クラス転移で俺だけずば抜けチート!?コミカライズ!

白狼

281話 迷い

 シェレールside
「………ふ……ふふ………う、嘘です……旦那様が記憶を失っているなんて………嘘です………」
 私は、ユイさんから旦那様が記憶を失っていると言われても認めようとしませんでした。と言うよりも認めたくなんてありませんでした。
「………シェレール……」
「っ!」
 私は、ユイさんから声を掛けられた瞬間、部屋から飛び出しました。
 これ以上、あの部屋に居続けてしまったら私は、今の私を保てそうもありませんから。
 だから、私は、逃げました。
 そして、逃げた先はここに来た時に使っていた船の中の私の部屋。
 そして、私は自分のベットの毛布に包まってその中でずっと泣き続けました。
 旦那様が私との思い出も私のことも忘れてしまったなんて認めません!
 嫌です、絶対に嫌です。あんなに楽しかった毎日が旦那様の中から消えてしまうなんて………認められるわけがありません。
「……だれか………誰か助けてください……何でもしますから……もう旦那様も独り占めもしません………だから………誰か……旦那様を……助けてください………」
 私は、メソメソ泣きながら切実にそうお願いしました。誰も聞いてないのだからこんなことを言っても無駄なのに……でも、旦那様がいないのならもう私に頼れる人なんていません……
「……だから………だからせめて………神様………一生に一度のお願いです……私のお願いを聞いてください………」
 今の私ならなんでも差し出す覚悟だってあります……旦那様のためなら………なんだって出来ます……
 私のその切実な願いとは裏腹に部屋の中には私の鳴き声しか聞えませんでした。
 私がどんなことを願おうとも誰も助けてくれない。
 私がどんなに辛くても誰もそんな私に声をかけない。
「…………私………どうすれば………いいんですか…………」
 私は、これから私の知っている旦那様がいない生活をどうやって送ればいいのか分かりませんでした。
 その瞬間、部屋の中に眩い光の玉が現れました。
「っ!」
 私は、その光が眩しすぎて目を細めて何が起こったのかを確認しました。
 するとその光の玉から私に向けて話しかけてきました。
「全く、シェレールさん、あなたは何をしてるんですか?」
 その声は、何度も聞いたことのある声……ナビさんの声でした。
「………ナビ………さん?」
 私は、今話しかけてきたのがナビさんかどうかを確認するために質問しました。
「はい、そうですよ。ところでシェレールさん、あなたは何をしてるんですか?」
 ナビさんは、二度同じことを質問してきました。
「………何もしてません………何も出来ません………」
 私は、ナビさんの質問に力なくそう答えました。
「はぁ〜……あなたは本当に竜斗様がいないとダメですね。」
 ナビさんは、呆れたような口調でそう言ってきました。
「………当たり前です………旦那様が………記憶をなくしてしまって………私のことも忘れてしまって………どうすればいいんですか………」
 私は、言ってる最中、どんどん悲しくなって涙がまた溢れてきました。
「………はぁ〜……本当に皆さん、私の話を最後まで聞かないから………」
 ナビさんは、さらに呆れたようにため息をついてそう言いました。
「………ど……どういうこと……ですか?」
「竜斗様の記憶は今現在、竜斗様の奥に眠ったままなんです。」
「っ!そ、それって………」
「その通りです。竜斗様の記憶は無くなってなんてありません。………ただ、あのままだと記憶は戻ることはないと思います。いえ、恐らく新しい記憶がどんどん増えていき前の記憶は無くなってしまうでしょう。なので、取り戻すにはなるべく早く取り戻した方がいいでしょうね。」
 だ、旦那様の記憶が戻り戻る………
「っ!ど、どうやったら元に戻るんですか!?」
「一度、竜斗様の中へと入る必要がありますね。あ、もちろん竜斗様の中に人の体を入れるわけではありませんよ?人の意識を入れて竜斗様の記憶を呼び戻してくるんです。」
「……旦那様の中に入るって………そんなこと出来るんですか?」
「まぁ、そこら辺は私が協力しますよ。ただし人数は最大3人となります。それ以上は、不可能ですので。」
「わ、私は、必ず行きます!」
「そういうと思ってましたよ。………ですがひとつ忠告です。竜斗様という人間は色々と抱え込んでいる人間です。様々な感情や思い、それは意思として入り込んでくるあなたたちの行く手を阻んだりするでしょう。それと、もし、竜斗様の記憶を戻せなかったらあなたたちの意思は消えてなくなります。なので今の竜斗様状態ですね。」
「………ということは記憶がなくなるということですね?」
「はい、そういうことです。それでも行きますか?」
「もちろん行きます!旦那様のためならなんだってするって誓ったんです!」
「それでは明日の夜に行いましょう。それまでに他に行く人がいれば私に伝えてください。ちゃんと今、私が説明したことを全て伝えてくださいね。」
「分かりました、ありがとうございます!」
 旦那様………待っていてください!

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