝達が途絶える。


『っと…こういう武装があんの、すっかり忘れてたぜ』


 オープンチャンネルで開かれた通信回線。聞こえたのは、灰色の機体に乗っているらしい若い男の声。


 その発言は、まるでその灰色の機体の事をまるで把握していない様な言葉だった。


『っし、通信は開いてんな。聞こえるか、このトマトみてぇな機体に乗ってるクソッタレ』
「っ…よぉく聞こえてるぞこの灰色一辺倒のネズミ野郎…!」
『そぉかよ。一回だけ、これ言っとけって言われてるんで言わせてもらう。今すぐ投降すりゃ、命は助けてくれるらしいぞ』
「そりゃあ素敵な提案だなぁおい……で?投降しなかったら?」
『さぁな。任されてる。俺としては、殺しとくのが無難だとぁ思ってる』
「そぉだろうなぁ!」


 アシドはその全身から爆炎を撒き散らし、シートベルトもコックピットの外壁も、丸ごと吹き飛ばし、外へ。


 両腕が機能しなくなった機体で戦っても面白く無い。


「ぎゃはぁぁぁぁっ!!」


 巨大な炎塊を射出し、灰色の機体にブチ撒ける。


 灰色の機体は咄嗟に腕を戻してそれをガード。


「ハッ!流石にこの程度の火力じゃ効かねぇか!上げてくぞネズミ野郎!」
『炎を出す人間……テメェがジジィ共の言ってた獣人ビーストって奴かよ!』
「あぁ!よく知ってるじゃねぇか!」


 何故エグニアの最高機密とも言える獣人の事を知っているのか、そんな事はアシドに取ってはどうでも良い事だ。


 先程よりも巨大な炎塊を生み出す。その塊自体が超速で回転しているため、かなりの威力を生む。


「これならどぉだよネズミ野郎ッ!?」


 放たれた巨炎。
 灰色の機体が、炎の中に消える。


 並のGA・EAでは簡単に吹き飛ばされてしまう豪炎、無事で済むはずが無い。


(だがそう簡単にはいかねぇだろ?)


 期待に湧き、笑うアシド。


 キオウとの力比べに悠々と勝利してしまう様な化物地味た機体、この程度で終わるはずが無い。もっと楽しませてくれるはずだ。


 アシドの予想通り、灰色の機体は吹き荒れる火の粉の雨の中、立っていた。ただし、灰色の機体がガードに使った両腕は、原型は保ってはいるものの半壊状態。


 このまま何発も浴びせてやる。アシドがさらに笑みを濃くし、両腕を広げる。その時、ある事に気付いた。


 あの機体、コックピットハッチが開いていく。
 そして、そこに見えたのは、


「やっぱ、俺にゃこっちの方が合ってる」


 ライフルの銃口をこちらに向け、スコープを覗き込む灰髪の青年。


 相手は馬鹿みたいにタフだという獣人。脳天にブチ込んでも殺せるかどうか。


 だが、青年には一発でアシドを仕留めるだけの策があった。それは、青年のポケットに収まっている、真珠色の宝石。


 とある魔王が使っていた、『魔能サイを異常強化する魔石』、魔宝玉。


「GAから降りてくれて助かったぜ、トマト野郎。GAだろぉが生身だろぉが、狙い撃つ事にゃ変わりねぇ」


 だが、と続けながら、その指を引き金にかける。


「生身の方が、手っ取り早くて助かる」


 常軌を逸した威力を誇る一筋の弾丸が、放たれる。


 眉間に青白い光の筋が突き刺さる感触を感じながら、アシドは笑った。












 飛び散る自身の脳漿が、目に映る。




(あぁ?)




