Crowd Die Game

織稚影願

覚醒。そして、再なる危機

「さて、新しく来たふたりにはテストをしてもらうよ。」
クウガが言った。
テスト、とは、やはり先程俺達がやったあの殺し合いだろう。
しかし、戦闘経験のない二人が勝てるだろうか。
「いいよー!まず私から!そっちのちっちゃい人とやりたい!」
「………なっ………女だからって俺がなめてかかると思ってたら大間違いだよ、お嬢ちゃん?」
祢々の問題発言に、憤るクウガ。
そして、クウガに煽られているとも気づかずに祢々は追い打ちをかけた。
「だって、そっちの大きい人より弱そうだもん。大きい人は私には難しそうだから、茉華ちゃんに!」
大きい人とはおそらくナードの事だろう。
しかし、ナードより弱いのは事実とはいえ、それで怒らないクウガでは無かった。
「いいだろー!お前ぶっ潰す。覚悟しとけよ!瞬殺しゅんころじゃぁぁあ!」
憤り過ぎて日本語作りやがったぞおい。
それ普通に瞬殺しゅんさつで良くね?
「瞬殺されるのそっちだと思うけどなー」
しかし、祢々は素でこんなこと言っているのだ。もちろん悪気はない。素が毒舌で天然なのだ。
「てめぇ……舐めてかかるとひどい目に遭うぞ……?」
あ、いや、それは遭いません。俺も舐めてかかってましたけど、舐めて正解だったと思います。
しかし、俺は大人なのでそれは口には出さない。
祢々とクウガ試合が始まるので、俺達は二階の観客席に座った。

「俺が合図でいいのか?」
俺は、クウガに呼ばれたので下に戻った。そして、呼ばれた内容を聞くと、審判をしてほしいとの事だ。
もちろん、やるからには公正にやる。
「あぁ。頼むよ。」
「分かった………じゃあ、始め!」
俺の合図とともに、祢々は弓を取り出し構えた。
クウガは、剣を取り出し、祢々に切りかかった。
次の瞬間。
剣によって祢々は切られた。
わけでもなく。
クウガの体に矢が数本刺さっていた。
「かっ…………なっ………!?」
クウガは驚いていた。そして………倒れた。
「な………ぁ………」
俺は驚きで声が出なかった。
まさか。祢々が、先制攻撃のように、矢を撃ち放っていようとは。思いもよらなかった。
「──し、勝負あり!」
俺はすぐに我に返り、試合終了の合図をした。
「………なんだよ………舐めやがって……」
「舐めてるんじゃないよー」
祢々は付け足すように言った。
「事実をただ言っただけだよ。」
それだけで舐めているようなものだったが、しかしそれは間違いではなかった。
ただ……事実を述べたのだ。クウガが負ける、と。
「………くそっ。」
クウガは、そう毒を吐くと、観客席に戻った。
え?審判は俺が続行なの?
そして、祢々も観客席に戻った。

「じゃあ次、茉華と、ナード。」
俺に促されるままに、茉華とナードは闘技場に来た。
「じゃあ………始め!」
一瞬だった。
俺が合図して、一瞬で。
ふたりとも、姿を消した。
そして、どこからか風がおき………物凄い鈍い音が響いた。
まさか………
「二人ともおんなじような速度で切りあってんのか……?」
つまり二人共音速ぐらいの速度で切りかかっている。という事だ。
「まじかよ…………こっち来たの少し前だってのに………もう順応したのかよ……」
早すぎる。俺はもっとかかっていたのに。
しかし凄まじい戦いである。衝撃波がどんどん………
ん?こっちに衝撃波っぽいものが段々近づいてきて……る?
「って二人共俺のとこに来るなよおい!狙ってんだろ! 」
気のせいじゃない。こっちきてる。
「だって、ハーデスとかいう変な名前つけてるし、古川がうざかったから。」
「さっきぼこぼこにやられたからな。仕返しでもしようかと思って。」
2人とも酷くない!?
特にクレナイの方!理不尽すぎだろ!
しかしまぁ、俺にも意地というものがあるわけで。
ここで逃げ出すのは男らしくないと思った。だから逃げなかった。
ただ、そのまま突っ立っている気もなかった。
何をしたか。決まっている。
俺は剣を取り出し。
「秘剣………」
使えるかどうかはわからないが、秘剣・辻斬りをしようとした。
ナードの方は試験官なのであらかじめ見ていると思った。だから使ったのだが。
クレナイだけならまだなんとか出来る、そう思って、そう言ったのだが。
「「それはやめろーーーー!」」
二人から止められてしまった。ついでに二人の動きも止まった。
「それは!危ない!死ぬから!」
「あんなものを食らったら俺達は一撃で死ぬ!」
必死である。
ただ、気になるのだが……
ナードはまだわかる。だが、何故Crenaiまで?
「………なぁ、クレナイ。なんで辻斬り知ってんの?」
「うっ、え?」
クレナイは一瞬戸惑ったが、すぐに答えてくれた。
「時計うさぎが、急に上に来てさ。モニター出してきて、あんたらが戦ってるところ写してたからさ……」
なるほど、つまり。
時計うさぎなにしとんじゃぼけぇ…………
「しかし、まぁ、止められても支障はなかった。」
ナードはまぁまぁ、といった感じに、俺たちを止めた。
「とりあえず、合格だ。あの強さ、本気ではないだろう。」
え?あれで本気じゃないの?俺より強いの?
「クウガならば一瞬で終わっていただろうな。」
「「何言ってんのあいつリューネに瞬殺されてたじゃん。」」
俺達は声を揃えて罵倒した。故意にだ。
「なっ………お前らぁ!」
もちろん、煽り耐性マイナスのクウガは怒った。
だが、かと言ってなにかしてこれるはずもなかった。
事実だし、それに、俺達には勝てないとわかっていたからだ。
「しかし、驚きもある。まさか全員揃ってクリアとはな。今年はやはりいいものが揃っているらしい。」
ナードはそう言った。
しかし……俺としてはもっと強い相手のがよかったんだが。
「じゃあ、お前らどうする?ここで修行してから進んでもよし、今すぐ進んでもよし。時間をかけても、別に結果は変わらないからどっちでもいいよ。」
クウガはいつの間にか観客席から降りてきて、そう言った。
「先を急がねぇと、食料とかの問題もあるし、何よりみんなを助けられないだろ。」
「……なんで?」
クウガは俺の発言に不思議そうにしていた。
「だって、あんな上にいるんだぜ?空気が薄くて長くはいられないと思うよ。持ってあと1ヶ月……」
「あぁ、それは大丈夫。時計うさぎが空気を魔法で作ってくれてるらしいよ。」
なるほど。それなら安心なのか?
「それで、どうする?ちなみに食料も沢山あるよ。」
それなら、と
「ここに残って少し修行しようかな。だって、俺達のこの腕じゃ進んでも危ないだろうし。」
俺達はしばらく修行に勤しむことにした。

