先生! その異世界小説、間違いだらけですやん!
なぜ、銃がないのに甲冑があるのか?
宿は最初の都市で宿泊したものよりか、少し大きめのものになっていた。が、構造そのものには差はない。
木造の2階建てだった。日本のホテルとかだと、やたらとシャレていて緊張する。だけど、異世界の宿屋は使われてる家具はすべて木材だし、田舎臭くて入りやすい。カウンターテーブルも丸太を両断したようなものだ。
まだ2つ目の宿だ。1つ目の宿代が5ゴールドだった。先生のゲーム理論でいくと、どうせ10ゴールドから20ゴールドぐらいで泊まれるだろうと思った。
しかし、だ。
「300ゴールドになります」
と、宿主は平然とした顔でそう言った。
「さ、さんびゃく!」
「はい。300ゴールドになります」
「いや、冗談キツイですって。いくらなんでも300はないでしょう」
ダンジョンやら何やらを通過してきたおかげで、スライムからお金を奪い取ってきた。それでも100ゴールドにも満たない。
「びた一文ともまかりません。300ゴールドです」
と、やさ男っぽい青年の店員はニコニコしながらそう言ってきた。
「ま、また後で来ます」
と、言い残して、ひとまずその場を辞した。
宿から出る。先生のことを裏路地に連れ込んだ。木造の壁にはさまれた細い通路で、ひと気はなかった。
「先生。どないなってるんですか」
「何が?」
「何がって、最初の都市は5ゴールドで宿泊できましたやんッ。なんでイキナリ300ゴールドなんですか。295ゴールドも値上がりしてますやんッ!」
「それはドメくんが、都市ごとに宿の値段が違うなんて変だって言ったからじゃないか。だったら一律のほうが良いかと思ったのだ」
そうか。
スライムが飼育されるようになったのと同じ原理だ。先生が納得してしまったから、宿の値段も変化してしまったのだろう。
「たしかに一律のほうが理にかなってるとは思いますけど、そんな急に値段高騰したら困りますって」
オレたちも泊まれない。
「ならば、稼ぐしかあるまい」
「いや、戻してくださいよ」
「そんなこと言われても、私もどうやって変更したのか、よくわからないのだ。それに一律のほうが筋が通っていて良いではないか」
ダメだ。
1度、納得させてしまったら、もうその状態になってしまうらしい。余計なことを言わなけりゃ良かった。
「えぇー。オレもうモンスター倒すなんて厭ですよ。どうせ、都市を移動したから、スライムより強いモンスターが出現するんでしょう」
「ほぉ。よくわかったな。この辺りでよく出てくるのはゴブリンだ」
スライムはまだ良かった。単細胞物っぽいし、言ってしまえばゾウリムシが大きくなったような感じだ。
ゴブリンとなったら別だ。イキナリ哺乳類に進化した。ゴブリンは哺乳類で合ってるよな? しかも知能だってあるだろう。率直に言ってしまえば、勝てる自信がない。
「やれやれ、これだから最近の若者は。みずからを鍛えて戦おうという意思はないのか」
「鍛える言うたかって、1日2日で強くなれるわけやないでしょ」
オレのことを若いと言うが、先生だって若い。
「今、何ゴールドたまっているのだ?」
「89ゴールドです」
「武具屋に行けば、剣と防具を買えるぐらいの値段になる。装備を整えれば、モンスターも怖くなかろう」
「あ、たしかに」
それは一理ある。
武具屋に来た。
他の建物とは違って、いかめしい石造りの建物だった。中に入るとスキンヘッドの大柄な人物が、「らっしゃいッ」と声を張り上げた。いかにもって感じだ。
剣やら槍。あとモーニングスターとか、フレイルなんかが壁にかけられていた。
「おぉー」
感嘆の吐息が漏れた。
強そうだ。
ただ……。
「先生?」
「なんだね。ドメくん」
「甲冑が置いてますけど」
いかにも重厚な甲冑が、武具屋の中央で鎮座ましましておられる。
「別に変ではなかろう。まさに異世界の騎士って感じではないか」
たしか地球で、プレートメイルとか、プレートアーマーが登場したのは、銃に対抗するためだ。銃のないこの世界には不必要ではないかな――と思った。こういった類いの鎧は、30キロ前後はするものだから、滅多に着るようなものではない。
まぁ、モンスターがいるみたいやし、こういう類いの防具があっても変ではないかと納得しておいた。あんまり突っ込むと、先生に頬をつねられそうだ。
