アルザリア

むでる

第6話 夢

前回

 ヒール草収集の依頼を受け街の近くにある森へと向かい。無事に依頼品を収集し終える。街に帰る途中、魔物に襲われている一行がいた。助太刀をしその一行を助ける。そして街に戻り、依頼を達成したのであった。

*******************

 猫の陽だまり亭に着き、中に入る。
「女将さーん、いらっしゃいますかー?」

「はーい。いらっしゃいって・・・おや?」

 宿の受付の前で呼ぶと奥から女将がやってきた。

「すみません、遅くなりました。とりあえず1泊でお願いします。」

「はいわかったよ。じゃあ、この宿泊名簿に名前を書いておくれ。あとこれが205号室の鍵だよ。部屋は階段を上がって廊下の中程にあるからね。夕食を食べるんなら、そこから食堂に来ておくれ。」

 銀貨2枚を渡すと、女将は鍵を渡しながら階段近くにある食堂入り口に目配せして言う。鍵を受けとり、お腹も空いたし夕食を食べてから部屋に行こうかと考えた。

「先に夕食を食べようと思います。」

「そうかい。料理を頼むときは中にいる給仕に声掛けておくれ。あと料金は料理を頼んだときに出しておくれ。」

「分かりました。」

 そう言って食堂へ向かう。中に入ると何人か食事を食べていた。どこの席に座ろうかと思っていると、ちょうど壁際のテーブル席が空いていたのでそこに座ることとした。席に着くと誰かが近づいてきたのでそちらを見る。近づいてきたのはラスカであった。

「お兄ちゃん泊まってくれたんだね!何食べるの?」

「あぁ、ラスカちゃんか。まあ何とか泊まれた感じだけどね。何かオススメはあるかい?」

「んー・・・ニードルラビットのステーキがオススメだよ!飲み物はどうする?」

 聞くと何にしようかと考えているのか目を瞑っていたが少し考えた後、そう言った。ならそれにするよと言って飲み物は水にした。当然ながら20歳を過ぎていないため酒を飲む考えはなかった。先に銅貨5枚もらうね、と言われ銀貨1枚を出しお釣りとして銅貨 5枚受け取った。じゃあ食事が来るまで待っててね~、と言いながら厨房へと向かった。周りを見回してみると、オススメのと言われた料理なのかわからないがステーキを食べている人が多かった。聞いたおいてよかったと思いつつ、料理が運ばれてくるのを待った。

 少しするとラスカがジュ~っと音をたてたステーキを運んできた。

「お兄ちゃんお待たせ~。また追加するときは呼んでね~」

「わかったよ。ありがとね。」

 ドンッと料理がテーブルに置かれ、そう返事をするとラスカは引き続き給仕の仕事に戻っていった。どうやら料理はセットだったらしく、ステーキの他に黒パンとスープがついていた。
 いただきます、と手を合わせるとまずステーキから食べ始めた。ステーキ切って口に入れると、うまい・・・、と呟いた。ラビットとだからもっと淡白な味かと思っていたが、予想とは違い肉汁がすごくあり、牛肉に近い感じであった。スープも飲んでみるが、塩が効いている味で入っている野菜の甘みが引き出されていた。黒パンはちぎってスープに浸して食べると、柔らかくなり美味しかった。

 気がつくと料理がなくなっており、物足りなかったためラスカを呼び、おかわりを頼んだ。お代わりした料理も食べお腹が膨れたところで、ご馳走さまでした、と言って席を立つ。 食堂入り口まで行くと近くにいたラスカに、ご馳走さま、と一言言ってから食堂を出た。 階段を上り部屋の前まで行く。鍵を開けて中に入ると、ベッドに小さな机と金庫のある質素な部屋であった。まあ寝るだけだしこんなものかと思いつつ、ベッドに横たわるとすぐに眠気が襲ってきてそのまま寝てしまった。


 ——————「こ・・・ちは・・・き・・・だい・・ぶ?」

 徐々に意識がはっきりしてきて、誰かが喋っているのが聞こえてくる。

「おっと?起きたかな?おはよう、榊遊星君」

「ん・・・もう朝なのか」

「なに寝ぼけてるのさー。さぁ、起きた起きた!!」

「・・ん?お前・・・誰だ?って、ここどこだよ!?」

 目を擦りながら起き上がり、周りを見ると白い風景がどこまでも続いている。それに俺の目の前には髪の短い小学生くらいの少年が俺を見ていた。

「あぁ、まずは自己紹介するね。僕は——『ザーッ』——神。この世界———『ザッ』——『ザザッー』——神さ。いゃーいきなり寝てるとこ呼び出してごめんね。」 

「え?何神?聞こえなかったんだが・・・・・・・・本当に?」(こんなチビなのに神様なのか!?)

「む?チビとは失礼な。まあ疑うのもしょうがないか・・・もちろん本当に神様さ。」

 ノイズで聞き取れなく、聞き返したが流される。

「!?」(口に出してないのにばれてるだと?!)

