B.L.O~JKがイケメンになってチェーンソーを振り回す冒険譚~
15,怨霊の強襲、闇による誘引。
すごく童心に返っていた気がする。
何て言うか……めっちゃ楽しかった。
たかが魔物一匹…あ、一応魔王か。
どっちにしろ、たかだか一匹の獲物であんなに脳内麻薬ドピュドピュましまし状態になるなんて……【狂鬼嵐武】、最高。
幼少の頃、ただ蟻を一匹ずつ摘んで潰すだけでも小一時間遊べてたあの頃の感覚を思い出した。
ビーくんは私のそれと同じ様に、ウンコと言うワードだけで小一時間笑っていたね。
「……ふぅ……で、光のオーブ。これで、【歪みの核】って言うのは壊せたの?」
私の目の前には【歪みの魔王】だった黒い欠片の山がある。所々、黒と紫の中間色みたいなゲル状の物体も見える。
多分、黒いのが【歪みの魔王】の厚皮だったもので、黒紫なのが肉かな?
解体した時の感触は今でも手に残ってるんだけど、その他の記憶が曖昧だ。興奮で煮えた頭じゃろくに記憶できないのも仕方無いか。
別に私はスプラッタ映像に興奮する変態ではない。
この手に残る感触さえ覚えていられればそれで良い……はぁぁ……うん、これが良いの。
ま、それはさておき……これだけやれば、確実に死んでるでしょ?
ミッションコンプリ?
『……妙です』
「?」
『……貴方の手で確かに【歪みの魔王】は討たれた。そして、それに合わせて【歪みの核】の反応も【極めて弱体化した】……』
「弱体化した……?」
え? それって、【弱くなっただけ】で【消えてない】って事……?
「って、……!?」
わッ……!? 何? びっくりした……いきなり、【歪みの魔王】の残骸から何か変な煮汁みたいなのがピュッピュッと吹き出し始めたよ……?
……あれ、汁じゃない……ツヤがあって液体っぽく見えるけど、煙みたいにモウモウと上方向に登って寄り集まっていく。
一見すると黒いスライムの様なそれがバスケットボールくらいの大きさに達した時、
「ゥヴ、ヴ、よくも……人間よくもヴォオオオオオオオッ!!」
咆哮。それに合わせる様に黒スライム的な何かの表面に、もう見慣れてきたレベルの紅いギョロ目がひとつだけ、開眼した。
ボール状だった黒スライムの形状も変化。……うーん……何て言えば良いんだろう、類似物が思いつかない形だ……でも見覚えはある様な……あ、クリオネだ。
黒スライムは、なんかクリオネっぽい形に変形した。
にしても、今の吠え方にその目玉……まだ生きてたの、【歪みの魔王】。
そう言えば、ブライオンが【歪みの核】を取り込んだのがさっきの状態なんだっけ。
今度は差し詰めその【歪みの核】本体が現れたって所?
まったく、モヤシーヌちゃんから出て来たブライオンから核、と。マトリョーシカなの? しぶとい。
……まぁ良い、じゃあこれを倒せば今度こそ終わ……り、ぃ……?
「ふ、ふにゃす……?」
にゃ、にゃにこりぇ……か、身体に、力が入らな……か、【回復酔い】とはまた違う感触……だけ、ど……
『ッ、不味い……これは【怨霊化】!!』
お、怨霊化って……確か、中盤以降の魔物を討伐した時に、魔物の死体がロストすると同時に怨霊系の魔物が出現するレア現象の……?
雑魚魔物が一矢報いるための仕様だのに、仮にも魔王が……いや、そんな事より……
「た、たひかにま、まじゅい……」
つまり、今私の目の前にいるこの黒い煙みたいな奴は……【怨霊系の魔物】……私が習得しているAS【プロフェッショナルキラー】は、小型魔王にまで通用する即死効果【完全即死】を使える様になるのと引換に、【怨霊系魔物への耐性が極端に低くなり、エンカウントしただけで全ステータスが著しく低下する】と言うマイナス効果がある。
怨霊系の魔物や魔王の存在自体多くないので、その不利は割り切って習得を目指すユーザーも多いスキルだけど……
ま、まさか……こ、こんな局面で、こんな……で、でも待って。確か、【怨霊化で出現した怨霊系魔物】は【一撃、攻撃を放つと消える】はず。
なので、怨霊化が起きた場合、怨霊がモーションに入る前にのけぞらせてそのまま倒すか、怨霊の一撃をガードなり緊急回避なりで凌げば良い。
確かにステータス大幅減退効果のせいで大分動きは鈍くなってるけど……一撃防ぐくらいなら……!!
