悪い魔法使い(姫)~身の程知らずのお姫様が、ダークヒーローを目指すとほざいています~
第19話 今日はバレンタインですよ!(カオス)
『こんにちわー、皆さん、今日も元気ですかー?』
「アシリアは元気」
自前の猫耳をピンと立て、お昼の情報番組を熱心に眺めるアシリア。
この手の番組は流行の話題やら便利グッズやらをよく取り上げる。
人里にある何もかもが目新しいアシリアに取っては、とても優秀な娯楽なのだろう。
画面の向こうで笑っているのは、最近人気の女子アナウンサー。
女優顔負けのルックス、グラドルも裸足で逃げ出すボディライン、そして中年親父も真っ青なえげつない下ネタが持ち味だとか。
『さて、本日はバレンタイン特別企画、私プレゼンツ、ラブなアレがだっくだく溢れちゃう媚薬入りチョ…』
ブツッ。
「あ、何で消すの、ガイア」
「お前にはまだ早い内容っぽかったからだ」
真昼間っから何てモン紹介しやがるんだあのアホアナウンサー。
「アシリア、バレンタインくらい知ってる。早くない」
「そういう問題じゃなくてな……」
どう説明しようか。
っていうか説明していいのか。
いやダメだろう。
ソファーに座り、少し考え込むガイア。
一方アシリアは何を思ったのか、ガイアの隣で寝ていたミーちゃんを捕獲すると、
「…………何の真似だ」
悩むガイアの頭に、ミーちゃんを乗っけてきた。
「バレンタイン」
「何が!?」
「にー」
ミーちゃんが不機嫌そうな声で「なんやねん」と言いたげに鳴く。
突然安眠を邪魔された挙句、野郎の頭の上に乗っけられりゃ猫だって不機嫌にもなるだろう。
つぅか重いこのデブ猫。
「女の子が男の子に悪戯して、そのお礼に男の子が女の子にチョコを献上する日。それがバレンタイン。族長言ってた」
「ちょっと待て。ツッコミ所が多すぎて処理できない」
まずバレンタインの原型がチョコのやり取りくらいしか残っていない。
半端にハロウィン的な要素がミックスされているが、それすら若干間違っている。
あと何か卑猥なイベントっぽく聞こえる。
どうやら、「アシリアはバレンタイン知ってるもん」というアピールとして、ガイアに悪戯したつもりの様だ。
ミーちゃんとしては飛んだとばっちりである。
「チョコ」
頂戴、という事か。
「……あとで買ってきとく」
諦め半分な感じで応え、とりあえずミーちゃんをどかす。
首が痛い。
「甘いのが良い」
子供にやるモンに苦いチョコ買ってくる様な鬼畜な真似はしない。
……いや、テレサ相手ならやっていたかも知れない。
うん、気が向いたらやってみよう。
きっと期待通り良いリアクションをしてくれるに違い無い。
あの馬鹿でアホなお姫様でも、その辺は信頼して良いだろう。
「こんにちわ!」
そんな感じの悪企みをしていると、丁度テレサがオフィスにやってきた。
「おう」
「ガイアさん、今日はバレンタインですよ!」
まぁ、流石にこいつはバレンタインくらいちゃんと知って……
「夜が楽しみです!」
「……はぁ?」
「知らないんですか? 今日は夜、皆が寝静まるとヴァレンチヌースさんが歳の数だけチョコを枕元に置いてってくれる日ですよ!」
「お前、俺と同じ国で生きて来たんだよな?」
こっちはこっちで節分やらクリスマスやら色々と混ざってカオスだ。
何故同じ国で生きているのにこんなに文化に違いが生まれるんだ。
ガイアは知り得もしない事だが、「テレサが男にチョコやるなんてダメ、絶対」と国王エドワードが第1王子ウィリアムと結託し、テレサにバレンタインの真実をひた隠しにしているのだ。
「あのな、バレンタインってのは…」
「テレサ、違う。バレンタインは女の子が男の子に悪戯して……」
「お前のも違うから聞け」
《説明中》
「女の子が、好きな男の子にチョコをあげる日?」
「そうだ。で、ホワイトデーはそのお返しに男側が何かしらお返しする、ってのが一般的だ」
