Duty

Kfumi

chapter 7 dark side Ⅲ

「ね~んねん、ころ~り~よ~、おこ~ろ~り~よ~。坊やは良い子だ~、ねん~ね~し~な~」

 居心地の良い子守唄が響いている。
 そんな気がした。
 赤ん坊が「おぎゃあ」とただただ泣き喚くばかりであった。
 母親はただただずっと子守唄を紡ぎ合わせていた。

* * * * *

 夕方の台所に傷だらけの少年が立っていた。
 台所には夕飯の暖かい匂いが、窓から突き抜ける柔らかな心地よい風と共に流れてきていた。
 トントントン……と包丁とまな板が叩き合う音が響く。
 母親は夕飯の支度をしていた。

 少年はそんな母親の後ろ姿を静かに眺め続けた。
 少年はもう泣くばかりの赤ん坊ではなかったのだ。
 少年は母親には頼りたくなった。
 少年は母親に助けを求めたくなかった。
 少年は母親に今の自分を気付かれたくなかったのだ。
 少年は母親から愛を確かに感じていた。
 だから、もう頼りたくなかったのである。

 そのとき、少年の後ろから、ある少女が少年の母親のもとへと駆けていった。
 そして少女は何かを少年の母親に告げた。
 トントントン……という心地の良い音色が途絶え、ゆっくりと母親は傷だらけの少年のいる方へと振り返った。

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