食卓の騎士団~竜の姫君に珍味を捧げよ~

須方三城

一品目【Dスライムの粘液片ゼリー】



 カメロード王国王太子アルサー・ヴェンドラゴーは、簡潔に言うと【童心を忘れていない青年】。
 即ち【絶対に権力を握らせてはいけないタイプの人間】である。


 それが王太子なのだからもう手に負えない。


 彼の父であり国王ユーサ・ヴェンドラゴーはもう恒常的な頭痛が持病と化していた。


 ……【あの日】も、アルサーは、かつての【英雄】が振りかざしていた超絶聖剣【栄公守亀理刃エクスカリバー】をコソコソと持ち出し、【冒険】と称してこっそり【ダンジョン】へと足を運んだそうだ。


 王太子の犯行に気付いたマルイデスク騎士団副団長ペルノアは「あのクソ王子もう死ねば良いのに!!」と思いつつも部下数名と共に馬を走らせ、毎度の如く王太子を追った。
 またダンジョンの入口辺りでスライムに囲まれて慌てふためくアルサーを救助する羽目になるのか……とペルノア一行は恒例の展開を予想し、とても辟易。もういっそ不幸な事故に見せかけて……なんて事も脳裏を過るほどに。


 ――しかし、その日はいつもとは違った。


 なんと、ダンジョンへ向かう途中の道で、引き返してくるアルサーを発見したのである。


 ついに自らの行為を思い直す程度の知性を身につけたかクソ王子、とペルノアは一瞬感涙しかけた……が。


 アルサーが己の背後、馬の後部に乗せていた人物……いや、その【モンスター】を見て、絶句した。


 ……何を考えているのか。
 アルサーは、よりにもよってモンスターの中でも上級危険指定種である【ドラゴン種】……それも通常型よりも一層危険とされている【亜人型ドラゴン種】の雌個体をお持ち帰りしている途中だったのである。


 アルサー曰く「ダンジョンの入口で見つけた。人懐っこいし、可愛いから、妹にしようと思う。おっぱいもこんなに大きい」。


 急遽ぶちギレたペルノアがアルサーを本気マジでぶっ殺そうとしたり、ペルノアの殺意ある一撃で栄公守亀理刃エクスカリバーがへし折れてしまったり、ペルノアを「お気持ちは重々お察ししますがァァァッ!!」と止めようとした部下が地平線の彼方まで吹っ飛ばされてしまったり。
 その時のペルノアの大暴れっぷりは【事件】として後の世にも語り継がれていく事になる。


 そして、この【事件】の後、更なる【問題】が発生した。


 アルサーが連れ帰り義妹とした事でカメロードの姫となってしまったそのドラゴン娘……めちゃくちゃ偏食家だったのだ。
 いや、まぁ亜人型と言ってもドラゴンだし、人間の料理が口に合わないのは至極ごもっともと言えばその通りなのだが。


 ドラゴン種は一ヶ月程度の絶食を経ても健全でいられる強烈種。
 なのですぐさま深刻な事態になる事はないが……それでもこの問題は問題だ。


 このままじゃあこの子をウチに置いておけないじゃあないか、餓死してしまう!!


 そう騒いだアルサーに、誰もが「元いた場所に帰してきなさい」と言ったが、アルサーは聞く耳持たず。


 ついには、自身の権限で動かす事ができるマルイデスク騎士団に、こんな命令を下した。


「ドラゴン種が多く住まうダンジョンへ潜り、ドラゴンが食べそうな食材を探してくるのだ!! ナンなら余も付いて行くぞ!?」


 それを聞いた謹慎中のペルノアが、またぶちギレて栄公守亀理刃エクスカリバーをへし折った。
 どんどん超絶国宝の刃が短くなっていく。


 そして、王太子の命を受けた騎士団長ランスロンドは、「……あの馬鹿王子のせいで件のドラゴン娘が餓死してしまっては、祖国の不名誉だ」と仕方無く命令を受諾。
 実の息子であり【白亀の盾】の継承者であるガラハード、そしてその友であり【山吹亀の斧】の継承者ガヴェインに白羽の矢を立て、ダンジョンへと派遣する事を決定したのだった。




