自由部・ふりーだむなへや
遭遇日記 (1
                                  1
  夢を見た、中学三年の後半から今にかけて、夢なんか一度も見た記憶がないのに。
  でもその夢は、すぐに忘れた。
  思い出すまでは。
                                   2
   
   電車に乗る。
   今日は入学式だ。
自転車でいけないことはないけれど、初日から事故にあったりはしたくない。
家から徒歩五分のところにあるから、電車に乗る。
途中、一度乗り換えるが、そんなに長くはなかった筈だ。
                                   3 
 
電車はかなり混んでいた。
事前登校でも同じ時間に乗ったのだけれど、コレほど混んではいなかった。
「…あれ?。」
 ………………見覚えがある…?
この電車の、この光景に?
この電車に乗ったのは、今日を数えなければ、事前登校の二回だけ。
 受験会場は学校とは別の場所で、その時は自転車で向かった。
…?
 いや、試験会場は学校であった。
 …自転車で向かった筈ー。
入学式、そう、今日に限って事故を恐れて、入試で自転車に乗る…あれ
電車に乗ったのかな
そう、考えているうちに、乗り換えるべき駅で降りるのを忘れてしまった。
とはいえ、家を早めに出ていたので、一駅分引き返して、乗り換えの電車を待ったとしても、入学式には間に合う。
  調べても仕方がないのだけれど、何となく、引き返す電車と乗り換える電車の到着時刻を確認した。
                                   4
   一駅引き返し、さっき降りる筈だった駅にて、乗り換えの電車に無事、たどり着いた。
  電車の混み具合にはえげつないものを感じた。先ほどの倍はある。
自分の後ろに並んでいる人が強引に電車へと駆け出したので、それに押される形で乗車した。
  
  
異常なほどに混んでいる。
いくら何でも混みすぎだ。
電車は、重い足取りで速度を上げていく。
速度を…ーーー。
   速い
速すぎる。
身動きが取れず、外を確認することができない状態ではあるが、はっきりとわかる。
こんな速度で……
「…あっ。」
そうだ、その夢は、電車が脱線する夢だったんだ。
入試のときは、その夢を覚えていたから、朝早くからわざわざ自転車で行ったんだ。
  
                                   5
    夢を見た、中学三年の後半から今にかけて、夢なんか一度も見た記憶がないのに。
「そんなことはなかったろ?夢なんか見る筈が無いんだから。」
「…最後の希望は、夢を見れないんだよ?。」
  夢だ、そう、これはきっと夢なんだ。
1度目を開けた僕は、そっと目を閉じ、もう一度眠りについた。
                
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