君の嘘は僕を救う
[彼女は面白い]1
  公園のベンチ。珍しく僕と美乃梨はそこに座って話していた。
  どうやら美乃梨は部活だったらしく、ちょうど帰り際に僕を見かけたらしい。
「ふーん。それって、デートなんじゃないの?」
  今日会ったことを話すと、美乃梨は軽く言った。
「デート。確かに、デートと言われる条件は揃ってるかもね」
「条件って…本当に堅物だなぁ。こういうのは、自然に付き合うものなんじゃないのか?」
「だから、前にも言ったけど、僕に限ってそんなことは絶対にないって」
  美乃梨はそこまで言うと「あ、そういえば」と言い、手をポンと叩いた。
「お姉さん、具合どう?」
「…あまり良くない」
  咲凜という不思議な少女の話を一度置き、話題は姉の話になった。
「そっか…良くなるといいんだけどなぁ」
「うん。できたら…これ以上は家族を失いたくないな」
  そう。僕は8歳の時に起きたあの「大震災」で両親を失っている。
  女性に助けてもらった後、連れていかれたのは、父、母、姉の三人が向かった避難所とは別の避難所だった。三人が避難していた場所には津波が到達してしまい、両親は行方不明に。姉は奇跡的に助かったのだ。
  これ以上、家族を失いたくない。僕のたったひとつだけの願いだった。
「…治るの?お姉さんの病気」
「………」
  そして、僕は知っていた。
「…司?」
  姉の病状を。姉の未来を。
「…きっと治るよ。いや、絶対に治る」
  ただ、今は認めたくない。信じたくない、信じてはいけないのだ。
「そうだね。絶対に治る!今度、お見舞い一緒に行かせてよ!」
「うん。全然構わないよ」
「やった!」
  幼い頃によく遊んでいた過去もあり、姉と美乃梨は今でもとても仲が良い。
「暗くなっちゃったねぇ」
  空を見上げ、星を眺めながら僕に問う。
「また明日、一緒に帰ろうね。司」
「…?」
  どこか寂しげな印象。それは、咲凜も一度だけしたことがあった表情だった。
「うん。別に構わ…」
「『いいよ』で、いいんだよ。カタブツ君♪」
「…うん。いいよ」
「じゃあ、また明日、ね」
「うん。また明日」
  また明日、か。
  8歳の頃に地震を経験してから、明日がいつも通りの日常を過ごせるとは限らないということを覚えた。
  そう。また明日。また明日なのだけれど。
  それがいつも通り平和なものなのかは分からないのだ。
  そうだ。
  明日は、お姉ちゃんのお見舞いに行こう。
  …美乃梨も誘って、三人で楽しく話でもしよう。
  僕は完全に暗くなった空を見上げ、街灯で照らされていたベンチから離れるように歩き出した。
  夏とは思えないような冷たい風が僕の頬を撫でる。それがとても心地よく感じたのだった。
  どうやら美乃梨は部活だったらしく、ちょうど帰り際に僕を見かけたらしい。
「ふーん。それって、デートなんじゃないの?」
  今日会ったことを話すと、美乃梨は軽く言った。
「デート。確かに、デートと言われる条件は揃ってるかもね」
「条件って…本当に堅物だなぁ。こういうのは、自然に付き合うものなんじゃないのか?」
「だから、前にも言ったけど、僕に限ってそんなことは絶対にないって」
  美乃梨はそこまで言うと「あ、そういえば」と言い、手をポンと叩いた。
「お姉さん、具合どう?」
「…あまり良くない」
  咲凜という不思議な少女の話を一度置き、話題は姉の話になった。
「そっか…良くなるといいんだけどなぁ」
「うん。できたら…これ以上は家族を失いたくないな」
  そう。僕は8歳の時に起きたあの「大震災」で両親を失っている。
  女性に助けてもらった後、連れていかれたのは、父、母、姉の三人が向かった避難所とは別の避難所だった。三人が避難していた場所には津波が到達してしまい、両親は行方不明に。姉は奇跡的に助かったのだ。
  これ以上、家族を失いたくない。僕のたったひとつだけの願いだった。
「…治るの?お姉さんの病気」
「………」
  そして、僕は知っていた。
「…司?」
  姉の病状を。姉の未来を。
「…きっと治るよ。いや、絶対に治る」
  ただ、今は認めたくない。信じたくない、信じてはいけないのだ。
「そうだね。絶対に治る!今度、お見舞い一緒に行かせてよ!」
「うん。全然構わないよ」
「やった!」
  幼い頃によく遊んでいた過去もあり、姉と美乃梨は今でもとても仲が良い。
「暗くなっちゃったねぇ」
  空を見上げ、星を眺めながら僕に問う。
「また明日、一緒に帰ろうね。司」
「…?」
  どこか寂しげな印象。それは、咲凜も一度だけしたことがあった表情だった。
「うん。別に構わ…」
「『いいよ』で、いいんだよ。カタブツ君♪」
「…うん。いいよ」
「じゃあ、また明日、ね」
「うん。また明日」
  また明日、か。
  8歳の頃に地震を経験してから、明日がいつも通りの日常を過ごせるとは限らないということを覚えた。
  そう。また明日。また明日なのだけれど。
  それがいつも通り平和なものなのかは分からないのだ。
  そうだ。
  明日は、お姉ちゃんのお見舞いに行こう。
  …美乃梨も誘って、三人で楽しく話でもしよう。
  僕は完全に暗くなった空を見上げ、街灯で照らされていたベンチから離れるように歩き出した。
  夏とは思えないような冷たい風が僕の頬を撫でる。それがとても心地よく感じたのだった。
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