BLACK・LIKE

須方三城

02,黒斑さんは理不尽には抗える。

 ひとまず、パパッと署内を回ってみよう。
 と言う訳で、黒斑と黒志摩は薄暗い第三支署内を適当に歩き回っていた。


「……で、ここが福祉課のオフィス。まぁ簡単に言うと、魔物被害を被った人達のケアとか、被害は受けてないけど魔物が見える人達へのアドバイスなんかを主な業務にしてる所だね。定期的に捜査官のメンタルケア面談もやってるし、結構忙しい部署だよ」
「はい。記憶しておきます」


 署内案内が始まってからここまでの黒志摩の印象は「非常に素直」に尽きる。黒斑が「さっきの中年云々は幻聴だったのかな」と思い始める程度には素直だ。


 うん、幻聴だったと言う事にしておこう。
 考えてみれば、初対面の後輩が先輩に向かって「中年」だの「見苦しい」だの「性欲巡査長」などと毒を吐く訳がない。


「さて……じゃあ、各部署のオフィスや会議室は紹介し終わったし、トイレと非常口、消火栓も確認した、と……」


 本来、新人研修の類は「この項目は完了してます」みたいなチェックシートがあるモノだが、黒志摩にはそれが無い。
 紙一枚をケチる悲しいバックボーンを察して欲しい。


 なので、黒斑はスマホのメモ機能を使い、回った場所をメモしていた。
 そのメモを読み返し、回っていない場所を探す。


「んー……後は総務くらいか」


 と言う訳で、早速総務の窓口へと足を運ぶ事に。
 総務は福祉課のオフィスからはそう離れていないが、それでも一分弱はかかる。その一分弱、無言と言うのも何かと気色悪いので、黒斑は歩を進めながら色々と話を振ってみる事にした。


「さて、黒志摩ちゃん。ここまでで何か、質問とかあったりするかな?」
「そうですね…ここまで案内された場所については、今の所、特に思い当たりません」


 まぁ、初日も初日のオリエン中。わからない事がわからないと言うのも普通の話か。
 この話題はちょっと時期尚早だった様だ。


「じゃあ、何か思いついたらすぐ聞いてくれていいから」
「ありがとうございます。……あ」
「ん、何? 早速何か思いついた?」
「今質問すべき事かと言われるとあれですが……一点、聖務学校アカデミア時代から気になっていた事をお伺いしてもよろしいですか?」
「お。全然オッケーよ。バッチ来い」
「捜査官の基本業務スケジュール等。聖務学校アカデミアでは伺う機会が無かったモノで」
「あー」


 聖務学校アカデミアでそんな事を聞いた日にゃ「捜査官になった後の事を気にする余裕があるのかオォン?」とその場で筋トレさせられてしまう。
 実際、黒斑がそう言う目にあった。


「あれでしょ。『魔物が活発になる夕方まで、捜査官は何をしてるの?』って感じの疑問」
「まさしくその通りです。よく私の様な若者…ではなく、若輩者の心がわかりましたね」
「俺も在学中に同じ事が気になったからねぇ」


 然りげ無く年寄り扱いされた事は気付かなかった事にしておく。


「まぁ人によりけりだけど…大体の捜査官の日中業務は『Cレポ』の作成だね」
「Cレポ?」
「『コンクエスト・レポート』。日本語で言えば『討魔報告書』って所かな。自分が退治した魔物の容姿や行動、そんでそいつとどう言う内容の戦闘をしたか、撃った弾の数とかも正確に報告書としてまとめる訳。要するに魔物との戦闘を事細かに記した報告書さ」


 ちなみに、Cレポは一体の魔物ごとに一件ずつ作成する必要がある。なので、単独で日に何体も魔物を討伐するくせに書類作成デスクワークが苦手だし大嫌いな黒斑は残業の嵐に見舞われる事が多い。
 仕事熱心であればあるほど仕事量が増えると言う、社畜量産仕様の泥沼システムだと思う。


「Cレポで『無駄弾を撃った』と判断されたら無駄弾分の費用を給料から天引きされる事もあるから注意した方が良いよ。聖具パニテムもコストダウンが進んでるとは言え、未だに『聖弾パニスト』は一発一発が結構な値段だし」
「ご忠告ありがとうございます。まぁ、私はどこかの誰かと違ってそんなミスはしませんが」
「何か、俺の事を無駄弾大好きマンだと決めつけてない?」
「違うのですか?」
「……確かに、新人時代は給料が半額以下まで減った事もあるけどさ……」