 まるでスロー再生だ。




(これ、死んだな)




 少しくらい喉笛引き裂かれるくらいなら平気だが、流石に脳天吹き飛ばされれば死ぬ。




 しかし、今、この状態は何だろう。




 普通、死ぬ寸前に見るのは走馬灯とやらでは無いのか。




(……あぁ、成程な、神様もたまにゃ気が効くじゃねぇか)




 今まで、ろくな人生では無かった。ただ戦いに快楽を求めるだけの日々。




 そんな日々を振り返るなんぞ無意味だ。だから、その時間を使って死の間際、この感覚を堪能する時間をくれたのだろう。




(意外と簡単に終わっちまうモンなんだな、俺の人生)




 獣人なんて素敵過ぎる存在にまでなったのに、戦闘中に不意打ち地味たヘッドショットでオサラバ。




(あーもうちょいヤりたかったが……)




 理不尽な死に方は、想定内だ。




 だって、彼はそれを望んでいた。




 戦いの中での死。それが、自分の終着点。




(まだ食い足りねぇ感はあるが、腹八分目って奴か)




 戦って、勝ちたい訳では無い。負けたくない訳では無い。




 ただ戦いたい。その中で死ぬなら、本望。それが、彼の矜持。




 それが実現するこの刹那に至っても、死の恐怖が間近に迫っても、その信念は揺るがない。




 それどころか死の恐怖が、快感に変換されていく。




(良い感じだ。……さぁて……)




 狂った様に笑いながら、アシドは最後につぶやいた。










「来世が楽しみだ」














 ✽










 隊長を失い、ヴァーンアップの面々はすぐに後退を始めた。


 突如駆けつけた2機は、それを追おうとはしなかった。


「……とりあえず、ファーストミッション成功、ってか?」


 灰色の機体から降りたのは、眼帯をした灰髪の青年。


 アムはその青年の元へ慎重に近付く。人王軍を撃退した、という事は、少なくとも共通の敵を持つ存在。だが味方かは定かでは無い。


「…助けてくれた事に礼を言う」
「ん?あぁ、感謝してぇんならお好きにどぉぞ」


 別に俺の意思じゃねぇし、と青年は欠伸。


「……貴様は、何者だ?」
「俺か?俺ぁガツィア=バッドライナー。あんたの部下の知り合いだ」
「部下……?」


 その時だった。アム達のすぐ近くに、あのブラックベールに良く似た黒い機体が着陸した。


 コックピットハッチが開き、現れたのは、アムもよく知る人物。


「騎士長!」
「なっ…ロイチ、なのか……!?」


 コックピットから飛び降り、こちらへ駆け寄って来た優形の青年、それは紛れもなくアムの部下、ロイチ=ロストリッパー。


「……無事、だったんだな」
「えぇ。あなたが命を賭けて逃がしてくれたおかげで……僕以外は、道中で倒れてしまいましたが……」


 アムは、全てを失ってはいなかった。まだ、部下が1人残っていた。


「助けに来るのが遅くなってしまって、申し訳ありません。『ブラッククラウン』が実用段階に至ったのがつい先日で…」
「ブラッククラウン?」
「クソ行き倒れが乗ってた黒いのだ。俺を追っかけ回してくれた…ブラックベールとか言ったか?あれを元に、ジジィ共が作ったモンだ」


 アレですよ、とロイチが今まで乗っていた黒い機体を差す。


「…そうだ。君達が乗っていたあの空飛ぶ戦艦と言い、その機体と言い…一体、何なんだ?」


 今もアムの視界に入っている空中に浮かぶ戦艦。


 ブラックベールが飛行のために試行錯誤して来た事をまるで無視して飛行する機体。


 あの紅鬼をも圧倒する出力を持ち、装甲性能もかなり高い灰色の機体。


 並の組織では手に入れ様が無い様な超技術。


「……まぁ、俺らの事はこれからあのクソ桃毛……お姫様が全世界向けにスピーチしてくれるさ」














 ✽










 新星歴1061年12月25日。


 その日、世界中の映像媒体を映す機器が、10分間だけジャックされた。


 そこに映ったのは、桃色の髪の少女。その桃色の尻尾から見てもわかる通り、魔人だ。


「こんにちは。私は、アピア=ウィズライフ。…アビスクロックの魔王、アロン=ウィズライフの娘です」


 その口調は、堂々たる物だった。強い意思を持って臨んでいる。それがよくわかる。


「少しだけ、私のお話を聞いてください」


 魔人差別主義者ですら、一瞬だけ真摯に耳を傾けたいと思ってしまう。それくらい、アピアの言葉には力が込められていた。


「私には、夢があります」


 それは、誰も知らないであろう、彼女の父の夢。


「私は、学校へ行き、笑いたい。お友達と授業難しいねって、一緒に頭を抱えたい。私は、学校の帰りに服屋さんに行って、店員さんの無理矢理なセールスに圧倒されながらも、お友達と可愛いコーデを選びたい」


