LINE 弁護士

奥嶋光

LINE ジャブからのファイト

翌日私は考えた末にLINEしてみる事にした、悩んだのはSNS上とはいえ友達として繋がる事に抵抗を感じていたからだ。
しかしよくよく考えると事務所への固定電話に電話するのも面倒臭いし、外出していて繋がらないなど不便な事もある。
こっちもいちいち時間を取られるのでLINEの方が都合が良いと思ったのだ。
そしてiPhoneを取り出してLINEを開くと、お友達かもと表示されている彼の公式アカウントを友達に追加してみた。
あっさりと鈴本の公式アカウントと友達になった、初球何から入ろうか。
ようし、まずは牽制から入ろう、ボクシングだって左を制する者は世界を制するって格言があるしね。緊張気味の私は色んなスポーツがごっちゃ混ぜになっていた。

私・謝罪文と書類見ました。しかし家内は難色を示しています、だいたい加害少年の反省文は何ですか、同情を買うような文章で自分に酔っているんじゃないですか?

ポッ。投下してやったぜ、さてどう返してくるか。何時間かしてからレスが来た、私はすぐに見た。

弁・ご連絡ありがとうございます。そうですか、奥様はその後如何ですか?謝罪文は彼がまだ未熟な少年という事もあって至らない内容だったと思いますが彼なりに反省はしております。

私が最初のレスを読んでると既読が付いたのか、その後連発で来た。ポッ ポッ。

弁・【20万を並べた画像】
弁・もう加害者側から受け取っていて直ぐにでも送金できる状態です。

電話の時よりもLINEの時の方が素直な印象を受けた。
やっぱり最近の若い子は自分の語りとか喋りよりメールとかメッセージの方が正直な気持ちを伝えられるのかなと思った。
しかし画像で釣ろうってのか、万札並べた写真送るなよ。(笑)人によっては怒る人もいるんじゃねえの?私は不覚にも笑ってしまった。
しかし画像で送った方が用意した賠償金の重さを感じさせる事ができて効果があるのかもしれない、私は納得してしまった。

私・家内はまだショックを受けていて外出もままならないんです、この前の電話でお話しした後、弁護士に相談しました。やはり20万という金額ではとてもこっちの損害に見合わないですね。
私・それと身元を明かさない人とはこういう話し合いもできません、住所と電話番号も教えて下さい。

警察からは加害少年の名前しか聞いておらず、両親の名前も謝罪文で知った私達はその他の情報は知らなかった。
民事訴訟する時の材料の為に少しでも情報が欲しかった。
交渉人私は突き放す、ポッ ポッ。

弁・そうなんですか、申し訳ございません。依頼人の情報は勝手に教える事ができないんです、今は賠償の話でそれは必要ないと思うのですが。
具体的にはいくら位が妥当だと思われますか?

すぐレスが来ると、そうヒアリングされた。

私・現段階でこちらから金額を言うつもりはありません。損害がトータルでいくらになるか分かりませんし。

弁・そうですか、示談相場だとこの金額が妥当だと思われますので20万円のご提案をしたのですが。
弁・完全に許す示談とかではなくて、あくまで損害の一部として受け取って頂けませんか?

ポッ ポッ 連発された。

私・一部でも受け取ったら処分が軽くなるでしょ、身元も明かさない人から20万も受け取るつもりはありません。
私・こっちは引っ越しとか考えてるし、嫁が家事できないからその分の休業損害とかもあるよ、20万じゃ話にならない。
私・加害少年がお金無いのは分かるけど、両親は申し訳ないと思ってるなら賠償金用意できないんですか?

私は負けじと3連発で返してやった、ポッ ポッ ポッ。

弁・そうですか。実は加害者側がお金が無い家でして…。

何だそりゃ、そんなん言ったら我が家だって裕福ではない。

私・お金が無い?生活保護とかなんですか?

弁・そういう訳じゃないんですが… 裕福な家庭ではなくてですね。

私・ちゃんと働いてるんでしょ?それなのにお金が無いというのはどういう事ですか?
私・もしかして賠償する意思が無いという事ですか?

私は連打で畳み掛ける、ポッ ポッ。

弁・そういう訳ではないんですが、現段階ではこれがやっとなんです。

私・そうですか、じゃあなんとか工面するしかないですね。こっちだって何百万とかを払いなさいと言ってる訳ではない。
私・ところで貴方は依頼人とか交渉相手とよくLINEでやり取りするんですか?確かに電話より便利だ。

話が平行線になってきたし、合意する気もないので気になってた事を聞いてみた。

弁・分かりました、依頼人に相談してみます。
弁・そうですね。了承を得た場合のみですけど。電話だとタイミング合わない時もありますし、LINEの方が空いた時間で観れて早いですしね!

文章の最後の方、何テンション上がってるんだ。(笑)私は鈴本と気持ちが通じ合った気がした。

私・確かに便利ですね、まだ合意出来ないから加害者側に聞いといて。
私・合意出来なかったら民事訴訟で請求するから宜しく!またね。

飽きた私は切り上げる事にした、ポッ ポッ。

弁・分かりました、ご連絡ありがとうございました。

こうして鈴本との第2ラウンドが終わった。しかし第1ラウンドの電話でのやり取りより遥かに精神的な負担は軽減された。
成る程、こりゃ良いわ。やるなアイツ、出来るっ!!
私は敵ながらあっぱれと認めてしまった。

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