漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

報酬の使い道!

 「うん、確かに預かった。後はこっちで依頼主に届けるから、依頼達成とみなして報酬を渡しておくよ」


 サークルメンバーとの、合宿という名のバカンスを終えた翌日。
 学園はまだ休みということもあり、昼から寮のマスターへ依頼の報告に来ている。


 「それで、旅行は楽しかったかい?」

 「はい。キノコ狩りでは死にかけましたけどね」


 あの時のことを思い出すと、怖さもある。
 ただ、全体的には楽しかったし、また行きたいと思えた。


 「それは良かったよ。それに、無事に帰ってきて依頼もこなせたんだ。素晴らしい旅行になったね」


 相変わらずの渋く優しい声。
 この声を聞いていると、ホッとする自分がいる。


 「フローラさんもお疲れ様。その顔を見ると、楽しめたようだね」

 「それはもう。また一緒に行きたいと、大樹さんも言ってくれましたから」


 フローラは旅行前と比べ、笑顔をよく見せるようになった気がする。
 それほど楽しんでくれたんだろうか。
 もしそうなら嬉しいけど。


 「そうか、大樹くんがそう言ったか。それは良かったね」

 「はい!」


 すると、マスターは俺の方を見て小さく親指を立てる。
 今日はマスターもノリノリだなぁ。



 依頼達成の褒美に、マスターが無料で作ってくれた昼食を食べ、報酬ももらった後、俺とフローラはどうしようかと悩んでいた。

 時間はまだ昼を少し過ぎた頃。
 学校がないと、ここでは何をして過ごせばいいのかわからなくなる。

 報酬金は思っていたより高く、少しくらい使ってもしばらくは問題ないほど。


 「なぁフローラ、これから買い物に行かないか?」


 今回の依頼は、正直言ってサークルメンバーの協力のおかげだった。
 なら当然、リッシュや先輩にも何かしてあげたい。


 「お買い物、いいですね」

 「よしっ、なら決まりだ。早速行こうか」


 こうして俺たちは買い物へ行くことにした。
 フローラには、何をしに行くか伝えていないけど、楽しそうにしてるしいいか。



 「ここで買いたいものがあるんですか?」


 目的の店の前で、フローラが尋ねてくる。


 「そうだよ、見た目小さなお店だけど、面白いものが結構あるんだ」

 「そうなんですか〜。でも大樹さん、どうして詳しいんですか?」

 「それはだなぁ」


 俺はそう言いながら、店のドアを開ける。


 「いらっしゃい……あれっ? 大樹くんじゃない」

 「こんにちは店長。今回はお客さんとして来ましたよ」


 そう、ここはお金がない時に世話になった魔道具店だ。
 あの時はリッシュに騙された感もあったが。


 「あの、大樹さん。この方は?」


 恐る恐る店内に入り、フローラが尋ねる。


 「この人はこの店の店長だよ。前に一日だけ働かせてもらって、お世話になったんだ」

 「大樹くん、今日はデートかなにかなのかな?」


 フローラに説明していると、店長がそんなことを。


 「ち、違いますよ。今日はサークルメンバーにお礼の品をと思って」

 「あっ、そういうことだったんですね」


 ここで初めて目的を聞いたフローラが納得する。


 「ふ〜ん、それで私の店に来たってわけ。大樹くんは良い子だわ」

 「まぁ、他のよくわからないお店よりは、ここの方が安心できますから」

 「そっかそっか、なら好きなだけ探してみると良いよ」


 俺の褒めているのか褒めていないのかわからない説明に、店長は明るくなる。
 世話になった店で買うのも良いもんだ。


 「そういえば店長、リッシュに何か買ってあげたいんだけど、どんなのが良いかわかります?」

 「う〜ん、貰えるならなんでも喜びそうだけど。あっ、珍しいものなら気に入ってくれるよ」


 そう言えば、リッシュも俺と似たような思考だったな。


 「ありがとう店長。これでリッシュへのプレゼントは探せる。後はリファ先輩か」


 先輩に関しては難しそうだ。
 どんなのが喜ばれるか、はっきり言って想像できない。


 「あの、大樹さん」


 珍しそうに店内を見ていたフローラが、俺の方を見て。


 「リファ先輩へのプレゼントは私に任せてください。私も何か贈りたいので」

 「そっか、わかった。ならそれぞれ、俺はリッシュに、フローラは先輩へ。それでいいか?」

 「はい!」


 そう言うとフローラは、再び店内を物色し始めた。

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