腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが 特別編 〜美少女転校生と始める学園生活〜

けん玉マスター

36話 辛い時こそ声を大にして

ピンポーン…
ミーシェは優の家に行きインターホンを鳴らす。
「…ユウー、いる…?」
しかし返事はなかった。
「ちゃんとご飯食べてる?」
いるかも分からない優にミーシェは呼びかけた。
「お弁当作ったから…ポストの中に入れとくね?…じゃあ…また明日来るから…。」
ミーシェはアパートの階段を降り帰って行った。


「…」
優は何もすることなくただボーッとテレビを見ていた。
ぐぅー…
「…腹減った…。」
何故人間は何もしていないのに腹が減るのだろうか?
ユウは冷蔵庫を開けた。
「…何も無い…。」
そう言えば先程ミーシェが来た時にお弁当を作ったと言っていた。
優は外に行きポストを開けた。
そこにはランチバッグに入ったお弁当があった。
「これか…。」
優は早速頂くことにした。
「…ハンバーグ…タコさんウィンナー…」
どれも優の好物だった。
一口口に運ぶ。
「…」
煮物、ポテトサラダなど、バランスの取れたお弁当だ。
「…美味い…。」
懐かしい味だ。
「…くそ…こんな所まで…こんな所まで母さんに似てんじゃねぇよ…!」
ミーシェのお弁当の味は優の母親の味に似ていた。
「…母…さん…!」
母のことを思い出すとどうしても脳裏にあの男の顔がよぎる。
「っ…!…くそ…!」
優は忘れるようにお弁当をかき込んだ。


さらに1週間が経過した。
夏休みもそろそろ終盤である。
「陸くん、今日はありがとね。」
「いや、いい。君だけで行かせるのもあれだからな。それに優のことは僕も心配だ。」
この日は2人で優の元に行くことにした。

アパートの階段を登る。
「ユウ…居るかな…。」
「どうだろうね…。」
ドン…
「おっと…。」
何かにつまづく。
「…なんだ?…!…優!」
「え?ユウ?!」
そこには傷だらけの優が座っていた。
「ユウ!しっかりして!」
「優…救急車を…」
ガシ…
「…余計なことすんな…。」
「!…優…。」
「どうして…こんな…。」
「ちょっと…転んだだけだよ…。」
「何言ってるんだ!転んだだけでこんな…。頭から血が出ているじゃないか?!」
「とにかく1度家に入ろ?」
「…鍵…どっかいっちまった…。」
「僕は大家さんを呼んでくる。ミーシェ、優のこと頼むぞ。」
「う、うん!」
大家さんに鍵を貰い家の中に入る。
優の肩を持ちベッドの上に寝かせた。
「ははは…後ろから…バットくらっちまった…。」
「っ…」
「…やっぱり喧嘩したんじゃないか…。少ししみるが我慢しろよ?」
「陸くん、私何か作る。」
「ああ、ありがとう。」
「ユウ、キッチン借りるから。」


