漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

番外編〜彼のいない学園で1!

 大樹が中等部へ行くよう依頼を受けて数日、一人の少女は考えていた。
 同じ時期にこの学園へ来て、ある程度行動を共にしたフローラだ。


 「少し……寂しいですね」


 周りに誰がいるわけでもないが、自然と口にした言葉。
 似た境遇の、そしていつも一緒にいてくれた大樹が数日間いない。
 学園から帰ったフローラは、自室でイスに座りながらそのことを考えていた。


 「あら? これは」


 通信用の魔道具にメッセージが送られてきた。
 送ってきたのは、フローラや大樹と同じ学年ながら将来を期待されているクリムだった。


 「えっと『最近元気ないから心配……』って。心配させてしまいましたか」


 クリムは友人として、元気のないフローラを気にしていた。
 もちろん、理由はわかっているが。


 「えっとそれから『時間があれば会って話さないか?』って書いてますね」


 断る理由もなく、寂しさをなくしたいと考えたフローラは「行きます」とだけ返事を送り、部屋を出た。




 「それでその、最近調子はどうなんだろうか?」


 席に着いて開口一番、クリムは気になっていたことをフローラに尋ねる。
 二人がいるのはフローラの寮の中にある、集会場。
 お洒落なバーのような雰囲気だが、未成年なので当然ジュースを頼んでいる。


 「調子ですか? 私は別にそこまで」

 「いやいや、ここ最近調子悪そうだぞ? 悩みがあるなら言ってくれ」


 何故か否定するフローラに、食い気味でクリムはツッコミを入れる。


 「でも本当に悩みなんて……」

 「う〜ん、これは言おうか悩んだのだが」


 オドオドするフローラに、クリムは耐えきれなくなったのか、一度呼吸を整えると。


 「大樹がいないのと関係あるな?」


 ビシッと言い放った。
 それを聞いたフローラは、思い当たることがあるため俯くと。


 「……はい」


 一言だけ返事をした。
 クリムはそれを確認すると、ホッと一息ついて笑顔になり。


 「よかったよ、私はフローラが本当に心配だったんだ。嫌なことがあったんじゃないかって。でも理由が大樹で安心した」

 「改めて言われると恥ずかしいです」


 考えていることがバレてしまい、いまだ俯いているフローラ。
 それを見たクリムは、ニヤニヤしながら。


 「フローラ、顔赤くなっているぞ?」


 フローラは慌てて顔を手で隠すのだった。

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