ためしにバスタードソードを手に取ってみた。かなり重たいけれど、振れないことはない。水の入った2リットルのペットボトルよりも少し重たい程度だ。これがあれば、ゴブリンとも戦えそうな気がしてくる。値段を見てみる。1200ゴールド。
「高けェーッ」
思わず叫んでしまった。
スキンヘッドのクマみたいな店員がギロリと睨んでくる。しかも、怖ろしいことに、その店員は片目に傷が入ってる。山本勘助みたいな顔だ。迫力がある。
オレはあわてて顔を伏せた。あんまり余計なことは言わないほうが良さそうだ。ところが、先生が黙っちゃいなかった。
「高いなー。1200ゴールドだって。こんなナマクラが1200ゴールドだって。笑ってしまうではないか」
「せ、先生っ」
あわてて先生の袖を引いた。
店員の顔が真っ赤になってる。
これ以上怒らせたら、ヤバそうだ。スライムなんかよりも何倍も強そうな外見をしている。お前が魔王を倒して来いよって感じの風貌だ。
「ははははッ。見たまえ、ドメくん。こっちの槍なんかただの木の棒じゃないか。これで100ゴールドだって。ぼったくりだなッ。しかもこっちは木の帽子だ。木製の帽子ってどうなんだ?」
「しーっ。静かにしてくださいって。あの店員、めっちゃ怒ってますねんって」
っていうか、この店の商品だって先生が設定したんやろうに。
「なに。あのハゲアタマか?」
それがトドメになったようだ。
スキンヘッド店員は石造りのカウンターテーブルを叩きつけていた。
「そこの客ッ」
「は、はいッ」
スキンヘッド店員がカウンターテーブルを乗り越えて迫ってきた。近づいてきたら、さらに大きく見える。3メートルぐらいあるんじゃないだろうか。もはや巨人のレベルだ。
「さっきから好き勝手言いやがって。うちの店に文句でもあるンかッ」
「いえ」
店員にコンコンと説教された。なぜか先生だけは許されて、オレが叱られるハメになった。
先生、美人やもんな。外見が美しいってのは得だ。
武具を買うことを許された。木の盾と皮の鎧と銅の剣を買った。銅だとチョット頼りないが、切れ味が良ければ鉄だろうが、銅だろうが、なんでも構わない。ようやくヒノキの棒から卒業できる。
木造の2階建てだった。日本のホテルとかだと、やたらとシャレていて緊張する。だけど、異世界の宿屋は使われてる家具はすべて木材だし、田舎臭くて入りやすい。カウンターテーブルも丸太を両断したようなものだ。
まだ2つ目の宿だ。1つ目の宿代が5ゴールドだった。先生のゲーム理論でいくと、どうせ10ゴールドから20ゴールドぐらいで泊まれるだろうと思った。
しかし、だ。
「300ゴールドになります」
と、宿主は平然とした顔でそう言った。
「さ、さんびゃく!」
「はい。300ゴールドになります」
「いや、冗談キツイですって。いくらなんでも300はないでしょう」
ダンジョンやら何やらを通過してきたおかげで、スライムからお金を奪い取ってきた。それでも100ゴールドにも満たない。
「びた一文ともまかりません。300ゴールドです」
と、やさ男っぽい青年の店員はニコニコしながらそう言ってきた。
「ま、また後で来ます」
と、言い残して、ひとまずその場を辞した。
宿から出る。先生のことを裏路地に連れ込んだ。木造の壁にはさまれた細い通路で、ひと気はなかった。
「先生。どないなってるんですか」
「何が?」
「何がって、最初の都市は5ゴールドで宿泊できましたやんッ。なんでイキナリ300ゴールドなんですか。295ゴールドも値上がりしてますやんッ!」
「それはドメくんが、都市ごとに宿の値段が違うなんて変だって言ったからじゃないか。だったら一律のほうが良いかと思ったのだ」
そうか。
スライムが飼育されるようになったのと同じ原理だ。先生が納得してしまったから、宿の値段も変化してしまったのだろう。
「たしかに一律のほうが理にかなってるとは思いますけど、そんな急に値段高騰したら困りますって」
オレたちも泊まれない。
「ならば、稼ぐしかあるまい」
「いや、戻してくださいよ」
「そんなこと言われても、私もどうやって変更したのか、よくわからないのだ。それに一律のほうが筋が通っていて良いではないか」
ダメだ。
1度、納得させてしまったら、もうその状態になってしまうらしい。余計なことを言わなけりゃ良かった。
