ダイヤモンドより硬く輝いて
第4話 街でお買い物
 ノールドとヴァントが鍛冶屋で話をしている頃、一方の研人は…
「えっと…すいません、ミンダ牛?のチーズってありますか?」
 僕は露店の中のチーズ屋に来ていた。
「ああ!1ホールで1マト55リトだよ!買うかい?」
 マ、マト?リト…?やばい、この世界の貨幣の単位が分からない…とりあえず、これでいいのかな…?
「えっと、…これで足りますか?」
 僕は金貨2枚を店主に差し出した。すると…
「あいよ!2マトだから、45リトのお返しだね、チーズは重いから気をつけてね!」
 買えた。銀貨数枚がお釣りとして手渡された。多分1マトは100リトなんだろう。日本円換算は…いくらだろう?
 その後も僕は野菜や肉、生活雑貨をメモ通りに買っていった。
……………
………
…
「…さすがに…重い…」
 流石に1週間分の食料となると持つのがつらい。特に僕は運動部でもなかったから体力が無い。
「…ふう、喉乾いちゃったや…ちょっとだけ、ちょっとだけ休憩…」
 と、つい自販機を探してしまう。が、すぐに異世界なんだからあるわけないだろうと我に返る。こういう時、この世界の人達はどうするんだろうなぁと考えていると、路地裏の方から…
ガタンッ!ガタガタガタッ!
 と重い金属を無理やり動かすような音が聞こえる。
「…な、何だろ、お店か何かあるのかな…」
 つい好奇心が勝って見に行ってしまう。まぁあんまり深くまで行かなきゃ大丈夫だろう。そう思っていた。するとそこには…
「マンホール…?」
 蓋の空いたマンホールがあった。もしかして下水道の整備か何かをしてる人が入っていったのかな。
ゴポン……
「ん?ゴポン?」
 後ろで何か水っぽい音がして、振り返るとそこには…!
ゴポ…ゴポゴポン…
  3メートルはあるであろう緑色のドロドロした液体が僕を見下ろしていた!
「な…なんだ、これ…」
 次の瞬間!
ウジュルルッ!
「う、うわぁ!?」
 液体の一部が僕を目掛けて飛んできた。どうにか避けることが出来たが、間違いない。あれは僕を攻撃してきたのだ。
「な、なんだよ!やるっていうのか!?それなら…!」
 それなら、と近くに落ちていた木の棒を拾い。
「で、でりゃあ!」
 と、緑色の液体に対して棒を思い切り振ったが…
ゴプンッ!
 呑まれた。命中はしたが緑色の液体に棒が取り込まれてしまった。
「そんな…!ど、どうしよう…」
 焦り後ずさる僕、そんな僕とは対照的に躙り寄る液体。
「そうだ!魔法なら!」
 ロックボルト、出来るか分からないけど、やるしかない!僕は腕を突き出し、
「ロックボルト!」
と、唱えてみた。だが…
 
「…出ない…?」
 昨日のような小さな石すらも出来なかった。
「な、なんで…なんでなんでなんで!」
 僕は「ロックボルト!」と叫び続ける。だが、何も起きず、液体との距離はどんどん縮まる。
「ヒッ…いやだ…くるな、くるなぁあ!」
液体が僕に接触するかと思ったその時!
「ダークスピアッ!」
黒い槍状の光が液体の上から刺さる。液体はドロドロと溶けて丸いコアのような物が残る。
「無事か!?ケント!」
「あ…師匠…」
そこには師匠が立っていた。おそらく今の魔法も師匠が放ったものだろう。
「お前さんが遅いから心配になって見に来たのじゃ、怪我はないか!?」
師匠は慌てて僕に駆け寄ってくる。
「…は、はい…無事です。しかし…今のは一体…?」
「アレか?アレはスライムじゃよ」
「ええ!?スライム!?そんなぁ…」
スライムごときにやられかけたのか…僕は…
「…あのなぁケント、お前さん勘違いしとらんか?」
「え?」
「スライムは強いぞ?物理攻撃はほぼ効かん厄介な奴じゃ」
「え、いや、弱いんじゃないんですか?スライムって」
すると師匠は「はぁ〜…」と溜息を吐きながら呆れたように告げる。
「お前さん、ゲームやマンガの見過ぎじゃわ…」
「そ、そうです…か?あれ?」
ゲーム?マンガ?どうして師匠が知っているんだ…?そういえば、思い返せば…
[この世界の銃は火薬だけでなく〜…]
[いつまでもその学生服ではいられんだろう]
 …学生服、は…まぁこっちの世界でも学校があれば分かるかな?でも僕の世界の銃の細かい説明をしてないのに、火薬だけでは撃てない。や、多分こちらの世界には文明的に無いだろうゲームなんて…もしかして師匠は…
「しかし…こんな下水道を通って侵入か…偶然か?うーむ…」
「あ、あの…師匠?」
「なんじゃ?どっか痛むのか?」
「い、いえ、その…師匠は何故僕の世界の物事を知っているのかなぁって…その、ゲームとか…」
「…………」
 師匠は明らかに「しまった」という顔をしている。もしかして…
「ね…」
「ね?」
「寝言でお前さんが言っておったんじゃよ!あー、ゲーム序盤はスライムでレベル上げしてドロップ品の薬草もついでに回収しよう〜、なんてのぅ!フホホ!レ、レベルって何なんじゃ?美味いのかの!?」
 …ダメだ。多分この人嘘つくのが僕より下手だ。開いた口が呆れて塞がらない。
 そんな僕が呆気に取られていると…
「さ、さあ!ケントよボサっとしとらんと、服を買いに行くぞ!若者向きのいい服を買ってやらんとなぁ!早くこーい!」
「あ…はい…」
 …多分師匠は僕の世界を知っている。でも謎が深まるばかりだ。これはこれから解明していかねばと、僕は心に決めたのだった。
……………
………
…
 ちなみにこの後、師匠は僕の機嫌をとるかのように服などを大量に買ってくれた。気を逸らさせる為だったのだろうが、寧ろその行為は怪しさしかなかったのであった。
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