最強魔神の封印解除

ゼノン

勇者が村にやってきた!?

「村の近くに勇者が来てるんだよ」
リオナが放ったこの言葉に俺の表情は凍りついた。
それはそうだろう。俺は勇者の一族が大の嫌いなのだから。そもそも、魔神族と勇者の一族は仲がかなり悪いため、生まれれば倒し生まれれば倒しの繰り返しだった。
俺は我が城に勇者が何回押し寄せて来たか、もう数えるのも嫌だ。
「どうしたの?    なんか、顔怖いけど?」
 誰のせいだと思ってんだよ。お前のせいだよ。いや、お前じゃない。勇者たちのせいだよ。
俺は凍りつく表情のままリオナの顔をじっと見る。
「な、なんだよ?」
「リオナ、俺の種族はなんだ?」
「魔神族だろ?」
「じゃあ、魔神族はなにと戦っている?」
「光の一族…………あっ!」
どうやら俺の表情が凍りついている意味がわかったらしい。
「あーアンタ、勇者たちと長い間戦って来たんだったね」
あーそうだよ。悪いか!
いくら俺だって嫌な種族ぐらいだってあるんだよ!
さて、勇者が来てるとなれば俺もあんまり目立った行動はできないな。
「俺も今は村の住人のわけだし、広場までは行くか」
俺の言葉にリオナがとても驚いた顔をする。
「行って大丈夫なの?    アンタって魔神なんでしょ?」
その意見はごもっともだが、今俺は村の住人になっているわけだから、行かないと村長に怪しまれるし。どっかの誰かさんが勝手に俺を住人にしてくれたおかげでな。
「まぁ、行かないとまずいってわけじゃない。今の俺の魔力はほぼ無いし、そもそも奴らは俺の魔力を感知できない。だから大丈夫……であって欲しい」
「おい!   せめてそこは言い切れよ!」
俺の頼りない言葉にリオナがツッコミを入れる。面白い奴だな。
「取り敢えず広場まで行こう。あんまり待たしたら村長の長話を聞く羽目になるからな」
「だ、だねー」
そう言って俺らは広場までに行くんだけど、この時俺は恐らくあの女神でも感知できない魔力を少しだけだが感知していたことを無視したのを公開する羽目になるのだった。






私とゼノンが村の広場まで走って行くと村長がかなり怖い顔で立っていた。
「貴様ら、今まで一体どこにいた?」
声に怒気を込めて私達を見る村長。若いんだからそんなに怒ったらシワ増えるよ?
「すまぬ。少し昼寝をしていたんだ。リオナは俺を起こしに来てくれただけなので、許してやってくれないか?」
私の隣に立つゼノンが魔神とは思えない行動をとる。
「う、そうか。お前が謝るのであれば、まぁ許してやってもいいか」
村長、それゼノンが封印前のままだったらとっくに殺されてるよ?
「すまないな村長」
「ごめんなさい」
私も隣で一応謝っておく。じゃないと後でうるさいから。
「村長、そちらの二人は?」
私たちが村長と向き合っていると、赤髪の綺麗な美少女が歩いてきた。
「む?    おぉ、これはこれはシルヴィア様申し訳ありません。村の住人である子奴らが遅れてきたので、少々説教を始めようとしたところです」
いや、ゼノンが誤ったのにあの長い説教話しする気だったの!?
見てみてよ!    シルヴィア?さんも引きつった顔してるし、ゼノンもなんか驚いた顔してるし。
「それでそこの二人が広場に来なかった人たちなのですね?」
「そうです。すみません」
「別に構いませんよ。私の話など聞こうともしない人たちなんて多いですし」
(あれ?    もしかして怒って、ない?)
(そのようだな。そもそもシルヴィアは俺以外の奴にはとても心が暖かい奴だ。こんなことではいちいち怒らないさ)
そんな事でいいのかなーって思っちゃうよ私。もうどうにでもなれ。

その後、ゼノンがシルヴィアさんでも気付かない魔力に気付いたのは、この時だった……。

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