   ◆




「件のドラゴン娘に非は無い。おっぱい大きいらしいし……可愛いらしいし……むしろその子は被害者だ。全部あの馬鹿王子が悪い……!!」


 と言う訳で、半ば脱水症状を発症しながらもガラハードとガヴェインは【ドラゴンが食べそうな食材】を求めてダンジョンを潜行しているのだ。


 アルサーの野郎のどうこうはこの際どうでもいい。
 ウチの国の馬鹿王子のせいで、人類に友好的かつ何の罪も無いドラゴン娘が餓死と言う可哀想な死に様を晒すのは、見過ごせない。騎士以前に良識ある人間として。
 あと、ガラハード個人的には巨乳で可愛いらしいと噂のドラゴン娘と、あわよくばお近付きになりたい的な節もある。


「にしてもよォ……無茶苦茶な話だよなァ……よりにもよって生態が謎だらけのドラゴン種の飯を探して来いたァよォ……」


 ガヴェインの言う通り、ドラゴン種の生態は未解明な部分が多い。
 あまりの未知っぷりに、一部宗教では神格化されている事もある。


 基本的にダンジョンの深奥や人類未踏の秘境の奥地に住まうモンスター故、生態調査が容易ではないのだ。


 件のドラゴン娘は亜人型と言えどモンスターであるため、人類の言語文化に精通しているはずもなく。
 一応、現在、王宮の学者達が頑張って彼女に言語教育を施しているそうだが、餓死リミットまでに意思疎通が可能になるのは難しいだろうとの計算。


 つまり、今の所はガラハード達がひたすら足を棒にして食材を探しては持ち帰りを繰り返すしかない。


「でも、ある程度の目測は付けられているよ。学者達の見解だと、ドラゴンの鋭い牙や爪、体内の【魔法器官】はナワバリを巡る闘争以外にも【狩猟】に使われている可能性が高いらしい」
「つまり、あの馬鹿王子の命令はあながち的外れじゃあねェって訳か」


 ドラゴンは食糧を狩猟で得る性質を持っている可能性が高い。
 ならば、生息域が被っている生物を主食としているはずだ。


「僕達が狙うべきは、ダンジョン内の植物や鉱物ではなく、生物。つまり【モンスター】だ」
「でもよォ……それって、ドラゴンが住んでる深層まで進めって事かァ……? いくら俺達でも体が持たねェぞ。水分的な意味で」
「聞けば、件のドラゴン娘はダンジョンの入口まで出てきていたって話じゃんか。もしかしたら、浅い所にいるモンスターも食糧に成り得るかも知れない」
「おうおう……スライム辺りで済んでくれりゃあ、楽で良いがなァ」
「だね。そしたら本当に楽だ。僕らにかかればスライムなんてもう鼻くそ深追いしながらでも倒せるし。この前のヴルターナー地方への【遠征】の時みたいに」


 ――【遠征】。
 マルイデスク騎士団はカメロード王国の首都である【王都セントラル・レグロス】を活動拠点にし、王族、ひいては祖国のために身命を賭すと誓う騎士達の組織。
 だが、彼らの務めは王都の守護や王族の小間使いだけではない。


 カメロードは大陸統一国家。
 即ち、呆れるほどに国土が広い。
 そのため、国土はいくつかの【くに】に分割され、それぞれを王族に近しい極級貴族の者達が【領主】として統治している。
 そして王都セントラルの王族や大臣など【中枢為政者アリストクラット】と呼ばれる極度のお偉いさんが、各領主達の執政を定期的に視察する……と言う形で、大陸統一国家と言う国家形態が保たれているのだ。


 視察に護衛として同行するのも、マルイデスク騎士団の職務内容のひとつであり、その旅路が【遠征】である。


 遠征に利用するルートは、モンスター生息域をも無理矢理かっ拓いて通されている箇所も少なからず存在し、当然その箇所ではモンスターが出現してしまう。
 なので、マルイデスク騎士団の騎士はダンジョンに潜った事は無くとも、モンスターとの戦闘経験がそれなりにあるのだ。


