クラス転移で俺だけずば抜けチート!?コミカライズ!

白狼

182話 胃袋を掴む

「ねぇ、ちょっといい?」
 俺は、思いっきってその女の子に話しかけた。
 一応ナビにお願いしてもう、俺のオーラは抑えてくれている。
「ひっ!」
 その女の子は、俺と隣にいるクロムを見るなり涙目になりながら逃げようとした。
「あっ!ちょっと待って!……これ、欲しくない?」
「ぁ………」
 俺は、1つ紙袋を出してその女の子を止める。
 その紙袋の中には今さっきまでこの子が見ていた屋台の料理が入っている。とても美味しそうだ。
「一緒に食べない?」
 俺は、そう誘うけど女の子は、なかなかうんと頷いてくれない。
 まぁ、これくらいは予想通り。
 俺は、紙袋からその料理を2本取り出した。
 これは日本で言う焼き鳥に似ているな。
「はい、クロム、食べていいよ。」
「うん……ありがとう……」
 俺とクロムは、それを一口、食べる。
「もぐもぐ……んくっ!うん!美味い!」
「〜っ!……すごく……美味しい……」
「………」
 よしよし、興味を示してるな。
 あともう少しで話ができそうだ。
「あ〜、本当に美味しいな〜。これ、欲しい人がいないなら俺たちで全部食べようか。」
「うん……食べたい……」
 俺は、また袋の中から2本取り出した。
 そして、それを全て食べ尽くす。
「あ〜、残り少ないなぁ〜。次、俺たちが食べたら全部なくなっちゃうかもなぁ〜。」
 う〜ん、上手く演技できてるかな。
「竜斗……まだ食べたい……」
「よし!じゃあ残りを全て………」
「ま、待って!」
 女の子は、そう言って俺を静止しようとする。だが、女の子自身、反射しての行動だったのだろうか、顔を赤くしてモジモジさせてしまった。
「欲しいんだろ?」
「………」
 俺が尋ねると女の子は、そっぽを向いてしまった。
「ほら、食べてみろって。美味しいぞ?」
 俺は、女の子の前に俺たちが今さっきまで食べていたものを差し出した。
 その女の子は、それを見るなりヨダレを垂らしていた。
「悪いもんなんか入ってないから食べてみなって。ほら、あーん。」
「………1人で食べれる……」
「そうか?なら、はい。」
 俺がそれを渡すと女の子は、目を見開きキラキラさせてそれを見ていた。
「………美味しいそう……」
「遠慮すんなよ。まだまだいっぱいあるから。」
「……え?でもいまさっき……」
「ん〜、あ〜、まぁ、気にすんな!」
 今さっき、もう少なくなったというのはこの子を誘うための嘘であった。
 まぁ、時には嘘も必要だよね!
「……ゴクリ……い、いただきます……」
 女の子は、恐る恐るそれを一口食べた。
「っ!」
 すると女の子は、今さっきよりも目を見開いた。そして、涙を流した。
「お、おい、大丈夫か?なんか、嫌なものでも入っていたのか!?」
「う、ううん、違うの……美味しくて……こんなに美味しいもの食べたの……本当に久しぶりで涙が出ちゃったの……」
「そ、そうか、なら良かった。ほら、まだいっぱいあるんだからいっぱい食べてくれ。」
「あなたたちはいいの?食べなくて?」
「ああ、俺はもういいよ。クロムは、まだ食べるか?」
「………も、もう一本……だけ……」
「ははっ、クロムも遠慮すんなよ。」
 俺は、そう言ってクロムに1本を渡す。
「ありがとう……」
 そしてクロムもそれにかぶりつく。
 二人ともいい顔で食べてるな。
「よしよし」
「みゃっ!」
「ひゃっ!」
 俺が二人の頭に手を置いて撫でるととても可愛らしい声を漏らした。
「ちょ、ちょっと!触らないで!」
 女の子は、そう怒るものの無理やり離れようとはしない。
 クロムは、満足気な顔をしている。
「ねぇ、君の名前を教えて貰ってもいい?」
「………人に名前を尋ねる時は、まずは自分からでしょ?」
 おっ、本性はなかなか気が強いんだな。ユイと似てるな。
「ははっ、そうだね。俺の名前は……柊竜斗だ。」
 最初、偽名を使おうと思ったがここではもう偽名を使う理由もないので偽名はつかないでおく。
「私は……クロム……よろしくね」
「あたしは、レーネ……」
「レーネか、よろしく。」
「レーネ……いい名前……」
「……よろしく……」
「ちょっとレーネと話がしたいんだけど……その前にこれ、全部食べちゃおうか。」
「あなたたちも遠慮しなくていいわよ。あたしだけ食べてるのも悪いから。」
「そっか。なら、食べようかな。」
「私も……食べる……」
「はい、二人とも。」
「ありがとう……」
「ありがと……」
 俺たちは、全員でゆっくりと屋台で買った料理を食べ尽くしていくのだった。

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