星屑世界

オンネ

6.頭痛と悲報

「……それにしてもさ。
    蛍、お前今日よく喋るね?」

いつもならさっさっと会話を
切り上げようとするのに、と飾空が言う。
それにまた蛍は眉を寄せて返す。

「俺だって出来ることなら
    無視したいけどな。
    あんまりにもうるさいやつが居るんで
    ついな」  

「それ、俺のことだろ」

他に誰が居んだよ、と心の中で毒づく。
声にしなかったのは、また、
昨晩のような、怠惰感をまとった酷い
頭痛がしたからだった。
学校では まだ頭痛はしてなかったのに、
と蛍は顔を歪める。

突然顔を歪めた蛍に飾空は驚いた、
焦った様子で、でもどこか青ざめた様子で
大丈夫かと声をかける。
飾空が宥めるように蛍の背に手を置く。
そんなのなんの気休めにも解決にも
ならないと分かっているし、
それが事実であるはずなのに、
頭痛は少しずつ和らいでいった。

それでもまだ消えることのない
頭痛に耐えていると、
隣から、飾空の方から何かが
聞こえてくる。
飾空の方を向けるほどまだ余裕はないし、
なんの音かをしっかり判別できるほど
痛みは和らいでいないので、
それが何かは分からない。
なんとなく、それは、独り言のように
聞こえた。
何かをぶつぶつと呟いているような、
何かを考え込んでそれが無意識に、
言葉として出てしまっているような――

ゆっくりと痛みが引きをみせた頭痛に
寄せていた眉を解いて、
詰めていた息を吐く。

「……なぁ、蛍。やっぱりさ、
    その、夢なんだけどさ、
    ……  もう、お前そのゆ、」

飾空が何かをいい始めたとき、始業の
チャイムが鳴る。
相変わらず夢のことを気にしてるのかと
呆れながら蛍が飾空に なに、と
聞き返せば思い詰めた表情で
何でもない、と返される。

担任である教師が教室に入ってきた。
その顔色は青白く、お世辞にも
心身ともに健康的とは言いがたい。
もう少しうるさい健康的な大人じゃ
なかっただろうかと蛍は遠目に
教師を見て席に座る。

覇気もなく、やる気もないホームルームが
始まる。
もう少しこの教室はうるさい空間では
なかっただろうか。
もう少しこの学校は雑音が多くは
なかっただようか。

うるさくないなら、それでいい。
面倒がなくなるなら、それでいい。
他の人間が、雑音が、どうなろうが
気分が害されないのであればそれでいい。

蛍は騒がしいのが嫌いだから。
蛍はうるさいのが嫌いだから。
蛍は鬱陶しいのが嫌いだから。
蛍は――人間が嫌いだから。

だから、他人がどんな目にあっていようが
どうでもいい。
他人に興味を示さない。
蛍はそんな人間だった。
そんな蛍でも気付いた、クラスの、
学校の、他人の異変。
席に座った蛍はその雰囲気に苛立ち
舌打ちをする。
うるさくないならそれでいいが、
この雰囲気はこそこそ こそこそ
まるで何かを勘繰りあっているようで
鬱陶しい。

先程収まった頭痛が、少し、
再発したような、そんな気がした。
それと同時に、聞こえた、幻聴。
何かが、崩れるような、幻聴。




そして告げられたのは、

休んでいた生徒の大半が
原因不明の植物状態もしくは
精神を病んでいるという
何も面白くない  冗談にもならない
そんな 悲報だった。

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