クラス転移で俺だけずば抜けチート!?

白狼

294話 会いたかった人

 シェレールside
 私が旦那様へと再度手をさし伸ばそうとした瞬間、その声は、私の耳へと入ってきました。
「シェレールっ!!」
「っ!……きゃっ!」
 私は、名前を呼ばれた方を咄嗟に見たのですがそこにはどこにも姿がなく一瞬、困惑した瞬間、少し浮遊感を覚えました。
 そして、私と旦那様の距離がどんどん離れていき、気づけばクロムたちの元へ戻っていました。
「……え……え?……な、何が………」
 私は、何が起こったのか分からないままその場に下ろされました。
「…………シェレール、大丈夫だったか?」
 私の安否を確認する声が聞こえます。
 その声は、間違えるはずもありません。顔を見なくても分かります。ずっと、ずっと、聞きたかった、その声……優しく私を包んでくれてそれでいて私を守ってくれそうな頼もしい声。
「っ!旦那様!」
 私は、顔を上げ旦那様の顔を確認すると涙が溢れてきて気づいたら抱きついていました。
「おわっ!」
「旦那様です!旦那様!旦那様!旦那様〜!」
 私は、自分の歳も忘れて子どものように泣きじゃくって旦那様の胸に頬を擦りつけました。
「………悪いな、シェレール、心配掛けちゃって。」
「う………うぅ……ホントです………いつもいつも旦那様は、私に心配をかけて………」
「………悪いな………」
 旦那様は、そう言って私の頭を優しく撫でてくれます。
「…………みんなと一緒に帰りましょ。そうしたら許してあげます。」
「…………俺も帰りたいんだけど………」
 旦那様は、難色の表情をしながらそう呟きました。
「………旦那様?」
「………いや、なんでもないよ。それよりも怪我してない?」
「は、はい!大丈夫です!」
 私は、私のことを心配してくれた旦那様の気遣いが嬉して笑顔で答えました。
「……竜斗……私たちも……いる……」
「そうだよ!柊君!」
 と、そこでクロムと白井さんが頬を可愛らしく膨らませて旦那様にそう言ってました。
「ははっ、悪い悪い。別に無視してたわけじゃないよ。2人も元気そうでよかった。」
「……うん……元気……」
「私も全然大丈夫です!それよりも柊君は、大丈夫なの?」
「ああ、俺の事なら心配いらないぞ?少し力が入らないだけであとは正常だ。」
「……力が入らないって大丈夫なんですか?」
「う〜ん……前よりも10分の1くらい後からしか出せないけど……まっ、それでも……アイツをみんなで倒せるくらいの力は残ってるよ。」
 旦那様は、もう一人の旦那様を睨みながらそう言いました。
「……旦那様……あの旦那様は一体なんなんですか?」
「う〜ん……説明が少し難しいんだけど………まぁ、言い切ってしまうならアイツは俺だよ。もう一人の俺。」
「……もう一人の……竜斗?」
「ああ、そうだよ。今いる世界の俺がここにいる俺だとすればアイツは、前の世界での俺みたいなもんだ。怖がりで、周りの目をすごい気にして……毎日、一日を過ごすことがただただ辛いだけと思っていた時の俺だ。」
 旦那様の言葉は、最初は私たちに向けて言われていると思ったのですが私は、どこかそれは違うように思いました。恐らく旦那様は、私たちにではなく自分に向けて言っているんだと私は何となくそう思いました。
「………旦那様……どうするんですか?」
「…………アイツは、殺さなくちゃいけない。昔の自分とは縁を切るしかないんだ。」
「あ………」
 もしかして、ナビさんの言っていたことってこの事………
 私は、チラッとナビさんに目をやりました。
「…………」
 ナビさんは、特に何も喋ろうとはしませんでした。ですが、「どうするんですか?」と、私に向けて語っているような気がしました。
「………みんなは下がっててくれ。俺、1人で片付ける。そうしなくちゃ自分と向き合ったことにはならないからな。自分のことは自分でやるよ。」
 旦那様は、そう言ってスタスタと私たちを置いて前へ行きました。
 その後ろ姿は、どこか儚げで寂しそうな姿をしていました。
「…………」
 そして、私は、答えを出せずその背中を見ることだけしか出来ませんでした。

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