クラス転移で俺だけずば抜けチート!?コミカライズ!

白狼

273話 邪神の力

「……くっ……うっ……」
 俺の体の中に今までとは全く味わったことの無いオドオドとした恐ろしい力が流れ込んでくる。
 今、どれくらい俺の体に移せているんだ?
(まだ、4分の1も移せていません。あまり早くし過ぎるとマスターの体が耐えられませんからね。)
 こんなに取り込んだのにまだ全然入ってないのか。
「……はぁ、はぁ………うっ……」
 流れてくる力が気持ち悪すぎて少し目が眩む。
「竜斗君、大丈夫?」
「は、はい、大丈夫です。」
 俺は、笑顔でそう言うがレイルさんは全く不安そうな表情が消えてない。恐らく俺の顔は、苦しそうに笑っているのだろう。
「………竜斗君、本当に無茶しないでね。」
「ぜ、全然……無茶してませんよ……」
 俺は、明らかな嘘を吐く。
「………本当にごめんなさい。」
「……………謝らないでください。俺、レーネに約束したんです。レーネが笑って暮らせるようなそんな日々を送らせてやるって。そのためには絶対にレイルさんが必要なんです!」
(マスター!これ以上やると本当に体の危険があるかもしれません!)
 構わない!そのまま続けてくれ!
(で、ですが……)
 頼むから!
 俺は、ナビに無理言って体の中に邪神の力を入れるのを続けてもらう。
(……分かりました。)
 ナビは、何とか俺の無理を聞いてくれて流し続けてくれる。
「……かはっ……あ……ああ……くぅ……」
 目の前が今さっきよりも速くグルグルと回る。
 苦しい……目の前が暗くなってく……辛い……いっそ倒れてしまいたい……早く終わってくれ……
 俺は、そんなことを願いながら苦痛に耐える。
「竜斗!やっぱりあなた!無理してるじゃない!」
「………は、はは……バレちゃったか?」
「も、もう止めて!竜斗!」
「………だい……じょう………ぶ…………絶対に……レイル……さん……を………助けて………やる……か……ら……」
 俺は、途切れ途切れになりながらもレーネにそう言う。だが、レーネの表情は不安そのものだった。
 あ、や、やばい、意識が遠のいていく……
「竜斗君!もういいから。ありがとう、もう十分だから!」
 レイルさんも俺を止めようとするが俺は止まらない。
 耐えろ……耐えるんだ………俺みたいな理不尽に不幸になってしまった子を救うんだ。
 俺は、そう自分の心に言い続ける。だが、俺の心はそんな思いとは裏腹に逃げてしまいたいと思ってしまう。
 助けてくれ……誰か……誰でもいい……頼むから助けてくれ………
(っ!マスター!全て取り込みました!)
 ナビがそう言うとレイルさんは、力が抜けたのかその場にへたり込む。
 …………は……やく……あのスキル……を………
 よ、ようやく………終われるんだ………
「………っ!くぅ………うわぁぁぁぁああああ!!!」
「竜斗君!?」
「竜斗!?」
 俺は、スキルを使おうと体に力を入れると全身に激痛が響いた。
 全身の血管が破裂して出血する。
 目の前が赤黒く染まる
「うわぁぁぁぁあああああああああぁぁぁ!!!」
 叫ぶ。喉が壊れそうな程に。
 これが邪神の力。
 それは、憤怒の大罪スキルや復讐に抱く憎悪なんかとはまるで桁が違う今までに感じたことの無い恐ろしい力。
 呑まれる。このまま、その恐ろしい力に………
「うがぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
 怖い………力に呑まれてしまうことが怖い……
(マスター!早く!スキルを使ってください!そうしないと!マスターの体が!)
 …………ああ、分かってる。でも、もう………力が入らねぇ………
 俺は、今さっきまで赤黒く染められていた視界に1粒の小さな光が現れた。
 …………は、ははっ、なんだ………これ?
 暖かいような………落ち着くような………
「………ま……さま………んなさま………旦那様!」
 …………シェレールの声?……はっ、まさかな。ここにいるわけが無いだろ……
「………私は、いつも旦那様の隣にいますよ。私たち、心が通じあってますからね。」
 心が………通じあってる………
 シェレール………死ぬ前にもう一度顔を見たいな…………
 でも………声が聞こえただけでそれだけでいいか………
「旦那様!しっかりしてください!最後の力を振り絞って!また私に会いに来てください!私を一人にしないでください!」
 …………ははっ、無茶苦茶言うぜ………
 でも……………好きな人にそこまで言われちゃ仕方ねぇよなぁ……
「はぁぁぁぁぁあああ……うわぁぁぁぁああああ!!!!」
 俺は、自分が今出せる全ての力を振り絞りスキルを使う。
 神級スキル ジ・エンド
 すると今まで体にあった恐ろしい力は、一瞬でどこかへ飛んでいってしまった。
「…………はぁはぁ………」
「………りゅ、竜斗?」
「竜斗君?」
 二人が心配そうに俺を見る。
 だが、俺は、二人を安心させるような声掛けをする余裕が無い。
 そしてそのまま………
 頭の中が真っ白になった。

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