「じゃあ僕はこれで帰るが…何かあったらすぐに連絡してくれ。」
「うん…ありがとう、陸くん。」
「…優…またな…。」
「…」


「ユウ…食べれる?」
「…後で食うって。」
「でも…。」
「…しつけぇよ…。」
「…ごめん。」
「…」
「ユウ…今日ね、陽だまり園に行ってきたの。」
「…」
「園長先生から、ユウの過去について聞いた。ユウがお父さんに会ってこんなことになったのも…。」
「…」
「ちゃんと…食べてくれたんだね…お弁当。」
「ああ…。」
「…私…凄い無責任なこと…言ったよね…。」
「…」
「ユウの気持ちも考えないで…本当に…ごめん…。」
「っ…謝ってんじゃねえよ…。」
「ユウ…。」
「同情のつもりか?」
「私は…ユウの気持ちは…分からない…。」
「だったら…!」
ミーシェはユウを抱き寄せる。
「!」
「ユウ…泣いて…ないでしょ?」
「っ…!」
「私には…ユウの気持ちに寄り添ってあげることは出来ない…。ユウの心も分からない。でも…辛いのは分かる…。」
「…」
「ユウのお父さんのことは…私も許せない。でも私がどうこう言っていい話じゃない。」
「…ミーシェ…。」
「だから…聞かせて?ユウは…溜め込みすぎなの。優しいから…全部1人で背負っちゃう。辛いことは…吐き出さなきゃ…。」
「っ…う…あ…」
「泣いて…いいんだよ?」
優の中で詰まっていたものが涙となって溢れ出す…。
「っ…ぅ…あぁぁぁ!…うっ…ああああああああぁぁぁ!」
「…」
優はミーシェにしがみつき押し殺そうとしても押し殺せず、声を上げ泣いた。
「…ダメ…なんだ…!親父の顔がチラつくだけで…殺意が湧く…。もう…どうでも良くなるんだ…!」
「そう…。」
「…今までの…俺の苦労は…なんだったんだよ!全部無駄だったんだ!…俺は…親父のこと…本当は…信じてたんだ…!なのに…なのに…!」
「辛…かったよね…ユウ…。」
「っ!…うっ!…うっ!…」
「でもね、ユウ。ユウのやってきたことは…絶対無駄なんかじゃない。…私はユウのおかげで助けられた。キャンプでもユウのおかげでみんな楽しかった。バイクに乗れたのも…ユウのおかげ。」
「…ミー…シェ!」
「だからね、無駄なんて言わないで?ユウがやってきたことは…全部誰かの役に立ってる。その力は…誰かを守るために使って?自暴自棄にならないで?絶対…無駄なんかじゃないから…!」
「…っ…う…ううっ…」
「そうやって自分を責めて…お姉さんが助けてくれたユウの人生を…棒に振るっちゃダメ…。ユウは…お父さんに…認めてもらいたかったんでしょ?」
「!」
「だったらこれからは…自分のために…生きて?私…またユウのバイクに…乗りたいよ?」
「…ミー…シェ…」
「何度だって言う。ユウのやってきたことは絶対無駄なんかじゃない。誰かのためにも…自分のためにもなってるじゃん。お父さんのことで辛くなったら…私や陸くんに言って?話を聞くことしか出来ないけど…。」
「…ありがとな…ミーシェ…。」
「ユウ?」
「…あんなクソ親父がなんだってんだ…。なんかもう…馬鹿らしくなってきた…。あとは俺のやりたいように生きてやる…。」
「ユウ…!」
「でも…やっぱりダメだ…。ミーシェ…。」
「え?」
「うっ…うわぁぁぁ…!」
ユウはミーシェに飛びつく。
「え?ちょ!ユウ…?」
「ありがとう…!、…ミーシェ…!」
「ふふふ…。」
「…くー…くー…」
「え?」
優は寝息を立て始めた。
「嘘…でしょ?」
「ぐー…ぐー…」
「…泣き疲れちゃった?…しょうがないなぁ…おやすみ…。」
ミーシェは優の頭を優しく撫でた。
「ふあぁ…私も…眠いな…。」


優の部屋のドアが開く。
「…なんだ、心配になって見に来てみれば…。」
そこには仲良くひとつのベッドで寝る優とミーシェ。
「流石はミーシェ…だな。今回僕は見てるだけでも何とかなったかもな。」
陸はユウの部屋を後にした。


「っ…いてて…。」
優は体の痛みで目を覚ました。
「そう言えば…バットで殴られたんだったな…。…ん?」
優は横に目をやる。
「スー…スー…」
「!?…え?」
心地よい寝息を立てるミーシェ。
「&#¥'¥/=’"+*=!」
よくわからない音を出す優。
「スー…スー…」
待て!落ち着け…落ち着いてよく考えるんだ…。昨日は確か…ミーシェに慰めてもらって…あ、俺そのまま寝たんだ…。あれ?でもなんでミーシェが…まさか…
「…どこでも寝んなぁ!?おいぃ!?」
「ん?…あれ?ユ、ユウ?」
「お、おはよ。」
「え?…え?」



学園生活とかタイトルにつけときながらほとんど夏休みですね…w
ちょっと本編が今、案がまとまってなくて…。
今日こっち2話でもいいですかね…?
次回1話やってから学園編に戻ります!

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「腹下したせいで1人異世界転移に遅れてしまったんですが 特別編 〜美少女転校生と始める学園生活〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • かつあん

    ミーシェいいこと言った!

    ...言われてみれば、夏休み編が多いですねー...

    1
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