 黒斑は魔物が結構嫌いだ。まぁ、魔物が好きで聖務捜査官になるなんて極々一部中の一部の変態くらいだろう。
 なので、黒斑は討伐の際には割と容赦しない。
 聖務捜査官の心構えに「魔物は問答無用一撃必殺を心懸けろ」と言う文言があるので、一応、基本は一発で仕留められる様に努める。が、もし初撃で仕留め損なったらそこからは「さっさと消えてくれ」とやや感情的に撃ちまくってしまう節がある。


 何年か前にも、公園の前で女子高生が魔物に襲われていた際に「何してやがるクソが」と思わず無駄弾を撃ってしまったっけか……


 しかし、今日会ったばかりの黒志摩が何故にそんな「知ってますよ」感を出せるのか。黒斑は不思議でならない。
 どこかで黒斑が無駄弾をバラまく所でも見た事があるのだろうか。


「ちなみに、そのレポートの作成以外にはどの様な?」
「あとは…自主パトロールとか」


 過去に魔物が目撃された場所をくまなく探して、隠れて眠ってる魔物を探し出して寝込みを襲う。
 それが聖務捜査官の自主パトロール。


 魔物が現れる理屈はまだ未解明だが、一度魔物が目撃された場所には何体も現れる事があるのだ。
 魔物を見つけられなくても、今後現れた時のために戦いやすい地形に見当を付けておくのも大事な事である。


聖務学校アカデミアの施設に足を運んで生徒と一緒に訓練を受けるなんてマゾいのもいれば、夕方までオフィスでコーヒーに入れる砂糖の黄金比を研究してる奴もいるな」
「……基本、夕方までは自由勤労と言う事ですか?」
「まぁ、何か特別な命令でも無い限り、そうなるね」
「特別な命令、と言うモノの具体例をお聞きしてもよろしいですか?」
「お、食いつくね」
「何か疑問を思ったらすぐ聞いて良い、と仰られていたので。それともアレですか? 自分でああ豪語して置きながら、想定していたより質問が来て面倒になりましたか? 愛想が無い挙句に想像を絶する面倒臭い後輩で申し訳ありません」
「いやいやいや! そんな風には思ってないから! むしろ逆! 良い事だねぇって思っただけ! だからその軽蔑する様な半目やめて!? 俺そんな酷い先輩違うからね! ほら見てこの良い先輩感の溢れるスマイル!」


 何だろう。急激にさっきのオフィスでの黒志摩が顔を見せた気がする。


 このままではいかん、と黒斑は自分にできる精一杯の良い笑顔を見せてみた。
 この黒斑。普段からヘラヘラしているだけあって、それなりに笑顔の柔らかさには自信が…


「……見苦しい」
「く、黒志摩ちゃん…ッ!?」


 完全に逆効果だった模様。


「……あ、あのさ黒志摩ちゃん……ちょっと良いかな」
「はい。なんでしょうか?」
「君の質問に答える前に、取り急ぎこっちから聞きたい事があるんだけど…」


 さっきは灰堂の乱入からのなぁなぁで問うタイミングを失ったが、今こそ言及すべきだろう。
 君は一体何故、そんな刺のある言葉を選ぶんだ? と。
 だが、


「……セクハラですか?」
「違う! 違うぞ黒志摩ちゃん! 俺はそんな事しない! だからその『この男はスリーサイズを聞くつもりに違いない』と言う偏見に満ちた目をやめなさい!」
「……? それ以外に一体何を……?」
「えぇっ!? それ以外に想定できないの!? 一体俺をなんだと思ってるの!?」
「性欲巡査長」
「えぇいッさっきのネタがまだ尾をッ! 違うからね!?」
「性欲など無いと?」
「そこは否定してない」


 否定できない、の方が正しいかも知れないが。


「ただ、俺が今聞きたいのは性欲絡みな事じゃないって事!」
「そんな馬鹿な……では、如何様な」
「俺が聞きたいのはね、君がちょいちょい俺に容赦ない毒を浴びせかけてくる理由だ」
「!」