最近では性別の制約は関係無くなっていたり、ホワイトデーをお返しの日ではなく単純に「男版バレンタイン」と考える風潮もある様だが、一般認識はこうだろう。
「えっ、ホワイトデーはヴァレンチヌースさんが歳の3倍チョコを持ってきてくれる日じゃ……」
「もうそれは嫌がらせの域だろ」
糖尿病になるわ。
「ふーん、じゃあ貰えるチョコの量で好感度が露骨にわかってしまうんですね」
「まぁ、一種のパラメータにはなるわな」
「………………」
少しガイアの方を見つめ、何かを考えるテレサ。
「……チョコ、買ってきます?」
「お前に同情される程落ちぶれてねぇよ」
「だって、ガイアさんちょいちょい意地悪だし、あんまりチョコもらえないんじゃないかと……」
「俺が意地悪なのはお前限定だ。お前だけ特別だぞ、ほれ喜べ」
「わぁー…って、喜びませんよ!? ギブミー優しさと愛情!」
ガイアはリアクションが大きい奴以外をわざわざイジったりしない。
何故ならあまり面白くないから。
その点テレサは優秀である。
「というか、ガイアさんもらえるアテがあるんですか?」
「……まぁな」
ガイアにだってチョコをもらうアテくらいある。
……身内と義理だが。
「……ガイア、さっきの話、無し?」
「さっきの? ……ああ、チョコ買ってくるって話か」
あれはアシリアの族長談のバレンタインを前提とした約束だ。
「まぁ別に構わねぇよ、チョコの1個くらい買ってやる」
「ガイア優しい」
「ずるいです! 私もガイアさんからバレンタインチョコ欲しいです!」
「ああ、いいぞ」
「え、本当ですか!?」
「俺は基本嘘つかねぇって前にも言っただろ」
丁度さっき、面白そうな事を思いついたし。
「苦っ! これ超苦いですよガイアさん!」
「無糖だからな」
「ヤケにすんなり買ってきてくれたと思えば!」
「お前の考えは甘いんだよ」
「アシリアのチョコも甘い」
「贔屓です! 酷いですよう! もう泣きますよ私!」
まぁそう言うと思って、テレサの分もきちんと甘い奴も買ってきている。
でも、面白いのでもうちょっとイジってから渡そう。
「アシリアは元気」
自前の猫耳をピンと立て、お昼の情報番組を熱心に眺めるアシリア。
この手の番組は流行の話題やら便利グッズやらをよく取り上げる。
人里にある何もかもが目新しいアシリアに取っては、とても優秀な娯楽なのだろう。
画面の向こうで笑っているのは、最近人気の女子アナウンサー。
女優顔負けのルックス、グラドルも裸足で逃げ出すボディライン、そして中年親父も真っ青なえげつない下ネタが持ち味だとか。
『さて、本日はバレンタイン特別企画、私プレゼンツ、ラブなアレがだっくだく溢れちゃう媚薬入りチョ…』
ブツッ。
「あ、何で消すの、ガイア」
「お前にはまだ早い内容っぽかったからだ」
真昼間っから何てモン紹介しやがるんだあのアホアナウンサー。
「アシリア、バレンタインくらい知ってる。早くない」
「そういう問題じゃなくてな……」
どう説明しようか。
っていうか説明していいのか。
いやダメだろう。
ソファーに座り、少し考え込むガイア。
一方アシリアは何を思ったのか、ガイアの隣で寝ていたミーちゃんを捕獲すると、
「…………何の真似だ」
悩むガイアの頭に、ミーちゃんを乗っけてきた。
「バレンタイン」
「何が!?」
「にー」
ミーちゃんが不機嫌そうな声で「なんやねん」と言いたげに鳴く。
突然安眠を邪魔された挙句、野郎の頭の上に乗っけられりゃ猫だって不機嫌にもなるだろう。
つぅか重いこのデブ猫。
「女の子が男の子に悪戯して、そのお礼に男の子が女の子にチョコを献上する日。それがバレンタイン。族長言ってた」
「ちょっと待て。ツッコミ所が多すぎて処理できない」
まずバレンタインの原型がチョコのやり取りくらいしか残っていない。
半端にハロウィン的な要素がミックスされているが、それすら若干間違っている。
あと何か卑猥なイベントっぽく聞こえる。