「ほっ、ほりゃ!あっぶね。」
「はっ、ふっ!おっと。」
俺はクレナイと修行をしていた。 
パワーバランス的に、ほかのものでは勝てないと思ったらしい。
だが、クレナイ曰く、修行にならないそうだ。
「………今は、ハーデス、だっけ。あんた、いつになったら……」
クレナイはため息を吐きながら呆れたように言った。
とは言っても、クレナイは肩で息をしている状態なので、疲れて、かもしれないが。
「──あんたいつになったら、本気出してくれるの?」
そう、修行にならない理由はこれらしい。
実は、俺にも自覚ないのだが、どこかで力をセーブしているらしい。
つまり本気を出していないのだ。
俺が本気を出さないと俺の修行にはならない。
もちろん自分でどうにか出来る話ではないのだが……。
「そうは言っても、俺の本気がどんなものかも俺自身知らないし……」
俺は本気を出しているつもりだし、出していないのなら出したことがないはずだ。
「それに、そっちが本気を出して互角ってことは、俺が本気を出したら誰も俺に勝てなくなるじゃないか」
別に煽った訳では無いのだが、しかし事実は事実。言葉を選ぶべきことではあるが、言わなければ仕方が無い。
「その場合は頑張ってそれに合わせる。そうすればいい」
とは言っているが、実質それができるのかと言うと、答えはノーだ。
ほぼ不可能に近いだろう。初めから強いやつほど、強くなりにくいものだ。
「それに、あんたはコボルトロードの時に本気に近い力を出したことがあった。」
「……え?俺は普通に戦ってた気がするけど……」
いや、しかし、力が湧いてきた感覚があった。それが本気なのだろうか。
「いや、あんたは普通の人間じゃない。剣士としての力以外の力があるはず。」
「い、いやいやいや。あるはずがないでしょ。俺は今まで普通に……」
…………あれ?
「………?普通に、なに?」
……どうしよう………
「───中学までの記憶が………ない………」
「…………え!?」

