106話魚

　俺は、疲れきって立てなくなってしまったシェレールをここへ来た時から敷いていたビニールシートの上に寝かせた。
「竜斗、私、寝ていますので海へ行ってきてください。」
「いや、でも……」
「ふふっ、大丈夫ですよ。それに私そろそろ眠ってしまいそうです。だから行ってきてください。」
「……分かった。それじゃ、ゆっくり休むんだぞ。」
「はい、分かってます。それではおやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
　俺は、シェレールが目を閉じたところでその場を立ち海へと向かった。
　みんなは今、泳ぎの勝負をしているらしい。だいぶ盛り上がっているな。
　じゃあ、俺も混ざってこようかな〜。
　と、思ったけど、一つみんなに約束していることがあったんだ。
　あれを捕まえに行くか。
　ナビ、あれはどこにいるんだ？
（もう少し沖に出ればいますよ。）
　分かった。それじゃ行くか。
　俺は、海に入り結構沖まで行く。
（マスター、完全創造で水中呼吸を作った方が便利ですよ。）
　分かった、助かるよ。
　ナビ、本当に有難い。
　スキル完全創造
　作るのはスキルで水中でも呼吸ができるようにするもの。
　よし、できたっと。
　早速使うか。
　スキル水中呼吸
　俺は、海に潜るといまさっきまでとは違い海の中で呼吸ができるようになった。
　よし、あれを探すか。
　………お！いたいた。
　俺の目の前には、海の中をスムーズに動く体調8メートル程の魚がいた。
　ってか、本当に大きいな。それに少し種類も違うのか？
　俺、あまり魚には詳しくないけど。
　まぁとにかく殺るか。
（ちょっと待ってください！）
　ん？なんだ、ナビ？
（ここで殺してしまえば新鮮度が食べる時にはガタ落ちします。なので生きたまま捕獲する方がいいでしょう。）
　あ〜、そういうことね。
　でも、こんなに大きな魚、どうやって生きたまま持ち帰るんだ？
（マスターは、空間魔法を所持していますので魚のいるその空間ごと取れば簡単です。）
　え？空間魔法って異次元に作る空間を作るんじゃなかったの？
（それは空間魔法の能力の一つです。）
　そういう事か。でも俺、それをするの初めてなんだけど出来るの？
（マスターが使っていた異次元に空間を作る空間魔法の能力のひとつ。あれは、空間魔法にとって1番使うのが難しい能力なのです。ですから目の前にある空間を切り離すのは造作もないことでしょう。）
　え！？マジ？
　俺、ずっと1番難しい能力をしていたってこと？
　ってかなんでナビ教えてくれなかったの？
（マスターならできると信じていましたので。）
　そ、そうか。なんかちょっと照れるな。
　よし、それならやってみるか。
　魚が取れるような大きさにすればいいから、縦10メートル、横10メートル、高さ10メートルくらいの空間を切り取ればいいか。
　よし！できたっと。簡単だったな。
　それじゃ、持って帰るか。
　………って、どうやって持って帰ったらいいんだ！？
（アイテムボックスに入れればいいでしょう？）
　あ、そうでした。
　俺は、切り離した空間をアイテムボックスに入れ、ビーチへ転移した。
「うわっ！竜斗！？ビックリした〜。」
「あ、悪い。大丈夫か、ユイ？」
「え、ええ。」
　俺は、ビーチへ転移したがちょうどその近くにユイが立っていて、驚かしてしまった。そしてユイは、思いっきり尻もちをついてしまった。
　俺は、そんなユイに手を伸ばした。
　ユイは、伸ばした俺の手をぎゅっと掴み立った。
「ったく、転移するなら転移するって言いなさいよね。」
「さすがにそれは出来ないよ。」
「分かってるわよ。ちょっと文句が言いたかっただけ。」
「ああ、そうか。悪かったな。」
「もういいわ。別にそんなに怒ってないし。」
「ありがとうな。あれ？他のみんなは？」
「ルビーたちならまだ泳いできてるわよ。シェレールなら、まだ寝てるわ。私は、休憩がてら散歩していたところなの。」
「ああ、そうか。分かった。」
「それよりも竜斗は何をしていたの？」
「ああ、約束のもの取りに行っていたんだよ。」
「約束のもの？」
「ああ、これだ。」
　俺は、そう言ってアイテムボックスに入れていた魚が入っている空間を取り出した。
「こ、これって！？」
「見ての通り魚だ。」
「あ、あれ、本当だったの！？まさか本当に食べる気！？こんな気持ちの悪い生き物を！？」
「ああ、当たり前だ。今から調理するところだ。こんなに大きいと調理が少し大変そうだけどな。」
「嫌よ！食べるんだったら他のみんなで食べて！私は食べなわよ！」
「いや、絶対うまいって！」
「い〜や！私は、散歩の続きしてくるわ！」
　ユイは、そう言ってまた歩き出した。
「絶対うまいのに……」