村人の成り上がり英雄譚

ユノ

調べもの

その日の夜、リク達三人は今後のことを話すために、一つの部屋に集まっていた。
「リク君、これからなんだけど王都に向けて出発でいいのかな?」
「いや、ここ最近少し気になることがあってな、もしよかったらなんだが明日は本格的に潜ってみたいとも思っているんだ。だが、アリサとシイの意見を聞いてから決めたい。」
リクは真剣な顔で言った。
「お兄ちゃんが調べてたことって何なんですか?」
シイはリクが毎日早朝に村から出ていくところを目撃していた。だが、リクが何をしているのかは分からなかった。
「そのことなんだが、シイこの近くにダンジョンってあったか?」
「いえ、この近くにそのようなものがあるとは聞いたことありませんし、見たこともありません。」
シイは不思議そうに答えた。
「だよな、俺も来るときにそんなものは見たことないし、魔獣を倒して見回りを行った時もそんなものはなかった。」
リクは一人で考えるように黙り込んでしまった。
「リク君、そろそろ教えてよ、何を調べてたの?一人で悩んで答え出なかったんでしょ、なら私たちも一緒に考えるよ。仲間でしょ。」
アリサは一人で悩み続けるリクにしびれを切らした。
「すまん、そうだなみんなで考えてほしい。まず結論から言うと、村はずれにダンジョンを見つけた。」
リクがそういうと二人は驚いていた。
「村はずれにダンジョンがあったて、私たちが来るまでは少なくともなかったんでしょ。」
アリサはリクに迫った。
「あぁ、少なくともこの俺たちが来てから、俺が見つけるまでは二日ほどだ。その間にできたのは間違いないだろうな。俺はこの数日、幾度かダンジョンに潜った。朝から夜まで一日で行くのには限度があった。最大で五三階層までは潜った。だから、最低でも五四階層以上はある。明日から潜るとなると一週間以上は覚悟しないといけないかもしれない。何より魔獣が多い。今回は今までにないくらい危険な場所だ。命の保証ができない。俺一人で潜って調べてくることも考えているんだ。」
リクは何も失わないと心に強く誓っている。そんなリクが危険な場所に仲間を連れて行くことにまだ悩んでいた。今回はリク自身守り貫ける自信がなかったのだ。
「それは、リク君は死んでもいいってこと?リク君は自分が死んでもいいって思ってるの?」
アリサは怒っていた。一人で向かうという考えを持つリクに今までにないほど怒っていた。
「死ぬ気はない。危なくなったら引き上げるつもりだ。」
リクはアリサの迫力に少し圧されていた。
「リク君は引くなんてしないでしょ。リク君のことこれでも見てきたんだからわかるよ。リク君が危ない場所に一人で行くことに賛成はできないよ。行くとするなら私たちもついて行くよ。」
アリサはすでに決断していた。リクはアリサから目を逸らしシイを見た。
「私もお兄ちゃん一人で行くことには賛成できません。お兄ちゃんが行くなら私も行きます。お兄ちゃんの仲間になったので、精一杯頑張ります。」
シイも自分なりの答えを導き出していた。
「分かった。明日からダンジョンに潜ろうと思う、危険だとは思うが、絶対に守ってやる。」
リクがそういった。
「リク君は私たちが守ってあげるよねシイちゃん。」
「もちろんです。お兄ちゃんを守って見せます。」
それぞれの決意を胸に明日からの予定が決まった。

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