Duty
chapter 11 第3の審判 -1
1 7月8日 第3の審判①
異常なほど小奇麗にされたこの3年1組教室に生徒たちが次々と表情暗く沈んだ面持ちで登校してくる。
今学期に入り、次々とクラスメイトが死亡する事件が続いている。
それは5月から始まり、1ヶ月毎に起こってきた『審判』という出来事が関係していると、おそらくこの3年1組生徒ならば誰しも気が付いていた。
登校してきた霧島は、窓際から呆然と景色を眺めていた神谷陽太と胡桃沢桜のもとへ駆け寄った。
「やあ神谷君、胡桃沢さん。どうかな気分は?」
「いいはずはねえだろ。相変わらず嫌な気分で臨む学校だよ」
「おはよ、霧島君。でも偉いよね皆。ちゃんと登校してくるんだもん」
「偉い? かな」
霧島は桜を見て、くすっと微笑んだ。
「違うね。休むことすら怯えているんだと思うよ。東佐紀の一件もあったしね」
東佐紀は第2の審判で『罪人』にされ、それから不登校を決め込んでいたのだが、ついには審判者から有罪の判決を下されてしまい、断罪された。
つまり、直接的原因は無いにしても登校拒否をすることは有罪にされる危険性がある、と生徒たちは心のどこかで不安に感じているに違いない。
「ところで霧島。例の件は?」
桜が大きな目を瞬かせながら霧島に尋ねた。
「うん? ああ、10年前の自殺生徒の特定かい?」
「ああ、そうだよ。あの刑事の親父さんを介して探しているんだろ?」
「まだだねえ。とりあえず警察署内の資料には見当たらないっぽいよ。とくに事件性のあるものじゃなくて自殺だからね。プライベートなものだから名前も伏せてあるらしいし」
「じゃあどうやって調べているの?」
「父さんの知り合いに探偵が居てね。その人に依頼したんだ。ただ昨日今日の話だから流石にまだだよ。のんびり待つしかないね」
「のんびり待てない立場なんだがなあ。俺たちは」
陽太は窓から登校してくる生徒たちの姿を眺め、そう呟いた。
「そういえば、その探偵さんが面白い人でね。元刑事なんだけど、霊媒体質っていうか、そんなことを事件に絡めようとする人で。現場に合わずに辞めて探偵になったそうなんだけど。この『審判』について真剣に相談してみるかい?」
陽太も桜も、嫌な笑みを浮かべる霧島の顔をキョトンとして見つめた。
「お前……本気で言ってるのか?」
霧島は不敵に笑う。
「本気だと思う?」
頭を掻いて呆れ顔で陽太は続けた。
「変な人もいるもんだな。ま、心にでも留めて置くよ」
今度は霧島がキョトンとして呟いた。
「ありゃ。本気にするとは」
「ねえ陽太、霧島君。……それもだけどさ」
桜が真剣な眼差しを二人に向けて話しかけた。
「それよりも……もう『審判』なんか起こらないってことに賭けてみるのもありじゃないかな?」
「……桜」
「だってもう7月の8日だよ。罪人になんて誰もならなくて、もう終わりになるんだよ。そんな可能性だってあるでしょ?」
「ずいぶんと楽観的予測だね」
「それの何が悪いの?」
「……胡桃沢さんの考えも勿論あるかもしれない。でも、無いかもしれない。だったらこれからの『審判』を食い止めるために動くことは悪いことじゃないだろう」
「……うん、そうだけど」
不満げに桜は目線を落とした。
そんな桜を余所目に霧島は邪悪な笑みを浮かべて、そこから立ち去ろうとした際、言い放った。
「それに勝ち逃げなんて、許さないよ。『審判』」
陽太は瞼をぴくっと動かし、去り際の霧島の背中に言った。
「霧島。これはゲームじゃない」
霧島は歩みを止め、陽太のほうを向き直して告げた。
「わかってるよ」
相変わらずの作り笑顔であった。