 アピアの口から発せられる事に、大仰な事など何一つ無い。


「私は、社会に出て、苦しくても楽しんでいたい。ストレスが溜まっても、気の合う同僚さんとわいわい騒げば忘れてしまう。私は、将来結婚して、笑いの絶えない家庭を築きたい。きっと夫と喧嘩をする事もあるでしょう。でも、翌日にはケロっと笑い合う」


 それは、他愛も無い願望の数々。


「私は、自分の子供を抱きしめて、世界は素晴らしいのだと、毎日言い聞かせてあげたい」


 本当に、取り留めのない、ただの夢。


「笑っていたい、楽しんでいたい。素晴らしい世界を生きたい。そんな願望、私以外の方も持っているはずです。誰だって、そう思ってるはずなんです」


 当然の事だ。誰だって、不幸なんて望まない。


「その願いに、尻尾の有無は関係ありません」


 断言する。


 今、この世界は間違っている、と。


「私達は、所詮生まれた場所が違うだけ。環境が違っただけ。元々傷つけ合っていた理由はたったそれだけの、くだらない事でした」


 何故たったそれだけの事から、憎しみの連鎖が始まってしまったのか。その理由に、答えは無い。何故なら、間違っているのだから。


「こんな簡単な事、馬鹿だ馬鹿だと言われている私でも、わかります」


 それくらい、当然の事。


「ですが、それを言われたからって、もうそう簡単には行かない事も、わかります」


 ハロニア人も地球人も、互いに傷つけ合い過ぎた。


 今すぐ手を取り合う事など、不可能な程に。


「そして、それらを丸く納める術を、私は知りません」


 わかっていればもうやっている。そんな方法、無いのだ。


「でも、諦めたくありません。今、世界中で起きているハロニア人への弾圧を、見過ごす訳には行きません」


 だから、アピアは、お願いする。


「私達のお願いは、『今は』ただ1つ。魔国領を、貸していただけませんか?」


 魔国と呼ばれていたその場所。そこだけでいい。


「そこだけで良いんです。私達ハロニア人に、生きる場所をください」


 それが、「今の願い」。


「でも、そこで終わるつもりはありません」


 アピアは、笑った。


 その笑顔は、挑発でも嘲笑でも、愉悦でも無い。ただ、誠意を持って、微笑みかける。


「どれだけ時間が掛かっても良いんです。そこから、全ての人々の融和と共生を、目指していただけませんか?」


 今は、居場所を貸してくれるだけでいい。


 でも、「話し合い」を重ね、いずれは――――


「それすら、夢物語だと、皆に言われました。でも、それしか無いと、私は想います」


 だから、これだけをお願いする。


「私達はエグニア帝国側からの返答を待ちます。ただし、ただ待っている事はしません」


 スっと息を吸い、宣言する。


「私達は、『夜明けの喜びモーニングコール』。あらゆる理不尽を許さない、……武装組織です」


 でも、ただ武力を振るう様な組織では無い。


「私達は、この世界中で行われる、『あらゆる』弾圧行為を認めません」


 それは、ハロニア人だけを守る訳では無い、という事。


 人類全てに対し、味方をする。


「融和と共生が成されるその日まで、私達は守り続けます」


 専守防衛。
 エグニアによるハロニア人への殲滅行為を含め、他あらゆる理不尽な攻撃行為を、片っ端から叩き潰し、守る。


「守って、守って、守り抜いて、いつかは話し合いの席に付ける様に尽力し、全ての人々が笑い合える様にする。それが、私達の戦い方です」


 くだらない傷つけ合いは、もうたくさんだ。


「もう一度言います。私達は『夜明けの喜びモーニングコール』。ただひたすら守る事で、この世界を変えてみせます。どんな場所で、どんな存在として生まれようと、笑って生きて行ける。そんな世界に」


