ダイヤモンドより硬く輝いて
第1話 さよならから始まる物語
 …あぁ神様…僕が何をしたというのでしょう…
 生まれて15年間、父と母は僕が小さい頃に交通事故に巻き込まれて死んだ。そこからは施設で育った僕、風信 研人 (ふうしん けんと)は何の理由からか、イジメを受けていた。初めは物を隠されたり、陰口を言われたり、そんな程度だった。でも半年前からどんどんとイジメが酷くなっていって、今では学校の屋上でよく…
「おい研人ぉ、立てよ、へばってんじゃねーぞ?…おい!!」
「あーあー、お前やりすぎだよ、見てみ、おねんねしちまったぜ?」
「しゃーねーなぁ、これで、起きるだろ。オラァ!!」
 ドスッ!と僕の腹に蹴りが入る。痛い。でもまだマシな方だ…。でも、限界だ。僕はもう耐えられない…。
「…あ?なんだ?この石?」
 石…石?…まさかっ!
「か、返せ!それは僕の大事な!」
「大事な?なんだ?」
 僕の大事な石だ!…その言葉が出ない。あの石は小さい頃に、そう、まだ父さんと母さんが生きていた時に、買ってもらったダイヤモンドを模して作られた人工の石。たったひとつの大事な大事な形見同然の石。…でも…
「あ…ぅ…」
「…はぁ、おもんねーなぁ、…そうだ!返してやるよ。ほぉれ、とってこーいっ!!」
「えっ…!?」
 ポイッと投げられた石は学校の屋上から外へと放物線を描きながら飛んでいく。
 僕は…僕は…!
「ギャハハハハ!見ろよ!アイツ屋上から飛び降りやがっ…た……え?」
「マ、マジかよオイ!嘘だろぉ!?」
 …飛び降りていた。石のために。だが、石には手が届かない。
 あぁ…落ちていく、落ちていく…
 でも、これでよかったんだ。もうイジメられない。辛い思いをしなくていい。
 さよなら、僕。さよなら、世界。
………。
 怖い。死ぬのが怖い。
 嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
 怖い!怖いよ!死にたくない!
「嫌だあぁ!うわあぁぁぁ!!」
 そうして、僕は死を迎えた
 そう、その筈だった…。
 暖かい…なんだろう?ふかふかのベッドみたいな…。いい匂いもする…シチュー?
  ムクリと起き上がると僕はふかふかのベッドにいて、周りは、見たことない装飾がなされた…家の中?そして近くの大釜はグツグツとシチューが煮込まれている。でも、中の具は何だろう?ニンジン?にしては変な色だし、こっちの肉は…?
「おう少年!起きたかの?」
「うわあっ!」
 ビックリして後ろを見ると、白いヒゲをモジャモジャと蓄えて、見た目はおとぎ話の魔法使いなおじいさんが、ゴツゴツした杖をつきながら立っていた。
「すいません!あの!勝手にお邪魔したんじゃなくて!その!えっと!」
「あぁ、よいよい。ワシが君を運んだんじゃよ。気分はどうかね?」
「え…そう、なんですか?」
「ああ、そうとも。お、シチューがええ具合じゃな、食べるか?えー、あー…少年、名前は?」
おじいさんがシチューを木の皿に注ぎ、僕へ差し出す。
「僕は…風信 研人と言います…えっと、いただきます」
「…ほう…なるほどなぁ…もしかして『君も』…」
「え?」
「ああいや、こっちの話じゃよ、あー、そうじゃ!ワシの名前はノールド、ノールド・トラヴィスじゃ。…シチュー、美味いぞ」
ノールド?外国人なのか?
その老人に言われてズズッとすすると、
「あっ、美味しい…!」
「そうじゃろそうじゃろ!グリーンラムの乳と肉がいいアクセントになっておるんじゃよ!」
 普通のシチューよりもちょっと胡椒っぽいけれど、それでいて濃厚でクリーミーな舌触りがたまらない…!
「フホホ!ほぉれ、このパンをシチューに浸してみるんじゃ、更に美味いぞぅ?」
うわあ…!このパン、さわやかなハーブの香りがする…!シチューに浸したら、どんな味がするんだろう!
……………
………
…
どのくらいの時間が経っただろう
「して、ケントよ…げふっ…」
「は、はい…うぷっ…」
 ついつい食べ過ぎて、しまった…
 五右衛門風呂ほどの大釜の中のシチューは空っぽになっていた。
 そんな満腹の状態でノールドはこう聞いてきた。
「お前さん、どっから来たんじゃ?」
ど、どっからって…
「…え、えーと、そのぉ…」
……………
………
…
「ふむ、日本…のぅ…」
「…は、はぁ、変ですか?」
「うむ、ケントよ、残念ながらそんな国や地名は、『存在しない』ぞ」
「…え…」
 今…なんて…?
 ない?存在、しない?