 黒志摩は少し考えると、


「……私は、その時々に最も適切だと思われる言葉を選んでいるだけです。もしそれが聞くに苦しい、耳障りな言葉…俗に言う『毒』であると感じるのなら、それはそう言う事でしょう」


 黒志摩はこう言っている「私の言葉に蔑みのニュアンスは含まれていない。ただただ実直な感想である」と。
 つまり、黒志摩は先程、純粋に黒斑の笑顔を見苦しいと思ったと言う事だ。


「……うぉ、う、うん、そうか。それは……うん」


 実はこの黒斑、灰堂や他の同僚から結構な頻度で酷い扱いを受ける事がある。
 そして、その連中が黒斑を蔑んだり弄ったりするのは「黒斑の反応が愉快だから」と言う実に理不尽な理由だ。
 そんな理由なら黒斑は「ふざけんなコラ!」と対応できる。理不尽に抗うのは誰もが持つ権利である。イッツ・レジスト。


 ……だが「実直な感想です」と言うスタンスで蔑まれた場合、一体どう対応するのが正解なのだろうか。


 実直、つまり素直。悪意無き純朴な言葉。例えるなら「今日は良い天気ですね」くらいの感覚。
 それに対し怒ると言うのは、こう、大人気ないと言うか、理不尽では無かろうか。
 だって、黒志摩はあくまで『空模様の具合を何気なく口にする感覚』で『黒斑がどう見えたか』を口走っただけなのだから。


 多分だが、それに激昂するのはよろしくない対応だと思う。


「……わ、わかった。それじゃあ仕方無い…か、な? うん」


 黒志摩の言葉が辛いのは自分が未熟だから。そう納得するとしよう。と言うか、今はそうする事しかできない。
 今の黒斑には、どう対応すれば良いのかわからない。この件はひとまずこれで飲み込んで保留しておく。


「そちらの聞きたい事とは、以上ですか?」
「あ、うん」


 取り急ぎ黒斑が黒志摩に訴えたかった用件は済んだ。……色々と釈然としてないが。


「では、続きをお願いしてもよろしいですか?」
「続き…ああ、特務の話か」


 そうだ。元々黒志摩の質問の途中で脱線したのだった。
 気を取り直して、黒斑は『先輩として後輩の質問に答えるモード』に戻る。


「特務の内容は、ほとんどが『落とし』だよ」
「『落とし』と言いますと…魔物に取り憑かれた人間から、魔物を引き剥がす業務の事ですか?」
「そうそう。その通り」


 魔物は『素質のある人間に取り憑き、悪意ある行動を取る』事を目的としている。
 つまり、魔物に取り憑かれた人間は、十中八九犯罪に走る訳だ。
 そして、魔物は一定の悪行をこなすまで取り憑いた人間から離れる事は無い。
 そんな『現在進行形で魔物に取り憑かれた状態にあると思われる者』がで警察に確保された時、警察からエスケーに協力要請が来る手筈になっている。
 その要請が来たら、エスケーの捜査官や専門の技師が『落とし』に出向くのである。


「……? ですが、落としは捜査官ではなく『祓魔ふつま技師』の職務領域だと聖務学校アカデミアで習いました」
「本来はそうだけどね。このご時世、ウチみたいな小さい支署からは祓魔課が消えちゃったから」


 祓魔『技師』と言っても、落としには大して特別な技術はいらない。
 被害者の身体から魔物に取り憑かれた痕跡を探し出し、落とし用の聖具パニテムで処置を行うだけ。ちょっと勉強会に出れば充分こなせる業務だ。
 なので費用削減の矛先は真っ先に祓魔技師に向かった。祓魔技師の人員削減…まぁ、公務員なのでリストラとか喰らった訳ではなく、捜査官や事務方がやや少ない地域にそれらの人員として鞍替え異動させられたと言う感じだ。


「魔物の認知度や捜査官の質が向上したおかげで、魔物に取り憑かれる人がかなり減った、ってのも大きいだろうね」


 当然、魔物が世間に認知され始めた半世紀以上前から魔物はいて、魔物に取り憑かれる被害者もいた。
 その頃の具体的な魔物対策は「振り返らない事」か「塩を投げつけて怯んだ隙に逃げる」くらいしか無く、魔物が見える家系の人達がそれぞれ親の代から魔物について注意を促される程度。そのため、魔物に憑かれ「悪行を強制される」被害者は非常に多かった。


