村人の成り上がり英雄譚

ユノ

無知とお願い

リクとアリサは、案内された家の中で、今日あったことについて話し合っていた。
「アリサが本当に剣術を使えたなんて驚きだな。」
リクはアリサが戦っているところを思い浮かべながら言った。
「私これでも強いんだって言ったよね。でも、ごめんね、リク君の剣壊しちゃって。」
アリサは申し訳なさそうに謝った。
「先も言っただろう、気にするな。俺はまだ剣術がそこまでできるわけじゃないんだ。師匠から少しは教わったけど、師匠は魔術が基本だったからな。アリサが持っていない理由何となくわかった気がするよ。」
リクには剣術と体術はマナから少し学んだ程度だった。
「そうなのよ、私に合う剣がなくてね。そうだね、マナは剣とか握らなかったからね。今度リク君の剣買った時は私がリク君に剣術を教えてあげる。もちろん、師匠とかは関係なくね。」
「あぁ、その時は頼むよ。アリサを守るって言ったのに守れてちゃあ話にならないからな。」
「十分強いと思うけどね。でもなんであの時、魔術放ったの?相手は『リグレス』なんだから、魔術は意味ないのに。」
アリサは先の戦い方について聞いた。
「はぁ?なんだよ魔術聞かないとか聞いてねぇよ。それにリグレスってなんだよ?」
リクは本当にわからない顔をしていた。それを聞いて、アリサは驚いた。
「種族も知らなかったけど、魔獣の種類も知らないの?」
「魔獣なんて全部同じだろう。」
リクはまたしても当然の様に言った。
「はぁ、マナったら本当にリク君に何教えたのよ。常識が全くないじゃない。今日小型の魔獣にいたのは『コグレス』犬型の魔獣のことね。中型は『グレス』まぁ、小型が進化した感じね。小型と中型は魔術も、打撃、剣撃何でも効いてたけど、魔術は効きにくいはずなんだけどね。リク君の魔術の威力があの魔獣たちを上回ってたみたいだね。それで、そのボスが大型の魔獣の『リグレス』あいつは、魔術攻撃が効きにくいんじゃなくてほとんど無効化に近いわね。今日戦ったのは、魔獣三種だけどリク君はすでに、『ゴブリン』、『サイファン』、『トロス』、『ニビラット』、『イリュウ』とは戦っているわよ。王都に向かって出発してからだとこのほかにも戦って入るけど、あとは出会ってしまった時に教えるわ。ついでに『ニビラット』は、出発してから昨日も狩って食べたあのウサギのことね。」
アリサは呆れていたが、しっかりと説明した。
「まじかよ、魔獣にも種類があるなんてな。あのウサギ、ニビラットっていうんだな。」
「リク君、マナと特訓してたんでしょ。魔獣と戦ってないの?」
「魔獣とは何度も戦ってるけど、師匠は“リクなら大丈夫、全力で放って貫いて”って言ってたぞ。」
アリサは、声にならないほど呆れていた。その時、扉がノックされた。
「あのシイです。お話いいですか?」
リクとアリサは顔を見居合わせた。
「どうぞ、開いてるので入ってきていいですよ。」
アリサが家に招き入れた。
「失礼します。」
礼儀よく頭を下げて入ってきた。
「あの、今日は助けてくれてありがとうございます。それで、お兄ちゃんとお姉ちゃんにお願いがあってきました。私をこれから一緒に連れて行ってくれませんか?」
アリサは突然のことに困っていた。
「断る。」
リクはきっぱりと言った。
「どうしてですか?」
「どうしてはこっちのセリフだ。どうして連れて行かないといけない。それに家族はどうする?この村は?子供が行きたいと言って簡単に連れて行けるわけがない。何より、俺たちは冒険者にまずなるんだ。お前は何ができる?こっちはただ単に楽しく旅をしているわけではないんだよ。」
リクは断るだけではなく、厳しい言葉を突き付けた。
「リク君いくらなんでもそんな言い方酷すぎるよ。」
アリサは心配そうにシイを見た。シイは家を飛び出していった。
「リク君?なんであんな言い方したの?」
アリサは不満そうに言った。
「子供にはあれぐらい言わないと諦めないだろ。俺たちはこの村を救ってあの子はそんな姿に憧れただけだろ。そんな気持ちだけじゃ、これからついてきても辛いだけだ。それにあの子はまだまだ子供だ。未来があるんだよ。そんな子の未来を俺たちの行い一つで左右してしまったらダメな気がしてな。ちょっと言い方はきつかったかもしれないが、あれが現実だよ。」
リクも言い過ぎたとわかっていた。
「リク君は優しいな。私、ちょっと散歩行ってくるね。」
アリサは一言つぶやき、外に出て行った。
「お姉ちゃん、ちょっといい?」
アリサが夜道を歩いていると、後ろから話しかけられた。アリサの前にはシイと四十歳ほどの夫婦が前にいた。アリサはシイの家に呼ばれてついて行った。シイは退席するように親に言われて部屋に戻っていた。
「アリサ様、お願いがあります。シイを一緒に連れて行ってくれませんか?」
突然、シイの親にシイを連れて行ってほしいとお願いされた。
「ちょっと待ってください、シイちゃんを連れて行ってほしいって、親の立場としては止めるんじゃないんですか?」
アリサは驚き疑問で返した。
「親としては、今でも止めたい気持ちはあります。でも、シイは行きたいという意思は尊重したいんですよ。実はですね、私たちとシイは血が繋がっていないんですよ。シイは私市の親戚の子でね、4歳の時シイの本当の両親は魔族に殺されてしまったんですよ。シイは私たちのもとに助けてほしいって、泣いてきました。私たちはそれでも、魔族を相手にするのが怖くてその場にすら行かなかった。今でもそのことを私たちは後悔しているんですよ。あの時行っていれば助けれたんじゃないかな。何かできることがあったんじゃないかなって。後日、村人何にかで確認に行ったら、亡骸がそこにありました。シイには申し訳ないことをしてしまったと今でも思っているよ。シイ私たちが引き取って、四年間育ててきた。シイは私たちを憎むわけでも、嫌うわけでもなかった。シイは私たちのことをお義母さん、お義父さんって呼んでくれるんだよ。それでも、シイは苦しみを一人で抱えてたみたいなんだよ。夜、シイの部屋から時々聞こえるんだよ、すすり泣く声が。私たちは、苦しんだよ。なにより、私たちじゃああの子の支えにはなれないのかって思ったよ。そんなとき、リク様とアリサ様がこの村を救ってくれたんです。シイにとっては、心の救世主にもなったと思います。だからシイは、私たちに行ってきたんです。リク様、アリサ様について行きたいって。もちろん最初は反対しました。それでも、シイは意志を曲げることはありませんでした。シイがあそこまで強く思っているなら、私たちとしても応援したくなります。お願いします、シイを連れて行ってあげてください。」
シイの親は涙を流しながら頭を下げていた。
「連れていくかは、リク君が決めるけど、私はシイちゃんを連れて行ってもいいと私は思いました。だから、シイちゃんの援護はしてあげます。連れていけるとは断言できません。」
アリサはシイを仲間に入れたいと思った。
「ありがとうございます。お願いしますアリサ様。」

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