悪い魔法使い(姫)~身の程知らずのお姫様が、ダークヒーローを目指すとほざいています~
R75,猫にスマホ(猫に小判的なアレ)
ある朝の魔地悪威絶商会。
ソファーの上であぐらをかいて、赤毛猫耳少女アシリアが何かをガチャガチャと弄り回していた。
「これは……こう?」
「違うンバ。そのパーツはさっき説明した⑦-BC2部分に付けるンバ」
「ここ? えーと……こうだ! こうでしょ!? バンバ!」
「そうンバ。流石は獣人、器用ンバね」
「うん!」
「次はその疑似レアメタルを…」
喋るクナイ…もとい、天才科学クナイ・バンバの指揮の元、何かの工作に励んでいるらしい。
「あ、あの……アシリアちゃん? 一体何を作っているんですか……?」
「んに? これ?」
甲羅を背負った陰系少女コウメが、純粋な疑問から問いかける。
きっと、バンバとの戯れ感覚で、ワクワクゴロリな工作に興じているのだろう。
微笑ましい限りだ…的な感情での問いかけだった、のだが……
「すまほ!」
何か、とんでも無いモノを作っていた。
「……で、本当に作っちゃったんですね」
テレサがオフィスにやって来た頃には、アシリアとバンバのワクワク工作は完遂。
アシリアの手には「手抜き作画」と揶揄されても仕方無い様な非常にシンプルな外観のスマホが一台。
「通信サービスは俺を介せば違法利よ……げふんげふンバ。限り無く問題無さ気に利用できるンバ」
「と、ところで…何故、急にスマホなんて……」
「確かに。アシリアちゃん、前にスマホは要らないって言ってましたもんね」
以前、テレサの提案でアシリアとコウメにスマホを持たせようと言う話になった事がある。
しかし、アシリアもコウメも「小難しい機械は無理と言うか嫌」と言う理由で無しになったのだ。
「俺が説得したンバ。このご時世に『グローバルな人材』を目指すなら、PCやスマホなどの電子端末は悠々使いこなせんと話にならンバ」
アシリアは「獣人の里のグローバル化」を目的として送り出された若者の一人。己の役割を全うするため、苦手な文字の読み書きや数学、外国語まで猛勉強中なのだ。
どっかのお姫様と違って、自分の目指す目標を忘れてお菓子に現を抜かしたりはしていないのである。
「だからと言って、何故に手作り……」
「可能な限り自給自足。獣人の基本流儀に従ったンバ。ちなみに材料調達はカゲヌイ、プログラミング系は俺、そして組立をアシリアが担当したンバ」
「カゲヌイは材料だけ置いて帰っちゃったけど、三人で頑張った集大成!」
流石は真の忍者と天才科学者を人格ベースにしたAIと根っからの獣人娘と言った所か。
三人揃えば、常人には想像もできない自給自足を平然とやってのける。
「さて、とりあえず動作テストするンバ。誰かに連絡してみるンバ」
「あ、それならアシャお兄ちゃんが良い!」
アシャお兄ちゃんとは、アシリアの実兄アシャードの事だ。
数週間前、カゲヌイに連れられて忍の里へ修行に向かったとだけは聞いている。
「最近会ってないから、連絡取りたい!」
「アシリアちゃん、お兄さんの連絡先は知ってるんですか?」
「うん。前にあどれすって言うのもらった」
アシリアが取り出したのは、くしゃくしゃになったメモ帳の断片。やや荒い字で電話番号とメールアドレスが記載されている。
「番号を打ち込めば、兄に連絡できるンバ。やってみるンバ」
「『撃ち込む』? ガイア達、そんな事しなくても電話してる」
「それはアドレス帳に登録してるからンバ。まずは打ち込まねばならないンバ」
「あどれす帳……?」
「その辺は後で教えるンバ。まずはそれを打ち込むンバ」
「でも、壊れない?」
「? 漫画じゃあるまいし、その程度ではスマホは壊れンバ」
「うん。じゃあ、やってみる」
アシリアはテーブルの上にスマホを置くと、メモ帳の断片を強く握り締め……
「にゃあ!」
その拳を全力で振り下ろし、テーブルごとスマホを粉砕した。
「ンバァァアアアアアア!? 何してるンバ!?」
「に?」
「いきなり何の乱心ンバ!?」
「メモ帳を撃ち込むんじゃ無いの? でも、やっぱりすまほ壊れてない?」
「壊れてるンバよ! 完膚なきまでに! 一撃でスマホがスマホパウダーになってるンバ! この獣人! 何を勘違いして……はっ、さては……打ち込むのは数字ンバ! メモ帳を撃ち込むのは違うンバ!」
「????????」
何が違うの? とアシリアは今いちピンと来ていないご様子。
この後、誤解を解くのに小一時間かかった。
そしてしばらく。
「すまほ二号! 完成!」
今度はテレサの悪魔に材料を調達してもらい、二台目のスマホが完成。
「今度は間違えちゃ駄目ンバよ」
「わかった。えーと……0、9、0…の……」
非常にぎこちない手つきで、アシリアはスマホを操作。
