一台の車から

Restive Horse

18.ホンダスポーツ (ホンダ S800)

その車は気持ちよく流していった。

休日の日に買い物に出かけた帰りだ。
夏の暑さが和らいできたが、日本より高緯度なフランスで設計された2cvでは、まだ暑く感じられる。
そんなとき2cvの後ろで路地から一台の赤い車が左折してきた。
2cvの小さなミラーでみてみると、そこにいたのはホンダS800だった。
S800は幌を開けていて、2cvの左をすり抜け抜いていった。




ホンダS800。
通称エスハチ。
ホンダ技術研究所が始めて作った四輪車、ホンダS500の排気量を800ccまで拡大した車だ。
ホンダは四輪に進出する前は二輪車を製造していた。
しかし、特定産業振興法案が出されると、四輪車への進出ができなくなる危機感を感じ、本田宗一郎は慌ててS500というスポーツカーを1963年に作り上げた。

S500は二輪車で培った技術を惜しみなく使った。
リアの駆動にはチェーンを用いることで四輪独立とした。
エンジンは超高回転型で、レブリミット11000rpmまで一気に回った。
しかし、500ccでは排気量が小さすぎたため、600cc、800ccと拡大していった。

800ccのエンジンを搭載するS800でも、スポーツカーを通り越し、レーシングカーのようなフィーリングが味わえた。
S500のと変わらないが、直列四気筒にキャブレターを四つ搭載していた。
レブリミットは9000rpmまで落としたがトルクがあるため、S500よりも扱いやすくなっていた。

各地で開催されていた草レースでもS800は大活躍をした。
S800のライバルは同じ800ccのエンジンをもつトヨタスポーツ800、通称ヨタハチだ。
ヨタハチは軽さと空気抵抗の少ないボディを持っていて、パワーのエスハチと軽さのヨタハチだった。

後にS800の後継機として、ビート、S660がある。
だが、私は本当の後継機はS2000のような気がする。
FRレイアウトによく回るエンジン。
さらには、オープンカーだ。
最近では次のS2000を考えているようだが、ミッドシップ+ターボにするらしい。
本田宗一郎がいたらなんと言っていたのかとても気になるところだ。




僕は2cvをガレージに入れて、

「回してなんぼのホンダに戻らないかな。」

なんて言いながら鍵をしめた。

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