クラス転移で俺だけずば抜けチート!?

白狼

332話 弱虫な俺

「…………俺は、ずっと人間の底辺よりも下にいるんだ。」
 俺は、強く握った自分の拳を見ながらそう言った。
「…………だから、俺は、誰かを育てるなんてできない。しちゃいけないんだ。………もし、こんな俺を周りが認めてくれようとも俺自身が認めきれない。」
「……竜斗……抱っこ……」
「え?」
 クロムは、今の俺の話を聞いて突然抱っこと言ってきた。
「……早く……」
 クロムは、急かすように俺の腕を引っ張る。俺は、何がなんだかわからなかったがまぁ、抱っこするくらいならいっかと思ってクロムを俺の胸の位置まで持ってきた。
「……………」
「…………クロム?」
 クロムは、俺が抱っこをすると胸に顔を埋めた。なんかすごい匂いを嗅がれてるんだが……
「……大丈夫……」
「え?」
 クロムは、俺の匂いを嗅ぎ終わると顔を俺の方に向けて一言そう呟いた。俺は、意味が分からず目を点にして小首を傾げた。
「……大丈夫……竜斗には……悪い人の……匂い……しない……」
「は?わ、悪い人の匂いって?」
「……私……匂いに……敏感……だから……」
 だからって人の悪さを感知できるものではないだろ………
「……私……これでも……魔王……色々な……人に……出会って……きた……そこで……色々な……匂いを……臭って……人の匂いで……どんな人なのか……分かるように……なった……」
「……そ、そりゃすごいな………」
「……だから……安心して……竜斗は……優しい……人……悪い……人……じゃないよ……」
「言っただろ?周りがどれだけ俺を認めてくれても俺自身が認めきれないんだって。クロムがどれだけ言おうと俺は………」
「あむっ!」
「いてっ!」
 俺が話している途中にクロムが急に俺の首を噛んできた。結構思いっきり噛まれたので恐らく歯型が付いているだろう。
「……竜斗は……すごく……優しくて……カッコイイ……けど……そうやって……卑屈に……なるの……良くない……」
 クロムは、しっかりと俺の目を見ながらそう言った。
「……竜斗……ちゃんと……自分を……認めて……そうしないと………………」
 クロムは、そこまで言うと少し下を向いた。
「クロム?」
 俺は、不思議に思い声をかける。その瞬間、俺の腕に熱い水滴が零れ落ちてきた。そして、クロムは、目から涙を零しながらまた俺の方を向いて言った。
「……自分が……可愛そうだよ……」
「っ!」
 その瞳や言葉に俺は大きく動揺した。心臓が大きく跳ねたのが分かった。
「……竜斗は……すごい……カッコイイんだよ……すごい……優しいんだよ……すごく……すごく……良い人なんだよ!……なのに……それを……自分が認めないなんて……可愛そうだよ……」
 クロムは、俺の服をぎゅっと握り体を丸めて泣きながらそう言った。
 俺が今、抱きかかえてるのは誰だ?
 すごい小さくてとても可愛い女の子はずだろ。小さい体が丸くなってさらに小さくなってる。女の子の涙で胸のところの服がぐっしょりと濡れている。それくらい分かる。
 だから、今ここで俺が胸を張らなきゃいけない。虚勢でもなんでもいい。胸を張らなきゃいけない………なのに……弱虫な俺はそんなことも出来ない。
 女の子が泣いている中、俺は何をしてるんだ?何をボッーと立っているんだ?
 あ〜、恥ずかしい。
 ちゃんと歯を噛み締めろ!女の子をそのまま泣かしてんじゃねぇ!
「……クロム!ありがとな!」
 俺は、今できる最大の笑みを浮かべクロムに向けてそう言った。
 クロムは、そんな俺を見てさらに泣き出した。
「うぇ!?な、なんで!?」
 俺は、さらに泣き出されてしまったので驚いてそう言った。
「………ふふっ」
 だが、何故か急にクロムが涙を流しながら笑った。
「……やっぱり……竜斗は……私の……大……大……大好きな人!」
 クロムは、そう言うと俺の肩に手をかけて顔を俺の顔まで持ってきて俺の頬にキスをした。
「……竜斗……大好き!」
 クロムは、笑顔でそう言うと次は俺の頬にすりすりと自分の頬を擦り付けてきた。
 クロムに言われて少し気持ちも変わった……のかもしれない。でも、きっと、もう卑屈にはならないだろう。クロムのおかげで弱虫な俺はいなくなったんだろう。
 この後、ちゃんとシェレールと話そう。
 だが、そのシェレールが部屋にいたことを俺とクロムは少しテンションが上がってしまっていたため分からなかったのだろう。そして、とてもいい笑顔でこちらを見ていたことも。

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