 スライム種は地上にも多く生息するので、遠征への参加経験がそれなりのガラハードとガヴェインもスライムは幾匹と倒してきた。


「スライム程度なら余裕ヨユーだァ」
「じゃあ今回はひとまずスライムをパパッと捕まえて帰っちゃおうか。おらぁ!! 出てこいよスライムゥ!!」


 あっはっはっはっは、と何か変なテンションで笑いながら進む汗だくの二人。


 そんな中、ふと、ガヴェインが大人ひとりなら簡単に通れそうな【大きな横穴】の存在に気が付いた。


「お、ガラ公、何か横穴があんぞ。モンスターの巣穴じゃあねェか?」
「ほんと? スライム来いスライム。即行で狩って帰ろ……ぅよ……」


 ガラハードとガヴェインは共に横穴を覗き込み、そして揃って絶句した。


 横穴は縦に伸びており、深さがあった。
 覗き込んだ二人の眼下、洞窟道と同様に特殊なコケの薄発光で照らされたその穴の底には……


 毒々しい紫色のプニプニした球体が、うぞうぞと無数に蠢いていた。
 ……一瞥しただけで何匹いるのかカウントするのを諦める数だ。


 ガラハード達のお望み通り、スライム種のモンスターの巣穴である。


「……わぁ、スライムだぁ……」
「……スライムだァなァ……」


 二人は余りの光景にげんなりうふふ。


 調理場の隅っこに仕掛けておいた魔導粘着式ゴキブリ捕縛装置の中身を確認してしまった気分だ。


「……あの色合い……ナマで見るのは初めてだけど……多分あれだ。図鑑でみた【ドクスライム】」


■ドクスライム■
 スライム種の下級モンスター。
 毒属性のゲル質流動体で形成されたスライム。
 主な調理法はそのまま生でごっくん。ビールに漬けたドリアンの様な味がする。冷やすとデザート感覚。
 人間が食べるにはお供に解毒ドリンクが必須。
 主な必殺技は下級毒魔法【ポイズンズン】。


「爬虫類は毒性生物も平気で食べるらしいし、ドラゴン種もそうかもね。アレ、どうする……?」
「どうするって……行くしかねェだろ……?」
「……いや、でも、数が……」
「……ああ、数がなァ……」


 スライムなんて多少特種であろうと雑魚畜生に変わりないとわかりきってはいるのだが、数がヤバいにも程がある。


 あの数……ガラハードやガヴェインの実力的に、無策に飛び込んだとしてもやられると言う事はないはずだが……四方八方からずんずんポイズンズンされて、確実に結構なダメージを負う羽目になるだろう。
 塵の様な傷も、積もりに積もれば致命傷だ。


 一応、マルイデスク騎士団のメンバーは、かつて【英雄】と共に活躍した【大魔導師】ママーリン女史(年齢不詳・最低でも一九九九歳のミラクルお姉さん)の【緊急生命保護魔法】の庇護を受けているため、死にかけると自動的に王宮へ転送され、すぐに治療を受ける事ができる。
 万が一、ここでのダメージと毒が響いてブッ倒れても、万全の体制でケアを受けられる。


 ……だが、滅多な事では死なない万全の態勢と言っても、死に掛ける事には変わりない。
 それにもしも、転送前に治療の施し様が無い重体になってしまったら……


「まぁ、あれだよね……とりあえず、まず一人が飛び込んで囮になって、そっちに大多数のドクスライムが気を取られている内にもう一人が端っこらへんの個体を拉致る。いわゆるミスディレクション作戦が無難じゃあないかな」
「クレバーな作戦だな。それで行こうぜ。で、どっちが囮をやる?」
「「………………」」
「……ちょっとガヴェ子~☆ あんた行きなさいよ~、スライムなんて余裕なんでしょ? ちゃちゃっと二・三匹ひっかけてきてよぉ~☆」
「うごぇッ……い、いや、ガラ子こそぉ☆ スライム出てこいやとか言ってたじゃーん☆ それにナンパは得意でしょ? どォぞどォぞ♪」
「「……………………」」
「うぉぉぉお!! まずは君が行けよこのタフ野郎ォォォ!! そのガタイはどう考えても前衛タンク職だろォォォ!?」
「ふざっけんなァァァ!! タフにも限界があらァァァ!!」


 お互いにお互いの背をぐいぐいと押し合う騎士二人組。
 本気だ。二人共全身にビキビキと筋が浮かぶほどのパワーで押し合っている。


「大体、テメェこそ防具極振りな装備なんだからタンク向きだろォォォ!? あ、って言うか、【白亀の盾】って【状態異常無効】だったよな!? こりゃあテメェ異常の適任はいねェわァァァ!!」
「状態異常無効じゃないよォォォ!! 【状態異常即回復】だァァァ!!」


