Duty
chapter 4 第1の審判 -4
4 5月21日 微笑
花瓶が置かれていた。それには綺麗な花が差されてあった。
それはいつもなら荒廃しているはずの教室のとある生徒の席の上に置かれていた。
いつもならこんな朝早くでも、騒がしく、けたたましいほどの教室だが、今日は驚くほどに静かであった。
そのなかには目に涙を浮かべている生徒もいた。
クラス担任の静間が教壇に立ち、教室を一通り見渡し、ゆっくりと誰も刺激しないように告げる。
「もうご存知の方もいると思いますが。昨日、みんなの仲間が一人、事故により還らぬ人となりました」
神谷陽太はゆっくりと俯く。
暗く、まるで自分を責めるかのように。
机の上に置かれた自らの拳をぎゅっと強く握った。
「本当に残念です。大切な仲間でした。五十嵐アキラ君に黙祷を捧げましょう」
深く沈みきった教室が沈黙に支配された。
どの生徒も震え上がっていた。
昨日のあの出来事を知っているから。
まさか本当にこんな事態になるなど思ってもいなかったから。
恐怖から自然と涙を溢す生徒もいたが、そうではない生徒も紛れているようだった。
特に4月に屈辱を受けたある少年は、唇を釣り上げ、不気味にほくそ笑んでいた。
そんな教室の生徒たちのなかに、静かに前方を見据え、冷徹な表情を浮かべるとある女子生徒の姿があった。
名札には彼女の長い髪に隠れて読み取りにくくはあったが、『――零』と書かれていた。
その女子生徒は静かに自らの胸に掛けたロケット(=小さなペンダント式写真ケース)を握り、誰にも気付かれないように小さく笑った。
まるでこれから夢が叶うかのように。
花瓶が置かれていた。それには綺麗な花が差されてあった。
それはいつもなら荒廃しているはずの教室のとある生徒の席の上に置かれていた。
いつもならこんな朝早くでも、騒がしく、けたたましいほどの教室だが、今日は驚くほどに静かであった。
そのなかには目に涙を浮かべている生徒もいた。
クラス担任の静間が教壇に立ち、教室を一通り見渡し、ゆっくりと誰も刺激しないように告げる。
「もうご存知の方もいると思いますが。昨日、みんなの仲間が一人、事故により還らぬ人となりました」
神谷陽太はゆっくりと俯く。
暗く、まるで自分を責めるかのように。
机の上に置かれた自らの拳をぎゅっと強く握った。
「本当に残念です。大切な仲間でした。五十嵐アキラ君に黙祷を捧げましょう」
深く沈みきった教室が沈黙に支配された。
どの生徒も震え上がっていた。
昨日のあの出来事を知っているから。
まさか本当にこんな事態になるなど思ってもいなかったから。
恐怖から自然と涙を溢す生徒もいたが、そうではない生徒も紛れているようだった。
特に4月に屈辱を受けたある少年は、唇を釣り上げ、不気味にほくそ笑んでいた。
そんな教室の生徒たちのなかに、静かに前方を見据え、冷徹な表情を浮かべるとある女子生徒の姿があった。
名札には彼女の長い髪に隠れて読み取りにくくはあったが、『――零』と書かれていた。
その女子生徒は静かに自らの胸に掛けたロケット(=小さなペンダント式写真ケース)を握り、誰にも気付かれないように小さく笑った。
まるでこれから夢が叶うかのように。
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