どうにか無事、一一桁の数字を入力し終えた。
「で、この緑のを押すと……あ! ぷるるるって鳴り始めた!」
「成功ンバ!」
『……はい。もしもし。アシャードですニャ…じゃなくて、アシャードだが』
「アシャお兄ちゃんの声!」
『!? その声…まさかアシリアニャ!?』
「にゃ? アシリアはアシリアニャじゃない。アシリア」
『ご、ほんッ! 違う、今のは違うに…違うぞ、アシリア。修行のせいで変な癖が付いてしまっただけだ。お兄ちゃんは別に何もおかしくなってない。俺は正常だ……正常なはずだ……この程度で、獣人の戦士が正気を失うなど有り得ない……!』
「?」
『おい、アシャにゃん? 修行をサボって誰に電話している?』
『ふにゃはッ!? し、シユリ様ッ!? いつの間に!?』
『真の忍者はどこにでも現れる』
『お茶犬か!? と言うか、違う! サボってなどいない! ノルマはこなしたぞ! 媚びる様な視線と姿勢で猫パンチ一〇〇〇〇回!』
『こら。喋り方が元に戻っている。きちんと語尾に「ニャ」を付けろ。これも(私の旦那となるに相応しい男になるための)修行だ』
『い、今はちょっとやむを得ない事情が……』
『……私の言う事が聞けないと? やれやれ。これは「基礎訓練」からやり直しだな』
『ッ!? ま、待て! もうあんな醜態は……』
『己の無様を晒し続ける事で、お前は鋼の心…すなわち真の忍者に必要な基礎要素を手に入れる! 最初に説明しただろう!? お前は望み通り忍者の力の一端を手に入れ、私は癒しを得る! これぞウィンウィィィィィィンッ! さぁ! 顎を出せ! ご褒美じゃない方のナデナデだ!』
『や、やめ…にゃああああああああああああああああああああああああああああああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……』
プツン、と通話が途切れた。
「…………あの、アシリアちゃん。何やら、恐怖と期待が入り混じった様な複雑な心境っぽい悲鳴が聞こえたんですが……」
「よくわかんないけど、アシャお兄ちゃん、語尾に『ニャ』って付ける修行をしてるみたい」
「い、一体何の修行ですかね……?」
「わかんない。でも、アシャお兄ちゃんがやってるって事は……」
きっと、すごく強くなれる修行に違いない。
「アシリアも今日から語尾ににゃって付ける! ニャ!」
その後、出勤して来たガイアが(アシリアが将来的に絶対後悔するだろうと考え)全力でやめさせた。
ソファーの上であぐらをかいて、赤毛猫耳少女アシリアが何かをガチャガチャと弄り回していた。
「これは……こう?」
「違うンバ。そのパーツはさっき説明した⑦-BC2部分に付けるンバ」
「ここ? えーと……こうだ! こうでしょ!? バンバ!」
「そうンバ。流石は獣人、器用ンバね」
「うん!」
「次はその疑似レアメタルを…」
喋るクナイ…もとい、天才科学クナイ・バンバの指揮の元、何かの工作に励んでいるらしい。
「あ、あの……アシリアちゃん? 一体何を作っているんですか……?」
「んに? これ?」
甲羅を背負った陰系少女コウメが、純粋な疑問から問いかける。
きっと、バンバとの戯れ感覚で、ワクワクゴロリな工作に興じているのだろう。
微笑ましい限りだ…的な感情での問いかけだった、のだが……
「すまほ!」
何か、とんでも無いモノを作っていた。
「……で、本当に作っちゃったんですね」
テレサがオフィスにやって来た頃には、アシリアとバンバのワクワク工作は完遂。
アシリアの手には「手抜き作画」と揶揄されても仕方無い様な非常にシンプルな外観のスマホが一台。
「通信サービスは俺を介せば違法利よ……げふんげふンバ。限り無く問題無さ気に利用できるンバ」
「と、ところで…何故、急にスマホなんて……」
「確かに。アシリアちゃん、前にスマホは要らないって言ってましたもんね」
以前、テレサの提案でアシリアとコウメにスマホを持たせようと言う話になった事がある。
しかし、アシリアもコウメも「小難しい機械は無理と言うか嫌」と言う理由で無しになったのだ。
「俺が説得したンバ。このご時世に『グローバルな人材』を目指すなら、PCやスマホなどの電子端末は悠々使いこなせんと話にならンバ」
アシリアは「獣人の里のグローバル化」を目的として送り出された若者の一人。己の役割を全うするため、苦手な文字の読み書きや数学、外国語まで猛勉強中なのだ。
どっかのお姫様と違って、自分の目指す目標を忘れてお菓子に現を抜かしたりはしていないのである。
「だからと言って、何故に手作り……」
「可能な限り自給自足。獣人の基本流儀に従ったンバ。ちなみに材料調達はカゲヌイ、プログラミング系は俺、そして組立をアシリアが担当したンバ」
「カゲヌイは材料だけ置いて帰っちゃったけど、三人で頑張った集大成!」