 だが、それから時代は流れ、まだ充分とは言えないが魔物の存在とその対策は広く世間に認知される様になり、加えて捜査官による魔物駆除も効率が上がってきた。
 魔物への最低限の対策はそれなりに浸透し、魔物が無力な人間を毒牙にかける機会も極端に減少。
 今のご時世、魔物に取り憑かれる案件そのものがレアケースと成りつつあるのだ。


 エスケー発足当時は人手不足が嘆かわれた祓魔技師だが、今となってはタダ飯喰らいの近縁種。
 聖務学校アカデミアの教本からその存在が完全に消える日は、そう遠く無いだろう。


「そう言った事情がありましたか……少々世知辛いモノを感じてしまう話ですね」
「全くね。最近のエスケートピックスはもっぱら金策の話題ばっかだよ」


 仕方無い部分はあるとは言え、やれやれである。


「黒志摩ちゃんにも近い内に落とし勉強会の話が来ると思うよ」
「はい。祓魔技師領域も予習しておきます」


 そんな気張らなくても良い軽いモノなのだが、真面目な子だなぁ。と黒斑は少し笑ってしまう。
 本当、毒気さえ無ければ素直な良い子だ。……素直さ故の毒気だった、と言う事を考えると、やや複雑ではあるが。


「っと、そんな話をしてる内に総務だ」


 黒斑達がたどり着いたドアには『総務課』と刻まれたプレートが貼り付けられていた。


総務ここ聖具パニテムの取出や返却、諸々の書類提出だの備品の受け取りだので結構頻繁に通う事になると思う」


 魔物と戦うために絶対必要な道具、『聖具パニテム』。
 簡単に言うと、『聖鉄パニタル』と呼ばれる「魔物に非常に甚大な影響を与えられる特殊鉱物」を加工した武器類の事だ。


 貴重な逸品だし、人間にも普通に致命傷を与えられる危険な代物もある。
 なので自主パトロールや夕方の討魔業務に出向くまでは、基本的に総務の管理する大金庫のしまっておく訳だ。


「さて、総務来たついでに黒志摩ちゃんのデスクも貰っちゃおうとか思ってたけど……まだ結構時間あるなぁ」


 灰堂の話では、総務で黒志摩のデスクを準備しているので後で取りに行け、との事だった。
 署内を案内するついでにそれも済まそうと思っていたのだが……想定していたよりも案内が早々に終わってしまった。
 全体の業務開始時間まで、まだ少し時間がある。


「それに聖具パニテムの取出手続きとか実際にやってみたかったけど……まぁ、仕方無い。二度手間になっちゃうけど、また後で来よう」
「いちいち手間を取らせる厄介な後輩で申し訳ありません」
「断じてそんな風には思ってないからね! よし、じゃあとりあえず一旦オフィスに戻…」
「へーい黒斑クロッさん! 何ノロノロしてんのですかってどーんッ!」


 黒斑が踵を返した瞬間、堅い肘鉄がその鼻っ柱を強襲した。


「はごァッ」


 あまりにも不意打ち過ぎる一撃に、黒斑は綺麗にドテーンッとひっくり返ってしまう。
 彼愛用のサングラスは廊下を滑って暗闇の先へ。


「……大丈夫ですか、黒斑聖務巡査ち…」
「むっほー! 君が左弥ちゃん!? はじめまッ!」


 黒斑に差し伸べようとした黒志摩の手を、謎の手が掴み止めた。
 その手は、今まさに黒斑に肘鉄をお見舞いした者の手。


「私は紅瓦べにがわら 紗和子さわこ! まだまだイケる二五歳! 階級は二等聖務巡査! そして何を隠そう君の直の先輩DAZE☆ よろ!」
「……はぁ。黒志摩左弥と申しま…」
「知ってる!」
「そ、そうですか……」


 黒志摩の手をぐにぐにと握る異様に騒がしい女性。
 美人と言うよりは可愛いと表現すべきだろうか。少し顔立ちに幼さが残っている様に感じる。
 その赤味がかったショートヘアは毛の根元が黒い事から、地毛では無く染髪だろうと思われる。
 服装は女性向けのビジネススーツだが、その有り余る活発そうな雰囲気にはアスリート風のラフな格好とかが非常に似合いそうだ。