異常なほど小奇麗にされたこの3年1組教室に生徒たちが次々と表情暗く沈んだ面持ちで登校してくる。
今学期に入り、次々とクラスメイトが死亡する事件が続いている。
それは5月から始まり、1ヶ月毎に起こってきた『審判』という出来事が関係していると、おそらくこの3年1組生徒ならば誰しも気が付いていた。
登校してきた霧島は、窓際から呆然と景色を眺めていた神谷陽太と胡桃沢桜のもとへ駆け寄った。
「やあ神谷君、胡桃沢さん。どうかな気分は?」
「いいはずはねえだろ。相変わらず嫌な気分で臨む学校だよ」
「おはよ、霧島君。でも偉いよね皆。ちゃんと登校してくるんだもん」
「偉い? かな」
霧島は桜を見て、くすっと微笑んだ。
「違うね。休むことすら怯えているんだと思うよ。東佐紀の一件もあったしね」
東佐紀は第2の審判で『罪人』にされ、それから不登校を決め込んでいたのだが、ついには審判者から有罪の判決を下されてしまい、断罪された。
つまり、直接的原因は無いにしても登校拒否をすることは有罪にされる危険性がある、と生徒たちは心のどこかで不安に感じているに違いない。
「ところで霧島。例の件は?」
桜が大きな目を瞬かせながら霧島に尋ねた。
「うん? ああ、10年前の自殺生徒の特定かい?」
「ああ、そうだよ。あの刑事の親父さんを介して探しているんだろ?」
「まだだねえ。とりあえず警察署内の資料には見当たらないっぽいよ。とくに事件性のあるものじゃなくて自殺だからね。プライベートなものだから名前も伏せてあるらしいし」
「じゃあどうやって調べているの?」
「父さんの知り合いに探偵が居てね。その人に依頼したんだ。ただ昨日今日の話だから流石にまだだよ。のんびり待つしかないね」
「のんびり待てない立場なんだがなあ。俺たちは」
陽太は窓から登校してくる生徒たちの姿を眺め、そう呟いた。
「そういえば、その探偵さんが面白い人でね。元刑事なんだけど、霊媒体質っていうか、そんなことを事件に絡めようとする人で。現場に合わずに辞めて探偵になったそうなんだけど。この『審判』について真剣に相談してみるかい?」
陽太も桜も、嫌な笑みを浮かべる霧島の顔をキョトンとして見つめた。
「お前……本気で言ってるのか?」
霧島は不敵に笑う。
「本気だと思う?」
頭を掻いて呆れ顔で陽太は続けた。
「変な人もいるもんだな。ま、心にでも留めて置くよ」
今度は霧島がキョトンとして呟いた。
「ありゃ。本気にするとは」
「ねえ陽太、霧島君。……それもだけどさ」
桜が真剣な眼差しを二人に向けて話しかけた。
「それよりも……もう『審判』なんか起こらないってことに賭けてみるのもありじゃないかな?」
「……桜」
「だってもう7月の8日だよ。罪人になんて誰もならなくて、もう終わりになるんだよ。そんな可能性だってあるでしょ?」
「ずいぶんと楽観的予測だね」
「それの何が悪いの?」
「……胡桃沢さんの考えも勿論あるかもしれない。でも、無いかもしれない。だったらこれからの『審判』を食い止めるために動くことは悪いことじゃないだろう」
「……うん、そうだけど」
不満げに桜は目線を落とした。
そんな桜を余所目に霧島は邪悪な笑みを浮かべて、そこから立ち去ろうとした際、言い放った。
「それに勝ち逃げなんて、許さないよ。『審判』」
陽太は瞼をぴくっと動かし、去り際の霧島の背中に言った。
「霧島。これはゲームじゃない」
霧島は歩みを止め、陽太のほうを向き直して告げた。
「わかってるよ」
相変わらずの作り笑顔であった。
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