 ガラハードの装備している鎧型の神亀じんき【白亀の盾】の【加護】は装備者に【堅牢と健康】をもたらす。
 要するに、防御耐久力の超向上、そして毒や麻痺などの状態異常をすぐに回復して正常化してくれる。


「同じだろそんなもんんんんッ!!」
「全然違うからァァァ!! 一瞬で治ると言っても一瞬は罹るんだよォォォ!? 一瞬はごふッってなるんだよォォォ!! 一瞬でも苦しいの嫌ァァァ!!」
「治るから良いじゃあねェか!! 一瞬くらい我慢しろォォォ!!」
「はァァァ!? 例えば、【どうせ生き返れるならまぁいいや】と君は自ら死を選べるの!? 恐くて絶対無理でしょォォォ!? 僕の気持ちを考えて行けよこの外道ッ!!」
「まず治らない俺の身にもなれェェェ!! この外道ォ!!」
「ぐぅ……ああ言えばこう言うカフェイン野郎ッ……そ、そうだァァァ……知ってたかいガヴェェェ……!! カフェインって実は【毒素】なんだよォォォ!?」
「え、マジで?」
「うん。何かの本に書いてあった。カフェインを摂取し過ぎると死ぬって」
「ひぇッ」
「でも日常的にカフェインを多量摂取している君はピンピンしてる……この事から察するに……」
「察するに……?」
「ガヴェは実は、【毒にとっても強い】!!」
「!! そうだったのか!? 俺はそうだったのかァァァ!?」


【豆知識】
 カフェインに限らず、大体の成分は過剰摂取すると体に毒だゾ。


「ガヴェは今まで毒状態になった事がある!?」
「た、確かに無い……ただ単に毒魔法を使う奴と戦った事が無ェってだけな気がしないでもねェが……」
「それは気のせいだよ!! ガヴェ、君は毒にとっても強い……毒状態になんてならない、特別な騎士なんだよ!! 言うなれば【ポイズンナイト】なのさ!!」
「ぽ、ポイズンナイト……!! か、かっちょいい響き……お、俺がそれだってのか!?」
「ああ。だから行ってッ!!」
「おうッ!! ここは【戦巌せんがん】改め【ポイズンナイト】のガヴェインにお任せだゴルァ!!」
単細胞きみ相方バディで本当に良かったッ!!」
「しゃあああッ!! 行くぜゴルァ!!」


 ガヴェインが威勢良く、背に負っていた黄金の大斧を引き抜く。


 彼が継承した【山吹亀の斧】の【加護】は【剛力と元気】。
 太陽の様に輝くその大斧を戦意を込めて構えると、装備者のパワーが三倍の出力になり、そしてとてもハイテンションになる。


 テンション補正により、身体パフォーマンスは常に最高潮かつ絶好調でフルパワー炸裂確約。
 更にアドレナリンの過剰分泌により痛覚が極端に鈍る事で、敵の攻撃に怯まずに強烈な攻撃を放つパワーファイターになれるのだ。


