クラス転移で俺だけずば抜けチート!?コミカライズ!

白狼

443話 信用できる人

 俺は、血が上った頭を一旦落ち着けるため、ソファへと座り深呼吸する。
「早くこんな戦争を終わらせてください。」
 俺は、今さっきよりも少し冷静にそう言った。
「確かに私たちがこの戦争を起こしたきっかけはくだらないものよ。でもね、今さっきも言った通り、私たちはあっちの星の人たちを何人と殺してきた。分かるでしょ、その意味が。」
「確かに人を殺したらそれ相応の責任をおうでしょう。ですが、これ以上は被害が出ません。あなたたちは、知っているはずだ。あっちの国にこの国へ攻撃するための戦力がないことを。なら、あなたたちがこの戦争をやめたら全てが終わるんです。もう誰も苦しまないし死なない。」
「…………一つ聞いてもいいかな?」
 女性は、少し目を細め俺に質問をしていいか尋ねてきた。
「なんですか?」
「竜斗くんは、どうしてそこまで平和に終わらせようと思うんだい?ここに来た時、この城に仕えているメイドや執事からの攻撃を容易に避け、さらには攻撃を躊躇させるくらいの殺気を放っただろう?私も見ていたんだ。その光景を。私の目から見て、竜斗くんなら簡単に私たちを圧倒できると思うんだよね。」
 あれを見られていたのか。
「確かに本気を出せばまぁ、無理ではないでしょう。でも、今はちょっと理由があって本気が出せないんです。それに俺が一方に手を差し伸べてしまっては意味が無いんです。俺が求めているのは両方が幸せで終われる結果なんです。どちらかが苦しむのは嫌なんです。」
「どうしてそう思うんだい?戦争はもう起こっているんだよ。どちらかが負けを認めて降伏しないとこれは終わらないんだよ。」
「…………俺は、人を殺したことがあるんです。それも1人ではなく何人も。今も、その人を殺した感覚が手に残っているんです。」
 俺は、女性の疑問に答えず自分語りをする。
「この手は、既に犯罪を犯し、血に染っているんです。そんな俺は、もう幸せにはなれない。なっちゃいけない。そう思っていました。ですが、みんなのこんな俺と一緒にいてくれる。一緒にいたいと願ってくれたんです。それを聞いた瞬間、ああ、これが幸せっていうんだなって思ったんです。俺は今、すごい幸せです。みんながいてくれて俺もいる今の生活が。だからこそ、俺は苦しんでいる人に幸せを知って欲しいんです。それが今、俺が出来ること、やりたいことなんです。」
 これで最終的には女性の疑問に対する答えにはなっただろう。
 俺の言葉を聞いた女性はふむとひとつ頷いてから俺の方を見る。
「竜斗くんの言葉、とても心に響いたよ。でもね、私はまだ竜斗くんと出会って1時間も経っていないんだ。そんな人の言葉で易々とは動けないんだよ。」
「だったら、俺のことを認めて貰えるまで俺は、何度だってここに来ます。俺のことを相手している暇はないかもしれませんが少しでも俺を見てください。今の言葉がちゃんと信用できるってことを見せてあげます。」
「竜斗くんがいちいちここに来るのは面倒だろう?まぁ、竜斗くんが悪い人ではないというのは今の時間で分かってるからここで少しの間、暮らすといい。私の方も何かと竜斗くんに気を掛けてみるから。」
「あ、ありがとうございます。」
 まさか、ここに住まわせてもらえるなんて思ってもいなかったので驚きながらお礼を言った。
「ルリ、ここで暮らしている時の竜斗くんのお世話を頼めるかな?本当はそういうことはメイドや執事にやらせるべきなんだろうけど、竜斗くんは敵の星からやって来た人だからね。少し警戒するかもしれないからね。ルリ、お願いできる?」
「はいっ!もちろん。フリルさんが言い出さなきゃ私からお願いするつもりでした。」
「ふふっ、そうか。それなら良かった。では、これから竜斗くんの様子を見ていくからね。あっ、でも、ちゃんと普段どおりに過ごしてね。そうじゃないと竜斗くんの本心が分からないから。」
「分かってます。いつも通りに過ごします。」
「それじゃ、今日は暇だからまだ少しお話していようか。」
 この戦争を終わらせるためにはまず、俺のことを信用してもらえるような人間にならなくちゃな。
 まぁ、普段通りちしてくれって言われたしあまり気負わずにいこう。

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