「ヴォ……ヴォォォ……許さん、許さんヴォォ……!! 貴様だけは、確実に道連れにするヴォオオオ!!」
え、何……ちょ、嘘でしょ……!?
何か、私と怨霊を囲うみたいに黒いモヤが竜巻の如く……ま、まさか……範囲攻撃……!?
ッ……しかも待って、黒い竜巻っぽい見た目の怨霊系範囲攻撃って……まさか【第四四四の魔王・ミナゴロ神デスモナー】が使ってくるガード無効+即死効果付きの【ダークデス・ダイブダウン】……!?
ガード無効かつ即死判定ありで高威力とハイスペック盛り盛りではあるけど、前兆モーションとして床にマークされる渦巻きが出てからヒット判定のある竜巻が発生するまでが非常に遅いので、普通にプレイしてれば回避余裕でそうそう喰らわない技。
その代わり、喰らえば言わずもがな大事故。
や、ヤバい、に、逃げないと……喰らったら、死ぬ……!!
全ステ……つまり防御力も著しく低下してる今、ガード不能高威力範囲攻撃とか絶対死ぬ……!!
しかも即死効果まで付いてくるんだよ……!? 仮にHP残るとしても理不尽にキルされる可能性がある……!!
早く、範囲外に逃げないと……!!
「ヴォォォオオオオ!! のそのそ這ってどこへ行くゥ!! ゆっくり死て逝ってね!!」
えぇい……身体さえまともに動けばゆるい感じの生首にしてやるものを……
って、うわッ、キモッ、頭がバックり避けて無数の触手がッ……!?
ま、まさかその触手でエロ同人みたいにめちゃく、グエッ、苦ひ……な、何の捻りもなくシンプルに締め落としにきてるゥ……!?
ぅ、うごぉぉおおおお……は、放せぇぇ……私は今でこそこんなナリだけど一応JKだぞぉぉお……!? そんな私をいきなり後ろからヌルヌル黒触手でチョークスリーパーして世のコンプライアンスが許すと思ってるの……!? この変質クリオネがァァァ……ァッ!!
ぐぅ……ってか、マジでこれ極まってる……!? ぬ、抜けられな……ぃ嫌だ……!!
こんな、こんな所でまた死ぬなんて死んでも御免ッ……!!
私は……これからこのBLOの世界で無双生活本番に入る予定なのに……!!
死にたくない……!! 死にとうない……!!
で、も、ぃ意識が……もう……く、ふぅ……!!
「ゆっくり死て逝ってね!! ゆっくり死て逝ってね!! ヴォホホ!!」
ご、こ、こんの……便所に吐き捨てられたタンカス魔王がァァァ……ッ!!
ぞ、うだ、光のオーブ……!! 光のオーブ……!!
加護でも祝福でも何でも良いからヘルプ……!!
もうこの際なら私の全身を鬱陶しくキラキラさせてくれちゃっても良いからァ……!!
死ぬくらいなら……死ぬくらいならギリギリそっちの方がマシ……!!
『【歪みの魔王】の怨嗟……ヴラド・レイサーメルの生存欲求……どちらも何と言う凄まじい執念でしょう!!』
「が、は、感心してないで……助けてくれませんかね……!? 苦し……苦しくて死ぬゥ……!! それでなくてもこのままだと死ぬゥ……!!」
『申し訳ない限りですが……その【歪みの魔王の怨霊】……【歪み】が更に深刻化していて、私が干渉するには改めてデータ解析する時間が……』
「そ、れ……どれ、くらいで……終わるの……!?」
『あとアバウト三六〇〇秒ほど……』
三六〇〇秒って……一時間……!?
いやいやいやいやいやァァァ……!!
ダークデス・ダイブダウンって前兆モーション出てからヒット判定出るまで遅いって言っても確か一〇秒くらいだからね……!?
もう多分あと五秒も無いよ……!?
『大丈夫ですよ……私の加護を受けた戦士は致命傷を負った場合自動的に近隣の町へワープする様になってますし……ただそのデータ不足である【歪みの魔王の怨霊】の攻撃に対して、私の加護が正常に発動するかは未知数ですが……多分大丈夫!!』
フラグ建った。今絶対にダメな方のフラグ建てやがったこの天の声。
「さぁ……一緒に逝くヴォ……!! 喰らヴォォォ!! ダークデス・ダイブダウン……ハイパァァァーーーッ!!」
「ちょぉ、ぁ、や、だ……!! やだ、ゃだやだや…ちょ、と、待って、ぃや……いやァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァぐわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……………………―――
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