話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

クラス転移で俺だけずば抜けチート!?コミカライズ!

白狼

414話 助けるために

 ミラは、ゆっくりと扉を開けた。
 部屋の中は物静かで装飾など全くされてなくベットが2つだけ置かれてあり、その上に男の人と女の人が眠っている。
「お父様!お母様!」
 ミラは、眠っている2人を見るとそう声を掛けてベットとベットの間に立つ。
「………お父様………お母様………」
 ミラは、そんな2人の手をぎゅっと握った。
「……ミラ、その2人が死んでるかどうか確かめられるか?」
「………きっとまだ死んでいません。まだ……暖かいです。」
 ミラは、握っている手に温もりがしっかりとあることを確かめると俺にそう言った。
「それなら治せるかどうか試してみるよ。」
「………お願いします。どうか、助けてください。」
「さっきも言った通り、俺はあまり治癒魔法が得意じゃないんだ。………とか言ってる場合じゃないな。」
 俺は、そう言って袖をまくり気合を入れるため自分の頬を思いっきり両手で叩く。
 ヒリヒリと頬が痛むおかげで気合いが入った。
「それじゃ、やってみる。」
 俺は、そう言ってまず、父親の方から治療に取り掛かった。
 怪我の状態を見る限りいつも行っている治癒魔法だと意味が無いだろう。
 怪我をしているところ、一つ一つに神経を研ぎ澄まし地道に治癒魔法を掛けていくしかない。
 俺の治癒魔法の効果が出てきたのかミラの父親の表情がどんどん良くなってきた。
 俺は、ミラの方を見るとほぼ同時にミラも俺の方を見た。
 ミラの瞳はうるうるとしていて口元がにやけていた。
「効いてるみたいだな。」
 俺が笑顔でそう言うとミラの堪えきれなくなった涙が溢れ出てきて笑顔で頷いた。緊張していてどうやら声が出なかったようだ。
「このまま続けるからもう少し待っててくれ。」
 俺がそう言うとミラは、何度も頷いた。
 俺は、それを見て治癒魔法でどんどんミラの父親の怪我を治していった。
 そして、1時間後。ミラの父親は完全に治り気持ち良さそうに寝息を立てている。
「はぁはぁ………何とかお父さんの方は終わったな。」
 治癒魔法にだいぶ神経を使ったので汗が身体中から出てきて呼吸も肩でしないといけないくらい疲れていた。
 でも、まだこれで終わりじゃない。ミラの母親の方も残っている。
「……次、行くぞ。」
 俺は、そう言ってミラの母親の方に治癒魔法を掛けていった。何故かミラの返事が聞こえなかったがまた緊張で声が出なかったのだろうと思い今さっきと同じくらいに集中した。
「はぁはぁ……」
 俺は、滴る汗を何度も拭った。何度も視界がボヤけてきたがここで止めるなんて出来ないので頭を振ったり今さっきしたように頬を叩いたりして意識を保っていた。
 そして、そんなことをして意識を保たせながら1時間が経過した。
「はぁはぁ…………終わった。」
 俺は、ミラの母親にどこも怪我がないことを確認して地べたに手を付き肩で息をする。
 きっとこれでもう大丈夫だろう。目が覚めればいつもどうり動けるはずだ。
 俺は、そう思い一安心すると視界がぼやけて目の前の景色がグルグルと回転しその場に転倒してしまいそうになった。
 転倒してしまいそうになったおれをミラが支えてくれた。
「……ご、ごめん……ミラ……」
「いえ、こちらこそ、ごめんなさい。初めて来た土地で慣れないしここに来るまでの旅で疲れているのに初日からこんなにハードなことをさせてしまい、本当に申し訳ないです。」
「は……ははっ、いいんだよ。だって……俺のやるべき事は辛いことや苦しいと感じている人たちを助けることなんだから。ほら、見てくれ、あの2人。すごい気持ち良さそうに眠ってるじゃないか。」
「はい………はい……はい……」
 ミラは、何度も頷きそして俺の額に涙が落ちてきた。
「ありがとう………ございます………本当にありがとうございます………」
「お礼は言わないって約束……だ………ろ……」
 あ、ダメだ。意識がだいぶ遠のいてきた。
 俺は、まぶたが落ちるのを耐えているがもう無理そうだ。
「竜斗……今回だけは………言わせてください…………ありがとうございます…………そして…………」
 俺は、そこまで聞いて眠ってしまった。
「……………私も惚れてしまったようです………」
 ミラのその一言は、俺の耳には入って来なかった。

「クラス転移で俺だけずば抜けチート!?コミカライズ!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く