 僕がポカンとしていると
「…新王暦79年、花の月、21日…」
「な、なんです…?その暦…」
「やはりか、今の年や月日を知らぬ、その名、その出で立ち…」
(そして、あの地に倒れていたこと…)
 ノールドが神妙な面持ちで僕を見る、そして…
「いいか?ケントよ、ここはお前さんの世界ではない。いわゆるここはお前にとっては異世界じゃよ、い・せ・か・い。お分かりかの?」
え……
「ええぇぇぇぇぇぇ!?」
 衝撃の事実でした。
 生まれて15年間、父と母は僕が小さい頃に交通事故に巻き込まれて死んだ。そこからは施設で育った僕、風信 研人 (ふうしん けんと)は何の理由からか、イジメを受けていた。初めは物を隠されたり、陰口を言われたり、そんな程度だった。でも半年前からどんどんとイジメが酷くなっていって、今では学校の屋上でよく…
「おい研人ぉ、立てよ、へばってんじゃねーぞ?…おい!!」
「あーあー、お前やりすぎだよ、見てみ、おねんねしちまったぜ?」
「しゃーねーなぁ、これで、起きるだろ。オラァ!!」
 ドスッ!と僕の腹に蹴りが入る。痛い。でもまだマシな方だ…。でも、限界だ。僕はもう耐えられない…。
「…あ?なんだ?この石?」
 石…石?…まさかっ!
「か、返せ!それは僕の大事な!」
「大事な?なんだ?」
 僕の大事な石だ!…その言葉が出ない。あの石は小さい頃に、そう、まだ父さんと母さんが生きていた時に、買ってもらったダイヤモンドを模して作られた人工の石。たったひとつの大事な大事な形見同然の石。…でも…
「あ…ぅ…」
「…はぁ、おもんねーなぁ、…そうだ!返してやるよ。ほぉれ、とってこーいっ!!」
「えっ…!?」
 ポイッと投げられた石は学校の屋上から外へと放物線を描きながら飛んでいく。
 僕は…僕は…!
「ギャハハハハ!見ろよ!アイツ屋上から飛び降りやがっ…た……え?」
「マ、マジかよオイ!嘘だろぉ!?」
 …飛び降りていた。石のために。だが、石には手が届かない。
 あぁ…落ちていく、落ちていく…
 でも、これでよかったんだ。もうイジメられない。辛い思いをしなくていい。
 さよなら、僕。さよなら、世界。
………。
 怖い。死ぬのが怖い。
 嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
 怖い!怖いよ!死にたくない!
「嫌だあぁ!うわあぁぁぁ!!」
 そうして、僕は死を迎えた
 そう、その筈だった…。
 暖かい…なんだろう?ふかふかのベッドみたいな…。いい匂いもする…シチュー?
  ムクリと起き上がると僕はふかふかのベッドにいて、周りは、見たことない装飾がなされた…家の中?そして近くの大釜はグツグツとシチューが煮込まれている。でも、中の具は何だろう?ニンジン?にしては変な色だし、こっちの肉は…?
「おう少年!起きたかの?」
「うわあっ!」
 ビックリして後ろを見ると、白いヒゲをモジャモジャと蓄えて、見た目はおとぎ話の魔法使いなおじいさんが、ゴツゴツした杖をつきながら立っていた。
「すいません!あの!勝手にお邪魔したんじゃなくて!その!えっと!」
「あぁ、よいよい。ワシが君を運んだんじゃよ。気分はどうかね?」
「え…そう、なんですか?」
「ああ、そうとも。お、シチューがええ具合じゃな、食べるか?えー、あー…少年、名前は?」
おじいさんがシチューを木の皿に注ぎ、僕へ差し出す。
「僕は…風信 研人と言います…えっと、いただきます」
「…ほう…なるほどなぁ…もしかして『君も』…」
「え?」
「ああいや、こっちの話じゃよ、あー、そうじゃ!ワシの名前はノールド、ノールド・トラヴィスじゃ。…シチュー、美味いぞ」
ノールド?外国人なのか?
その老人に言われてズズッとすすると、
「あっ、美味しい…!」
「そうじゃろそうじゃろ!グリーンラムの乳と肉がいいアクセントになっておるんじゃよ!」
 普通のシチューよりもちょっと胡椒っぽいけれど、それでいて濃厚でクリーミーな舌触りがたまらない…!
「フホホ!ほぉれ、このパンをシチューに浸してみるんじゃ、更に美味いぞぅ?」
うわあ…!このパン、さわやかなハーブの香りがする…!シチューに浸したら、どんな味がするんだろう!
……………
………
…
どのくらいの時間が経っただろう
「して、ケントよ…げふっ…」
「は、はい…うぷっ…」
 ついつい食べ過ぎて、しまった…
 五右衛門風呂ほどの大釜の中のシチューは空っぽになっていた。
 そんな満腹の状態でノールドはこう聞いてきた。
「お前さん、どっから来たんじゃ?」
ど、どっからって…
「…え、えーと、そのぉ…」
……………
………
…
「ふむ、日本…のぅ…」
「…は、はぁ、変ですか?」
「うむ、ケントよ、残念ながらそんな国や地名は、『存在しない』ぞ」
「…え…」
 今…なんて…?
 ない?存在、しない?
 僕がポカンとしていると
「…新王暦79年、花の月、21日…」
「な、なんです…?その暦…」
「やはりか、今の年や月日を知らぬ、その名、その出で立ち…」
(そして、あの地に倒れていたこと…)
 ノールドが神妙な面持ちで僕を見る、そして…
「いいか?ケントよ、ここはお前さんの世界ではない。いわゆるここはお前にとっては異世界じゃよ、い・せ・か・い。お分かりかの?」
え……
「ええぇぇぇぇぇぇ!?」
 衝撃の事実でした。
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