漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

さよならキロス島!

 リッシュとの特訓を終え、疲れて別荘に戻る。
 中へ入ると、台所の方から甘い匂いがしてきて、フローラ達のことを思い出す。

 そういえば、リッシュが言ってたな。
 そろそろ完成なのだろうか。


 「フローラと先輩、お菓子の方はできましたか?」


 聞きながら台所へ行く。
 すると。


 「あっ、おかえりなさい大樹さん。つい先ほどお菓子が完成しましたよ」


 フローラはそう言うと、目の前に置いてある皿を指差す。
 見てみると、皿の上には可愛らしいクッキーが。


 「へー、上手にできてるな」

 「そうですよね、ほとんどリファ先輩が作ってくれたんですよ」


 フローラに言われて先輩を見ると、恥ずかしそうに下を見ていた。
 誰よりも女の子らしいのは先輩だよなぁ。


 「大樹さん、これ」


 見るとフローラが皿を持って。


 「食べてみて欲しいんです。ダメですか?」

 「ダメなわけないよ。甘いの好きだし、ありがたく貰うぞ」


 俺が一つ選んで手に取ると、フローラの視線をすごく感じる。
 食べにくいなぁ。


 「あの、フローラ? そんなに見られてると」

 「そうですよね、ごめんなさい」


 これで気軽に食べられるな。
 そこまで大きくないため、一口で一気に食べきる。
 匂いほど甘くない味で、男の俺でも食べやすい。


 「これ美味しいよ。そこまで甘くないしね」


 フローラはホッとした顔をする。


 「おう、大樹ここにいたのか。それ、俺も食べていいかな」


 俺の特訓後、その場で眠っていたリッシュが戻ってきた。


 「もちろん、いいですよ」

 「よく出来てるよこれ。女子の手作り菓子を食べられただけで、今回の旅行に意味があったってもんだ」

 「大げさですよ」


 フローラとリッシュが楽しそうに話す。
 そうだなぁ、これだけ楽しめたんだから、成功って事でいいよな。



 そしていよいよ帰る時間。
 行きで使った舟に再び乗り込む。


 「大樹達の依頼もクリアできたし、思い出も作れた! 今回の旅は成功でいいな」


 サークルリーダーとして、リッシュが締めにはいる。


 「だがまだ終わりじゃないぞ? 旅行は家に帰るまで続く。最後まで楽しんでいこう」


 その言葉と同時に、舟は進みだす。
 振り返ると、キロス島が徐々に小さくなっていく。

 楽しかったなぁ。
 最初はこんなことになるなんて思いもしなかったし、日本に帰りたいとも思った。

 だけど今は……


 「なぁフローラ、また先輩の別荘に行きたいな」


 素直にそう思えた。

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