「あぁぁぁあああああ!! 元気ィ盛り盛りだァァァ!! フルパワァァァでズンズン突っ込ォォォむ!!」


 黄金に輝く大斧を振り上げ、ガヴェインが横穴へ――ドクスライムの縦穴へと飛び込んだ。


「どぉぉすこぉぉぉおおおいッ!!」


 ガヴェインの巨体が落下した衝撃だけで、底でうぞうぞしていたドクスライムがダース単位で爆裂四散。


「さァァ!! 片っ端から吹っ飛ばしてやるぜクソスライム共ォォォ!! テメェらの毒魔法なんぞこのポイズンナイトには効かねェからなァァァ!!」


 大斧を横薙ぎにフルスイングしようとガヴェインが振りかぶった瞬間。


(……き……)
「……ん!? なんだァ……今、声が……?」
(しゅ……き)
「あ、あぁ!? 頭ん中に、声が聞こえるゥ!?」
「え? 何言ってんのガヴェ?」


 ついにカフェインが脳に回ったか?
 とガラハードは疑ったが、その疑念は一瞬で消えた。


 ある事を思い出したからだ。


「待てよ……紫色のスライムは……【ドクスライム】だけじゃあないぞ……!!」


 それは、ドクスライムとよく似たスライムとして、図鑑で紹介されていた【上位のスライム種】。


「まさかアレは……【だいしゅきスライム】!?」


■だいしゅきスライム■
 スライム種の上級モンスター。
 紫色のゲル質流動体で形成されたスライム。
 主な調理法はドクスライムと同じくそのまま生でごっくん。酸味が強めのブドウに似た甘酸っぱい青春の味がする。
 他種生物の脳に「だいしゅき」と言う念話テレパス魔法を直接叩き込み、精神を蝕んで弱らせてから捕食する。
 必殺技は群れで獲物を包んで消化し尽くす【だいしゅきホールド】。


(だいしゅき)
(だいしゅき)
(だいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅき)
「う、うぼァァァ!? 脳に……脳に直接変なサウンドがァァァ!? や、やめろォォォ!! う、うるせェェェ!! なんだこれェェェ!? ァァァーーーッ!? 耳を塞いでも聞こえるゥゥゥーーーッ!? ぐああああああああああッッ!! あああ!! あぁぁあああ!?」
「ま、不味い、ガヴェ!! だいしゅきスライムが君に取り付き始めた!! 溶かす気だよ絶対!! もっと暴れてそいつらを引き剥が……」
(だいしゅき)
「……へ?」


 ガラハードが振り返ると、そこにはいつの間にか、大量のだいしゅきスライムが群れをなしていた。


「……ま、まさか……罠……!?」


 横穴に気を引きつけて、背後を取る。
 単純ながら効果的な知略である。


(だいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅきだいしゅき)
「「あぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーッ!!!?!?!??」」




   ◆




「まぁ、情けないわぁ」


 そう言って艶っぽい微笑みを浮かべたのは、いかにも魔女っぽい黒い三角帽子を被り、セクシー胸元大公開な黒基調のゆったりワンピースを身に纏った妖艶お姉さん。


 彼女の名はママーリン。
 見た目はただの魔女コス妙齢お姉さんだが……実はカメロード王国が誕生し統一歴が始まった頃から生きているので、実年齢は最低でも一九九九歳オーバーと言う、実に神秘的な魔法使いお姉さんである。


 そしてここは、カメロード王国王宮内【ママーリンの儀式場】。【大魔導師】ママーリンが怪しげな魔導儀式を行ったり、ママーリンの庇護下にある者が死にかけると転送されてくる場所だ。


「【七色の神亀】の継承者が二人も揃って死にかけて強制送還されるなんて……まだまだ坊やねぇ。まったくぅ。可愛い御顔で白目むいちゃってぇ。大体、何でそんなにぬちょぬちょなの? やらしいんだぁ」


 薄闇の儀式場。
 高い天井から吊るされたいくつかのガラスランプの中で灯るロウソクだけが、室内を照らす。


 その中心に据えられたひとつの棺桶に、紫色の粘液まみれのガラハードとガヴェインが二人仲良くぎゅうぎゅうに詰められていた。
 ママーリンの庇護にある者がどこぞで死にかけると、この棺桶に転送される仕組みだ。
 なので、二人同時に死にかけるとこうなる。


「ところで坊や達、随分と【精神汚染】が進行してるみたいだけど……一体どんな刺激体験をしてきたのかしらぁ? お姉さん興味あるぅ~……」
「だ、ダンジョン……恐ひ……」
「み、右に同じ……」
「やぁん……お姉さんもっと具体的に聞きたいのぉ。話してくれるまでぇ、治療してあ~げない♪」
「ひ、ひぇッ……」


 ちなみに、ガラハード達が混濁する意識の中で必死に持ち帰った【だいしゅきスライムの粘液片】は、ドラゴン娘の口には合わなかったそうだ。




 ドラゴン娘の食糧調達、マルイデスク騎士団の前途は多難である。








【豆知識】
 マルイデスク騎士団入団時に受ける事になる【ママーリンの庇護】。
 これは【国のために戦う騎士団員の生命を保護するため】の魔法だゾ。
 でも実はそれは建前で、実際はただママーリンが【死に損ねた騎士の無様を眺め、そのトラウマ話を本人の震える口から語ってもらいたいがためだけ】に組み上げた自動転送魔法だゾ。



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