漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

先輩たちの力!

 俺とリッシュがほとんど同じタイミングで、ゆっくりと声のする方へと向く。
 神様お願い、頼むから聞き間違いで……!



 「遅い! もし俺たちが悪意を持った魔法使いなら、今頃死んでいるぞ」

 「「す、すみません!」」


 おそらく先輩なのだろう、いきなり俺たちの行動に説教を始めた。


 「そ、それでその、あなたたちはもしかして……先輩?」

 「ああそうだ、お前たちのようにこそこそ隠れている生徒を探し、ポイント稼ぎ。去年の屈辱を、今年返すんだ」

 「そうなんですね、先輩方も苦労されたんですね」


 なんだろう、少し親近感が湧いた。


 「ねぇ、ちょっと……」


 すると、俺と先輩が話している間に近くまで寄っていたアスラが耳打ちを。


 「私が相手の視界を奪うから、スキを作ってくれない?」

 「おい! そこ! 何をこそこそと話してるんだ」


 さすがに目の前、話をしているのが見つかった。
 すると、それまで静かだったリッシュが少し笑い、ゆっくりと立ち上がると。


 「そいつビビリなんで、女の子に守ってもらってるんですよ」


 なんて冗談を言いはじめた。
 まぁ、ビビってるのは本当なんだけど。
 それを聞いた先輩は大笑いしながら。


 「なんだそうか、やっぱり去年の俺みたいだなぁ。でも出場してるからには容赦なしだ」


 そう話す先輩の近くにはもう一人、おそらく同じクラス、チームなのだろう。
 手には杖を持ち、ゆっくりと構えをとる。


 「なぁアスラ、もう逃げようはなさそうだぞ」

 「なら戦う? やるしかなさそうだけど」

 「だから、コソコソ話さずにさっさと終わりにしようぜー!」


 待ちきれなくなったのか、先輩の一人が大声で叫ぶ。
 同時に、もう一人の方も魔法を唱える動きを見せた……その時!


 「甘ったれるな!」


 さっきの先輩以上の叫び声が響く。


 「一体誰だ、俺たちの邪魔しようとするのは」


 ここにいる全員が、声のした方へ視線を向ける。
 そこには、赤い髪をした男子生徒が一人、木にもたれるようにして立っていた。
 魔力を感じにくい俺でも、何となく力を感じるほど。


 「なんだ、あんたかよ。どうして止めるようなマネを? ……ひょっとして、先に狙いをつけてたか?」


 この話し方を見るに、どうやらあの赤い髪の人も同じ学年、つまり先輩らしい。
 助けてくれるのか、それとも。


 「勘違いするな。俺はただ、自分よりも弱い奴を狙おうとするのが気にくわないだけだ。正直情けないぜ?」

 「う、うるせー! そもそもこの大会はそういう場だろ? 去年俺たちもやられた、その仕返しだ」

 「フ、俺たちか……少なくても俺は、去年も参加したが大敗はなかったぞ? 時間制限に敗れたが、今年は違う」


 つまりこの人は、上級生とも渡り合えるレベルって訳か。
 出来るなら、いや、絶対に戦いたくない!


 「そりゃ、あんたが強いのはわかる! だが俺たちのやり方に口を出す権利はないはずだぜ」

 「それもそうだ。なら、手始めに俺を攻撃してみろ。俺を追い返せれば、好き放題できるんだぞ?」


 その一言で、目の前の先輩たち二人の目つきが変わった。
 これはもう、やる気だ。


 「こっちは二人、言い訳はするなよ?」

 「わかっている、早くしてくれ」

 「あんまり舐めんなよー!」


 そう叫ぶと、一人は赤髪の方へ突っ込んでいき、もう一人は遠距離から魔法の構えを見せる。
 俺たちにはまだできていない、連携って奴だろう。


 「今更後悔すんなよ!?」

 「行くぜ、サポート魔法『クウィック』だ」


 その瞬間、赤髪へと突っ込んでいた先輩の体から、薄らと光があふれる。


 「なぁリッシュ、あれって明らかに速くなってるよな?」

 「そうだな、あれはサポート魔法ってやつで自分の魔力を相手に与え、一時的に能力を上げる魔法だ。まだ俺たちでは習わないけど、簡単じゃないはずだ」


 俺たちが話している間に、二人の距離は相当近くに!
 一方の先輩は魔法を唱え始める、しかし赤髪は動かない。


 「なんだよ、驚いて動けないのか? 一撃で終わらせてやるよぉ」


 そう話すと杖に魔力を集中させる。
 先輩の口は勝利を確信しているのか、ニヤケている。


 「目の前で火力最大の一撃、食らっちまいなー」


 先輩が魔法を発動した瞬間、巨大な爆発音とともに砂煙が広がる。


 「赤髪の先輩の次は俺たちか、どこまでやれるかな?」


 そう言うしかなかった……。

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