漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

中等部のレベルと女の子!

 「それでは今日は、簡単な魔法の実技を行いましょう」


 ユラ先生のその一言で、今日の中等部生活は始まった。
 高等部へ通うことになった時も、魔法の実技をやったっけな。

 その時は初めて見る魔法ってものに驚かされたが、今はもう慣れている。
 人の慣れというやつは恐ろしいな。



 そしてクラスのみんなで移動したのが、今いる魔法実習室だ。
 高等部に比べ、魔法を扱える人が少なく、何が起こるかわからないため、専用の部屋が用意されているそうだ。


 「それじゃあ早速魔法を使ってみましょう。基本となります、火か水、風の魔法をお願いしますね」


 高等部では全て指示されていた気がするけど、この学年では難しいんだな。
 先生の指示で、みんなが思い思いに魔法を唱え始める。

 しかし、高等部で見たときのインパクトはなく、そこには魔法で苦戦する姿が見てわかる。
 何人かは、俺と大差ないなぁ。



 「大樹さんどうですか? 中等部だと魔法のレベルはこんな感じですが」

 「そうですね、高等部と比べるとかなり差があるように感じます」


 俺の言葉に、ユラ先生は少し笑みを浮かべ。


 「今はまだそうですよね。ですが、この子達も一年あれば凄く成長するんです」

 「一年で……本当ですか」

 「ええ、この目で見てきてますから」


 それはもう本当に嬉しそうに、ユラ先生は話すのだった。



 それから暫くし、魔法の実技練習は終了した。
 俺も先生の補佐として、高等部やクリムから教わった事を伝えたり、時には的になったり。

 上達の早い子もいたりして、一年あれば変わるんだなぁと実感した。
 俺ものんびりしていられないな。


 「それでは教室に戻りましょう。今日はこの後、お昼休憩と少しの座学で終わりになります」

 「「「はい!」」」


 みんなハッキリと返事をしているが、おそらくお腹が空いたんだろう。
 今までで一番声が大きかった。


 「あっ、そういえばユラ先生に聞きたいことが」


 教室へ向かう途中、隣を歩くユラ先生へ声をかける。


 「どうしたんですか?」

 「気になってたことがあるんですけど、このクラスの子って一人足りないですよね? 初日も席一つ空いてましたし。来られない事情でもあるんですか?」


 俺の問いに、ユラ先生は少しだけ考えて。


 「あの子は病気とかではないんです。ただ、参加したくない理由があるようで」

 「なるほど、それで休んでるんですね」

 「ただ休んでるわけじゃないんです。一応学園には来ているんですよ」


 それはまたどういったことなんだろう。
 考える俺に、ユラ先生は続けて。


 「あの子は普段、屋上にいると聞いてますが」

 「あー!」


 俺の突然の叫びに、ユラ先生は驚いて体を硬直させてしまう。


 「あ、えっと、突然すみません! じつはその子に会ったもので」

 「ほ、本当ですか!?」

 「ええと、多分そうだと思います。屋上で寝ていて……確か……」


 何か特徴はなかったか?
 ……そうだ!


 「長い金髪の女の子でした」


 するとユラ先生は少し驚いた顔をしながら。


 「そうです、その子ですよ。まさかもう会っていたなんて。……私の今の悩みは、あの子だけなんです」

 「悩み、ですか?」

 「ええ、ここに通う子達は良い子ばかりで、来なくなる理由が思い浮かばないんです。もしかしたら嫌われてるのかもって」


 ユラ先生は本当に悲しそうな表情を浮かべて。
 そんな顔をされるとほっておけない。


 「先生、これは僕の勝手な意見ですが、その子は本気で嫌っていたりすることはないと思います」

 「どうしてそう思うんですか?」

 「だって、本気で嫌ならここへだって来ないはずです。わざわざ来るってことは、何か別の理由があって参加出来ないのかもしれません」


 俺の推測に、ユラ先生は少しだけ表情を緩めると。


 「そうですね、そうかもしれません。私の考えすぎだったかも。……大樹さん、ありがとうございます」


 優しい笑顔を見せてくれる。
 こんな顔をされてしまっては、放っておけなくて当然だ。

 俺は密かに、この学園でやることリストに一つ追加することにした。

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