流石は真の忍者と天才科学者を人格ベースにしたAIと根っからの獣人娘と言った所か。
三人揃えば、常人には想像もできない自給自足を平然とやってのける。
「さて、とりあえず動作テストするンバ。誰かに連絡してみるンバ」
「あ、それならアシャお兄ちゃんが良い!」
アシャお兄ちゃんとは、アシリアの実兄アシャードの事だ。
数週間前、カゲヌイに連れられて忍の里へ修行に向かったとだけは聞いている。
「最近会ってないから、連絡取りたい!」
「アシリアちゃん、お兄さんの連絡先は知ってるんですか?」
「うん。前にあどれすって言うのもらった」
アシリアが取り出したのは、くしゃくしゃになったメモ帳の断片。やや荒い字で電話番号とメールアドレスが記載されている。
「番号を打ち込めば、兄に連絡できるンバ。やってみるンバ」
「『撃ち込む』? ガイア達、そんな事しなくても電話してる」
「それはアドレス帳に登録してるからンバ。まずは打ち込まねばならないンバ」
「あどれす帳……?」
「その辺は後で教えるンバ。まずはそれを打ち込むンバ」
「でも、壊れない?」
「? 漫画じゃあるまいし、その程度ではスマホは壊れンバ」
「うん。じゃあ、やってみる」
アシリアはテーブルの上にスマホを置くと、メモ帳の断片を強く握り締め……
「にゃあ!」
その拳を全力で振り下ろし、テーブルごとスマホを粉砕した。
「ンバァァアアアアアア!? 何してるンバ!?」
「に?」
「いきなり何の乱心ンバ!?」
「メモ帳を撃ち込むんじゃ無いの? でも、やっぱりすまほ壊れてない?」
「壊れてるンバよ! 完膚なきまでに! 一撃でスマホがスマホパウダーになってるンバ! この獣人! 何を勘違いして……はっ、さては……打ち込むのは数字ンバ! メモ帳を撃ち込むのは違うンバ!」
「????????」
何が違うの? とアシリアは今いちピンと来ていないご様子。
この後、誤解を解くのに小一時間かかった。
そしてしばらく。
「すまほ二号! 完成!」
今度はテレサの悪魔に材料を調達してもらい、二台目のスマホが完成。
「今度は間違えちゃ駄目ンバよ」
「わかった。えーと……0、9、0…の……」
非常にぎこちない手つきで、アシリアはスマホを操作。
どうにか無事、一一桁の数字を入力し終えた。
「で、この緑のを押すと……あ! ぷるるるって鳴り始めた!」
「成功ンバ!」
『……はい。もしもし。アシャードですニャ…じゃなくて、アシャードだが』
「アシャお兄ちゃんの声!」
『!? その声…まさかアシリアニャ!?』
「にゃ? アシリアはアシリアニャじゃない。アシリア」
『ご、ほんッ! 違う、今のは違うに…違うぞ、アシリア。修行のせいで変な癖が付いてしまっただけだ。お兄ちゃんは別に何もおかしくなってない。俺は正常だ……正常なはずだ……この程度で、獣人の戦士が正気を失うなど有り得ない……!』
「?」
『おい、アシャにゃん? 修行をサボって誰に電話している?』
『ふにゃはッ!? し、シユリ様ッ!? いつの間に!?』
『真の忍者はどこにでも現れる』
『お茶犬か!? と言うか、違う! サボってなどいない! ノルマはこなしたぞ! 媚びる様な視線と姿勢で猫パンチ一〇〇〇〇回!』
『こら。喋り方が元に戻っている。きちんと語尾に「ニャ」を付けろ。これも(私の旦那となるに相応しい男になるための)修行だ』
『い、今はちょっとやむを得ない事情が……』
『……私の言う事が聞けないと? やれやれ。これは「基礎訓練」からやり直しだな』
『ッ!? ま、待て! もうあんな醜態は……』
『己の無様を晒し続ける事で、お前は鋼の心…すなわち真の忍者に必要な基礎要素を手に入れる! 最初に説明しただろう!? お前は望み通り忍者の力の一端を手に入れ、私は癒しを得る! これぞウィンウィィィィィィンッ! さぁ! 顎を出せ! ご褒美じゃない方のナデナデだ!』
『や、やめ…にゃああああああああああああああああああああああああああああああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……』
プツン、と通話が途切れた。
「…………あの、アシリアちゃん。何やら、恐怖と期待が入り混じった様な複雑な心境っぽい悲鳴が聞こえたんですが……」
「よくわかんないけど、アシャお兄ちゃん、語尾に『ニャ』って付ける修行をしてるみたい」
「い、一体何の修行ですかね……?」
「わかんない。でも、アシャお兄ちゃんがやってるって事は……」
きっと、すごく強くなれる修行に違いない。
「アシリアも今日から語尾ににゃって付ける! ニャ!」
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