「えぇー。オレもうモンスター倒すなんて厭ですよ。どうせ、都市を移動したから、スライムより強いモンスターが出現するんでしょう」
「ほぉ。よくわかったな。この辺りでよく出てくるのはゴブリンだ」
スライムはまだ良かった。単細胞物っぽいし、言ってしまえばゾウリムシが大きくなったような感じだ。
ゴブリンとなったら別だ。イキナリ哺乳類に進化した。ゴブリンは哺乳類で合ってるよな? しかも知能だってあるだろう。率直に言ってしまえば、勝てる自信がない。
「やれやれ、これだから最近の若者は。みずからを鍛えて戦おうという意思はないのか」
「鍛える言うたかって、1日2日で強くなれるわけやないでしょ」
オレのことを若いと言うが、先生だって若い。
「今、何ゴールドたまっているのだ?」
「89ゴールドです」
「武具屋に行けば、剣と防具を買えるぐらいの値段になる。装備を整えれば、モンスターも怖くなかろう」
「あ、たしかに」
それは一理ある。
武具屋に来た。
他の建物とは違って、いかめしい石造りの建物だった。中に入るとスキンヘッドの大柄な人物が、「らっしゃいッ」と声を張り上げた。いかにもって感じだ。
剣やら槍。あとモーニングスターとか、フレイルなんかが壁にかけられていた。
「おぉー」
感嘆の吐息が漏れた。
強そうだ。
ただ……。
「先生?」
「なんだね。ドメくん」
「甲冑が置いてますけど」
いかにも重厚な甲冑が、武具屋の中央で鎮座ましましておられる。
「別に変ではなかろう。まさに異世界の騎士って感じではないか」
たしか地球で、プレートメイルとか、プレートアーマーが登場したのは、銃に対抗するためだ。銃のないこの世界には不必要ではないかな――と思った。こういった類いの鎧は、30キロ前後はするものだから、滅多に着るようなものではない。
まぁ、モンスターがいるみたいやし、こういう類いの防具があっても変ではないかと納得しておいた。あんまり突っ込むと、先生に頬をつねられそうだ。
ためしにバスタードソードを手に取ってみた。かなり重たいけれど、振れないことはない。水の入った2リットルのペットボトルよりも少し重たい程度だ。これがあれば、ゴブリンとも戦えそうな気がしてくる。値段を見てみる。1200ゴールド。
「高けェーッ」
思わず叫んでしまった。
スキンヘッドのクマみたいな店員がギロリと睨んでくる。しかも、怖ろしいことに、その店員は片目に傷が入ってる。山本勘助みたいな顔だ。迫力がある。
オレはあわてて顔を伏せた。あんまり余計なことは言わないほうが良さそうだ。ところが、先生が黙っちゃいなかった。
「高いなー。1200ゴールドだって。こんなナマクラが1200ゴールドだって。笑ってしまうではないか」
「せ、先生っ」
あわてて先生の袖を引いた。
店員の顔が真っ赤になってる。
これ以上怒らせたら、ヤバそうだ。スライムなんかよりも何倍も強そうな外見をしている。お前が魔王を倒して来いよって感じの風貌だ。
「ははははッ。見たまえ、ドメくん。こっちの槍なんかただの木の棒じゃないか。これで100ゴールドだって。ぼったくりだなッ。しかもこっちは木の帽子だ。木製の帽子ってどうなんだ?」
「しーっ。静かにしてくださいって。あの店員、めっちゃ怒ってますねんって」
っていうか、この店の商品だって先生が設定したんやろうに。
「なに。あのハゲアタマか?」
それがトドメになったようだ。
スキンヘッド店員は石造りのカウンターテーブルを叩きつけていた。
「そこの客ッ」
「は、はいッ」
スキンヘッド店員がカウンターテーブルを乗り越えて迫ってきた。近づいてきたら、さらに大きく見える。3メートルぐらいあるんじゃないだろうか。もはや巨人のレベルだ。
「さっきから好き勝手言いやがって。うちの店に文句でもあるンかッ」
「いえ」
店員にコンコンと説教された。なぜか先生だけは許されて、オレが叱られるハメになった。
先生、美人やもんな。外見が美しいってのは得だ。
武具を買うことを許された。木の盾と皮の鎧と銅の剣を買った。銅だとチョット頼りないが、切れ味が良ければ鉄だろうが、銅だろうが、なんでも構わない。ようやくヒノキの棒から卒業できる。
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