最強魔神の封印解除

ゼノン

勇者ベルファスト

いきなりでごめんなさい。私の名前はベルファスト・ラスディーンと言います。
私は今、とある村に向かっています。先輩勇者のシルヴィア様が向かった先の村で魔族が攻めてきたという報告がきたからです。
私は代々勇者の名を受け継ぐラスディーン家の娘なので、勇者として活動しているわけなんですけど……正直言ってしまうと面倒臭いです!!
自分でやればいいような仕事や明らかに強そうな魔物を相手にするときも、勇者として堂々とした振る舞いをしなければなりません。私は勇者の名を貰った一族の子ですが、実はかなりの臆病なので行きたくありません。
「はぁ……誰か心優しい人が、私の代わりに勇者をしてくれないでしょうか?」
私は思わずため息を漏らします。
だってしたくありませんもん。大量の魔物とか聞くだけで恐怖心から足が動きません。王都で駄々を捏ねましたが、騎士隊長さんに無理やり連れて来させられました。
もう帰りたいです。
「ベルファスト様、もうすぐで村につきます」
あぁー村に着いちゃうんですね。
「でも、村にはあの魔神がいるのでしょう?    かなりゆっくり動いてますけど、急がなくていいんですか?」
「急ぐとあなたが睨むから」
「すみません」
うぅ……怒られてしまいました。そりゃあそうですよね?   私がゆっくり行きたいって言ったんですもんね。私はそう考えて、馬車の中で寝転がります。
「もう死にたいです」
「勇者様」
「なんですか?」
「村に着いて活躍すれば、きっとシルヴィア様に褒めてもられますよ」
私はその一言にガバッと身を起こし「本当ですか!?」と騎士隊長さんに迫ります。
「は、はい。きっと……」
私は嬉しさのあまり、ウキウキとしながら胡座をかいて座りました。
私はラスディーン家の娘ですが、言葉使いが丁寧な割に仕草が割と男っぽいんですよね。こればかりは原因もわからないので、仕方ないですよね。女の子としての行動すると、なぜか剣抜いちゃうし。
時々、臆病な性格から大胆な性格に変わりますし。喧嘩売られたら好戦的かつ冷静になりますし。
私ってかなりの戦闘狂なのでしょうか?
そんなこんなで、私たちは村につきましたが、私は自分の目が信じられない感じがしました。




だって、一人の黒髮の男の子が、片手に剣を持って全身血を浴びた状態で立っているんだもん。少年の周りには斬り殺された魔族や魔物がたくさんいまして、村の出口にいたシルヴィア様が信じられないものを見たという顔をしてました。
「シルヴィア様、これは一体!?」
私は取り敢えず放心状態のシルヴィアの隣に来ます。
「流石、魔神の名を持つだけのことはあるわね」
シルヴィア様は私が隣にいることに気づいていないのか、ボソリと独り言を呟いています。
「君、これは君がやったのか?」
騎士隊長さんが手を腰に刺してある剣の柄を掴みながら、少年の近くによります。
少年は騎士隊長さんが来ても、剣を収めるどころか、だらーんとした状態で立っています。
「お前は誰だ?」
「私は王都騎士隊長サルヴァドール・クルセードだ」
騎士隊長さんの名前を聞いて少し驚いた顔をした少年は、すぐにさっきまでの無表情に戻りボソリと言います。
「俺はゼノン」
私はその名を聞いてあれって思いました。この村で復活をしたという魔神の名もゼノンという名を持っているはずですから。単に同じだけなのかって思いましたが、私には勇者として闇魔力感知能力が備わっているので、少年が魔神ゼノンだとすぐに気づきました。
「騎士隊長さん!    すぐに逃げてください!    そいつは魔神ゼノンです!」
私が騎士隊長さんに向かってそう叫ぶと、騎士隊長さんは一瞬驚いた顔をしながらも、そこから後ろに引きます。
「俺は誰も殺すつもりはない」
「嘘です!!    魔神ゼノンが人を殺さないなんてありえません!!」
「嘘だと思うなら勝手に思ってればいい。俺はやるべきことをするだけだ」
魔神ゼノンはそう言って村の外を出ようとします。その時、シルヴィア様が先回りして魔神ゼノンの目の前に来ました。
「待ちなさいゼノン」
「なんだ?」
シルヴィア様が魔神ゼノンに言葉をかけます。
「貴方は何故、村を襲った魔族を皆殺しにしたの?    4魔将ミラクラは逃したみたいだけど」
「逃したんじゃない。あいつは封印が解かれた俺の配下だ。俺の下にいる配下を殺す道理はないはずだ。違うか?」
「そうね……確かにその通りよ。でも私にはわからない。何故魔族達は貴方に敵対したの?」
シルヴィア様のその言葉に私も騎士隊長さんもビックリしました。シルヴィア様が魔神ゼノンと普通に話していることもそうですけど、魔族が魔神ゼノンと敵対したことにも驚きました。
「あいつらは貴方を偽物と言っていたわ。貴方が封印されている間に、新しい魔神でも誕生したのかしら?」
「俺が知るか。そんなことはどうでもいいだろ。俺は今すぐにでも城に戻って、俺の偽物をぶっ潰しに行く」
なんか、私にはわからない次元の話しされてませんか?    私こういう話はほんとダメなんですよねー。
「もういいわ。わかった。貴方を止めない」
「な、なななななななな!    何言ってるんですか!?    シルヴィア様!?   そいつは魔神ゼノンですよ?   残虐非道な魔神ですよ?    生かしておいていいんですか?」
「えぇ、構わないわ」
私の言葉にシルヴィア様は、苦笑いを浮かべます。
一体全体どうしたらいいのでしょうか!?
もう私にはわかりませーーーーーーん!!

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