どうやら、「アシリアはバレンタイン知ってるもん」というアピールとして、ガイアに悪戯したつもりの様だ。
ミーちゃんとしては飛んだとばっちりである。
「チョコ」
頂戴、という事か。
「……あとで買ってきとく」
諦め半分な感じで応え、とりあえずミーちゃんをどかす。
首が痛い。
「甘いのが良い」
子供にやるモンに苦いチョコ買ってくる様な鬼畜な真似はしない。
……いや、テレサ相手ならやっていたかも知れない。
うん、気が向いたらやってみよう。
きっと期待通り良いリアクションをしてくれるに違い無い。
あの馬鹿でアホなお姫様でも、その辺は信頼して良いだろう。
「こんにちわ!」
そんな感じの悪企みをしていると、丁度テレサがオフィスにやってきた。
「おう」
「ガイアさん、今日はバレンタインですよ!」
まぁ、流石にこいつはバレンタインくらいちゃんと知って……
「夜が楽しみです!」
「……はぁ?」
「知らないんですか? 今日は夜、皆が寝静まるとヴァレンチヌースさんが歳の数だけチョコを枕元に置いてってくれる日ですよ!」
「お前、俺と同じ国で生きて来たんだよな?」
こっちはこっちで節分やらクリスマスやら色々と混ざってカオスだ。
何故同じ国で生きているのにこんなに文化に違いが生まれるんだ。
ガイアは知り得もしない事だが、「テレサが男にチョコやるなんてダメ、絶対」と国王エドワードが第1王子ウィリアムと結託し、テレサにバレンタインの真実をひた隠しにしているのだ。
「あのな、バレンタインってのは…」
「テレサ、違う。バレンタインは女の子が男の子に悪戯して……」
「お前のも違うから聞け」
《説明中》
「女の子が、好きな男の子にチョコをあげる日?」
「そうだ。で、ホワイトデーはそのお返しに男側が何かしらお返しする、ってのが一般的だ」
最近では性別の制約は関係無くなっていたり、ホワイトデーをお返しの日ではなく単純に「男版バレンタイン」と考える風潮もある様だが、一般認識はこうだろう。
「えっ、ホワイトデーはヴァレンチヌースさんが歳の3倍チョコを持ってきてくれる日じゃ……」
「もうそれは嫌がらせの域だろ」
糖尿病になるわ。
「ふーん、じゃあ貰えるチョコの量で好感度が露骨にわかってしまうんですね」
「まぁ、一種のパラメータにはなるわな」
「………………」
少しガイアの方を見つめ、何かを考えるテレサ。
「……チョコ、買ってきます?」
「お前に同情される程落ちぶれてねぇよ」
「だって、ガイアさんちょいちょい意地悪だし、あんまりチョコもらえないんじゃないかと……」
「俺が意地悪なのはお前限定だ。お前だけ特別だぞ、ほれ喜べ」
「わぁー…って、喜びませんよ!? ギブミー優しさと愛情!」
ガイアはリアクションが大きい奴以外をわざわざイジったりしない。
何故ならあまり面白くないから。
その点テレサは優秀である。
「というか、ガイアさんもらえるアテがあるんですか?」
「……まぁな」
ガイアにだってチョコをもらうアテくらいある。
……身内と義理だが。
「……ガイア、さっきの話、無し?」
「さっきの? ……ああ、チョコ買ってくるって話か」
あれはアシリアの族長談のバレンタインを前提とした約束だ。
「まぁ別に構わねぇよ、チョコの1個くらい買ってやる」
「ガイア優しい」
「ずるいです! 私もガイアさんからバレンタインチョコ欲しいです!」
「ああ、いいぞ」
「え、本当ですか!?」
「俺は基本嘘つかねぇって前にも言っただろ」
丁度さっき、面白そうな事を思いついたし。
「苦っ! これ超苦いですよガイアさん!」
「無糖だからな」
「ヤケにすんなり買ってきてくれたと思えば!」
「お前の考えは甘いんだよ」
「アシリアのチョコも甘い」
「贔屓です! 酷いですよう! もう泣きますよ私!」
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