 闇に閉ざされた様なこの世界に夜明けを告げるため、その者達は、動き出した。














 ✽










「……何度聞いても、あのクソ桃毛のお話は夢たっぷりだ」


 バカにする様に、ガツィアが笑う。


 ガツィア・ロイチ・アムの3人は「夜明けの喜びモーニングコール」の旗艦、『希望ノ舟スノウ・ドロップ』の談話室。
 そこにあるモニターで、アピアの宣言を聞いていた。


「アピア様も健在だったのですね……」
「えぇ、アビスクロック崩壊の際、命からがら逃げ出し、キリトさん…僕らの知り合いに保護されていた様です」
「そんで、『平和機関ピースメイカー』とかいう得体の知れねぇ組織のジジィ共に、このモーニングなんちゃらの象徴として祭り上げられたって訳だ」
「……で、今の宣誓通りに、君達は動くのか?」
「あぁ。どうもモーニングなんちゃらってのはいくつか部隊があるらしいからな。あいつが言ってた『守りまくる作戦』ってのぁ、決して現実離れした話じゃあねぇ」


 ガツィア達以外にも部隊がある。世界中にだ。


 彼女の最終目標はともかく、「あらゆる弾圧行為から人々を守る」という作戦は不可能では無い。


「それと、テメェもな」


 え、とアムが一瞬止まる。


「たりめぇだろ。ただそこのクソ行き倒れの発情相手だからって助けるとでも…」


「発情相手って!言い方ってモンがありますよね!?」
「あーはいはい。とにかく、だ。テメェを救助したのぁ、あのクソ桃毛の言ってた守りまくる作戦のデモンストレーション兼テメェも戦力としてこの組織に参加させるためだ…ってジジィ共が言ってんだよ」
「……ですが、あなたが戦闘に参加する事を望まないのなら、僕がどうにか……」
「いや、いい」


 アムは少しだけ笑った。


「私も、戦うよ」


 もう、いい。戦う理由で、納得の行く答えを見つけた。


「私は生きるために戦うと、決めた。抗う力があるのに、死にたくは無い。それだけだよ。立派な目的も、何も無い」


 この組織は、ハロニア人、つまりアム達がまっとうに生きていける世界のために戦うと言った。


 ならば、その中で戦う事に何の抵抗があるだろうか。


「…………」
「がっかりしたか?ロイチ」


 気高い騎士長の面影は、もう無い。


「……いえ。それがあなたの答えなら、それで良いんです」
「あぁ、俺も良ぃと思うぜ。つぅか、それが普通だ」


 ガツィアが楽し気に笑った。


 アムの出した答えは、ガツィアやロイチがとっくの昔にたどり着いていた答え。


「生きるための戦いだ。これ以上シンプルなモンは無ぇ」
「…君達も、同じなのか?」
「はい」
「まぁな」


 ガツィアやロイチも、同じ。


 キリトからこの組織の話を聞き、すぐに協力を決めた。だからここにいる。


「それと、もう1つだ」
「もう1つ?」
「今の世界はくだらな過ぎて、気にいらねぇ」


 この艦には、とある男が乗っている。


 その男の名は、イガルド=ビッグガイ。ハトマの従業員だった魔人。


 他にも、ガツィアと直接面識は無いものの、ハトマに勤めていた魔人がこの艦には乗っている。


 トトリが平和機関と繋がりがあり、そこからこの艦を紹介されたらしい。


 イガルドから、話は聞いた。


 ハイネは、ガツィアの帰りを今でも笑って待っている。


 だが、エグニアが魔人殲滅に動き出し、その笑顔はまた不安に塗り潰されてしまったと。


 ガツィアだけでは無い、イガルド達の事も案じて、彼女は不安な日々を過ごしている。


「何で尻尾があるってだけで毛嫌いしやがるのか知らねぇが、人王とやらはちょっくら図に乗り過ぎた」


 地球人として生まれたか。
 ハロニア人として生まれたか。


 たったそれだけの違いでしか無い。


 それだけの違い、生まれた場所や環境のせいで、大好きな人との別れを二度も経験し、その人の笑顔を守る事すら許されない、1人の傭兵がいる。


「上等じゃねぇか、生まれた場所だ何だで、人生が決めつけられちまう?そんな世界、ブチ抜いてやる」


 そんな世界変えてやる。


 どこでどう生まれても、平気な様にしてやる。


 アピアは、奇しくもガツィアと同じ夢物語を語った。


 ガツィアがここにいる最大の理由。


「俺ぁ生きたい様に生きる。そのために、今まで散々引き金を引いてきた」


 そして、これからも。








 死の弾丸と呼ばれた男が、くだらな過ぎる世界の支配者に引き金を引く。
















































 


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