「あ、でもアレだ! 趣味とか特技とかフェチとか聞きたいかも! 特にフェチ! 人となりが見えてくるからね!」
「趣味は読書。特技は…強いて言えば、親が軽く引く程度には記憶力があります。よろしくお願いします」
「あれれ!? フェチは!? ノーコメント!? そりゃあんまりだよ!」
「……まぁ、異性的魅力を強く感じる部位を強いて上げるなら……顎鬚、でしょうか」
「おぉう、つまり大枠で言えば『顎フェチ』!? 意外とマニアック! 良いよぉ、そう言う意外性! 意外な一面フェチを持つ人は仲良くなっていく楽しみがある! 理想の新人! 褒めッ!」
「ありがとうございます」
「ちなみに紅瓦の紅は灰堂班紅一点の紅! でも今日から二点ッ! だから一緒に頑張ってこうね!」
「紅一点……? あの、灰堂聖務警部も女性では?」
「芽茱ちゃんは司令ポジだから!」
「…………?」


 戦隊物とか欠片も興味が無いタイプの黒志摩には、紅瓦の振りかざす基準がいまいち理解できない。


「ッ~…ぉ、おい、紅瓦……! いきなり何しやがる!?」


 と、ここで黒斑が復活。


「たまにはスキンシップでも、と」
「激しいわッ! 今日日きょうび体育会系の同輩でも中々無ぇぞ、このレベルのスキンシップ!」


 真面目に痛ぇなこの野郎…と黒斑は鼻を押さえながら立ち上がる。


「で、大丈夫ですか? 黒斑聖務巡査長」
「おう、ありがとう……つぅか、紅瓦。何でお前もう来てんの?」


 まだ捜査官が出勤し始めるには早い時間帯だが。


「そりゃ、芽茱ちゃんから新人さんが来るって聞いてましたからねー。早めに来て戯れようかと」
「……待って、黒志摩ちゃんの事、聞いてたの?」
「うん。一昨日、クロッさんに内緒で皆でミーティングした時に」
「何で敢えて俺を外したの!? ねぇ!?」
「芽茱ちゃん曰く、クロッさんにはサプライズにした方が面白いって」
「……あの人は……!」
「何と言うか、第一印象通り曲者の様ですね、灰堂聖務警部」
「かなりな。黒志摩ちゃんも気を付けて」
「さ! そんな事は置いといて。さっさとオフィス戻りましょー! クロッさんがノロノロ案内してるから、タケちんもシドさんもお待ちかねですよ?」
「もう全員来てんのか。本当、こう言うイベント事の時は集まり良いよな灰堂班ウチ。ま、丁度良いか」


 ようやく鼻の痛みが引き、やれやれ、と黒斑は溜息。


「じゃあ、黒志摩ちゃん。次は、これから先輩になる連中の紹介と行こうか」








「あ、でも待って。まずサングラスどこ? 俺のマイサン」
「……先程、紅瓦二等聖務巡査の肘鉄が炸裂した際、あちらの方にクルクルと滑って行きましたけど」
「クロッさんはドジっ子ですねぇ! もう!」
「誰のせいだと!? あーもう。取ってくるからちょっと待ってて」
「はーい。じゃあ、左弥ちゃん。ここは私が教育係一時代理を務めるよ! さぁ、私に付いておいで! 皆が待ってるZE☆」
「ちょぉいッ! 待っててって言ってるのにぃッ!」
「クロッさんの必死ウケる」
「おぉい!? もうお前ら本当にいつもいつも何なの!? 俺を泣かせたいの!? ねぇ!?」
「………………」


 ……『お前ら』、『いつもいつも』。
 黒斑の言動から、なんとなくだが「灰堂班に置ける黒斑の立ち位置」が見えて来た黒志摩だった。








◆黒志摩ちゃんはひっそり羨ましがる◆
(……黒斑さんと激しめのスキンシップ……)
「ん? どったの左弥ちゃん? 私の肘、何か付いてる?」
「……紅瓦二等。不躾なお願いで大変恐縮なのですが……今度、肘打ちの仕方をレクチャーしていただけませんか?」
「え? なんで?」
「どうしても、黒斑聖務巡査長にお見舞いしたく」(今は肘だけでも構わない。私だって激しめのスキンシップしたいんです)
「黒志摩ちゃんッ!?」
「いいよー」
「紅瓦ッ!?」







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