「うん。君は口に出してない、そうゆうの読み取れるんだよ。僕には隠し事が通じないからねぇ~」

 思考を読み取られ驚いていると笑いながら神がそう言う。

「っていうか俺、宿で寝てたんじゃ??」

「あ~、訳あって精神だけ僕の部屋に呼び出しているんだよ。」

「はぁ~そうなんですか・・・それで?なんとかの神様が一体何の用で?」

 頭を掻きながら何の用件か聞くと、神はコホンッ、と1つ間を置いてから答えた。

「いやー。君・・・死んじゃったんだよ」

「・・・そうなのか」

「なんかすごく落ち着いているね。」と苦笑いする。

「まあ普段から考えることが多かったからな。」

「そうなんだ・・・それはご苦労様だね。あと言い方が悪かっただけど、一応あっちの世界の君は死んではいないんだ。実はゲームの世界に入った後、強盗が家に入っていてね、危険だったから君がやっていて・・・えーっと・・・そう!アルザリアオンラインだったね。それに近いこの世界に転移してもらったってわけだよ。」

 神に労われたなぁ~と思いつつ、質問をした。

「そうだったのか。でも転移した直後、ゲームと同じ装備とかだったけどそれもあなたが?」

「そうだよー。何も言わず転移させたお詫びかな。ゲームで出来ていたことはほとんどできるよ。あと、オマケで3つ僕からプレゼントさせてもらったよ。1つ目は創造魔法。これは簡単に言うと色々できる魔法ってとこかな。2つ目は、ステータス見てもらえばわかるよ。あ、ステータス画面を見るには『ステータス』って念じると出てくるからね。3つ目は、ギルドに戻ると分かるかな?・・・・・おっとそろそろ時間だね。教会で祈ってくれればまた会えるから、よろしくね。」

 やっと疑問に思っていたことがわかった、などと思っていると急に意識が遠退く。

「まあ、・・・他・・も約束・・・った・・・ね」 

  最後に手を振りながら何か言っていたが、うまく聞き取れずそこで俺の意識が切れた。チュンチュンと外から鳥の鳴き声が聞こえる。 ウラはバッと、勢いよく起き上がり窓の外を見ると日が昇っていた。なんだ夢かと思いつつ立ち上がる。すると机の上に紙が置いてあることに気が付いた。

  [夢じゃないからね。神より]

 そう書いてあり少しの間思考が停止したのであった。


 ——————とある一室での出来事

「どうゆう事なんだ!気付いたら周りが水だらけだったぞ!」

「もう何度も言わないで下さい。分かってますから爺が戻るの座って待ってください。」

 そんな会話をしている人物が2人いた。落ち着かない様子でいる前者は黒のフルプレートを着ており、落ち着きなく部屋の中で行ったり来たりと世話しなく歩いている。逆に白のフルプレートを着ている後者は落ち着くように指示しているが効果はないようだ。

「はぁー何でこれと一緒にいないといけないんですか・・・」

「こっちの台詞だ!」

「あぁ?!」

 そんなやり取りが続いていると、部屋のドアが開いた。

「ほっほ・・・ほれ、いつまでやっとるんじゃ。」

 部屋に入ってきた老人が2人の頭に拳骨しながら言った。

「っつぅ~~・・・あなたのせいで怒られたじゃないですか!!」

「お前のせいだ!!」

 怒られた2人が頭を抱えながら言い合う。兜の上から拳骨したのにも関わらず、かなり痛がっているのである。それほどの威力があるお仕置きだったのだ。

「それよりも爺、どうだったんだ!!」

「それを答えるから、まず手を離さんかい。」

 白の鎧の人物は言い合ったあと、すぐに老人に詰め寄ったのだ。そう言われ、手を離し椅子に座った。

「そう静かにしていればかわいいもんなん「爺!早くしてくれ!!」じゃがな。ほっほっ・・・怒られてしもうたわい。」

 かわいいと言われたとこで机をダンッと叩きながら立ち上がり、そう言われたためふざけてないで偵察した結果を言うのであった。

「偵察したことを言うと、儂らが今いる場所は湖の上じゃ。湖と言っても、他と比較にならないほどの大きさじゃ。この湖の中には多種多様な魚やモンスターがおるわい。強さは儂ら以下であるが、主と言われているようなモノがいるかもしれん。それについてはどの程度の強さなどといったことはわからないのぉ。あと、外に出ると1本のながい道があり、そこから湖の外へと行けるわい。・・・わかったことはこんなもんじゃ。」

「・・・そうなのか(でしたか)」

 鎧を着た2人がそう言う。後それと、と老人が言った。

「どこの者かわからないが、逆にこっちを偵察している者もおったわい。」

「なに!?」
 
  黒い鎧を着た人物は立ち上がると、外に行こうとドアへ向かう。そこで、ごはんできたよ~、と言って料理を乗せたお盆を持った女性が入って来てすれ違いそのまま部屋を出ていった。

「あら~あの子どうしちゃったの~?いつもは食いついてくるのに~」

「外にいる不届き者を懲らしめに行きましたよ。」

  白の鎧の人物が、はぁ~、とため息をしてから入ってきた女性にそう答えた。

「元気がいいのぉ~」

「そうなの~?ならまた後で作ってあげなくちゃね~。私たちは食べちゃいましょ~」

  女性がそう言って机の上に料理を置いた。

「仕方のない人ですね・・・」

 そう呟くと、外から聞こえてくる、ドーンッ・・・ドカーンッという爆発音を聞きながら食事を始める3人であった。

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