俺の突然の問題発言に、試験官も交えて会議のようなものを行った。
もちろん議題は、俺の記憶についてだ。
「なんでだと思う………?」
クレナイのその言葉から始まった。
しかし、考えがついている者はいない。
「………時計うさぎがそんな仕掛けをほどこした……とか?」
「いや、その必要がなんであいつにあるんだ?普通に考えてないだろう。」
「でも、それ以外誰も考えられないよー?」
「そ、そもそも、理由が分からないよ。誰がやったとしても。」
みんな、それぞれ違った意見を出してくる。
「あ、あのな、みんな。俺の記憶、ないって言っても、全部じゃないんだ。」
俺は少し紛らわしい言い方をしてしまったようで。
「なくなったのは一部だけ。誰かと一緒にいたってのは覚えてるんだけど、誰と何をしたのかまでは………」
それに、ある期間の記憶がガラッと抜けている。ただそれだけで、ほかの記憶は覚えている。
「しかも、俺の記憶力が悪いからかもしれないし。ほら、俺昨日の晩飯も覚えれないぐらいだからさ!」
「昨日の晩飯を覚えてないのはやばいよ。毎日同じの食べてるのに。ってかよく飽きないよね。」
さすがに無理あったか。俺はコボルトロードの時以来、ベイクラビットの肉を食べていた。
あの肉にハマったのだ。
「でも、調べようにも、彼の経歴とか知らないし……」
「と、というか!調べてもなんも始まんないでしょ!強くなるわけでもないし!」
俺はなんかこの空気が嫌だったので、話題を変えたかった。
だが、変えさせてくれなかった。
「そうもいかない。その記憶に、あんたの強さの秘密があるかもしれない。」
「そもそも、コボルトロードんときのあれ。あれは剣士としての力じゃない。そんじゃお前の過去になにか隠されてるのかもしれねぇ。」
とは言っても………
クウガやクレナイが言うように、やはり俺には剣士としての力以外、別の力があるのだろうか。
「………考えていても仕方が無いな。しかし、コボルトロードの時は怒りに力を任せていたからああなったようだった。だが、俺の時も怒りに力を任せていたはずなのに、ああはならなかった。それもなにか関係するのか?」
そんなことを言われても。
「怒りの度合い………とか?」
「あれ、少しでもその度合い違ったのかな?僕からしたらそうは見えなかったけど」
「俺も、わかんなかった。でも、言われてみれば、ナードの時は………落ち着いていたかもしれない。」
しかし俺でも気づきにくい程度にだ。
それだと発動条件と言えるのだろうか………
「………仕方ない。こちらもこちらで調べておくよ。君たちは修行をしているといい。」
「あ、いや、俺達もそう長くここにいるつもりはなくて……」
「え?」
「そろそろ行ったほうがいいかなって思って……」
長居しすぎたから。みんなが心配する。
「そうか。なら、俺達も一緒に行こう。」
ナードは突然にそんなことを言い出した。
試験官としてそれはいいのか?
「一応、仕事は終えたからな。この先少しでも困ることが出来ると思う。」
「そうだね。それもすぐにくると思うよ。僕もすぐに調べて追いつくよ。」
それは心強い。頼もしすぎる味方がついた。片方弱いけど。
「おい、いま僕を馬鹿にしたろ」
気のせいだろ………。

次の日、俺達はコロッセウムを出発した。
クウガは調査のため少し遅れるといい、別れた。
「しかし、洞窟抜けて建物で戦ったら次はまた洞窟か……」
先に進むための道は洞窟だった。
しかし今度は一本道のようだ。
「また、あの仕掛けとかないよね?」
マーリンは恐る恐るといった感じで聞いてきた。
あの仕掛け、とは恐らく、俺達が迷わされたあの陰陽術だろう。
「あったらまたマジックキャンセルを使えばいい」
俺は一言そう言うと、先に進んだ。

「…………長い。」
俺達は、あれから約一時間、歩き続けた。
まさかまた?と思い、壁に傷をつけてみたが、傷のついた壁は一向に見つからなかった。
「長すぎだろ………」
「これはもとからこんな感じなの……?」
俺達は随分と疲労しつつも、歩くことに集中した。
すると、今まで黙っていたナードが口を開いた。
「確か、この道はマラソン選手が半日ぐらいかかるような道だと聞いた気がする……」
「「「……………えっ!?!?」」」
俺達は声を揃えて叫んだ。
あまりの驚愕に顎が外れそうだ。
「なんだよそれ!長すぎだろ!」
「それって私たち歩いてて一日でつくの!?つかないよね!?」
「さすがの私も、それには驚きだよ……」
もはやこの道は先へ進むための希望への道ではない。
デスロードだった。というか、デスマーチだった。
「ていうか、これ、俺ら生きて進めるのか……?」
そこだった。一番の問題は生きていられるかどうか。
たとえ辿り着けたとしても、死にかけだと話にならない。
「飯とか食う暇ねぇだろ………」
俺が呟いた時だった。
「おーーーい!……………はぁ、はぁ……やっと追いついた、もう3分の2は進んでるじゃん……」 
クウガが来た。
どうやら、調べ終わったらしい……
「なにか分かったのか……?」
「あ、あぁ、うん、それは分かったんだけど………それより先に進んだ方がいいと思うよ。もうみんな集まってるって聞いた。」
「え?みんな集まってる?」
それって……
「急がなきゃやばいやつ?」
「やばいやつ。遅刻だよ。」
うげぇ…………
「とにかく急ごう!」

俺達は、やっとの思いで出口に辿り着いた。
出口には、何人もの人がいた。
どうやら、ほかの出口から来ているようだ。穴がいくつもあった。
「やっときたな……」
その中のひとりの男が呟いた。
「俺はGaranだ。これからもよろしく頼む。」
ガランと男は名乗った。
「あ、お、俺はハーデス!よろしくな。」
「わ、私は、マーリンです!よろしくお願いします!」
その連鎖でか、全員が順に自己紹介をしていった。
「──それで、この集まりはなんなんだ?ここで戦えってことか?」
俺は、一番の疑問点を聞いた。
「いや、まだ分からん。時計うさぎも、全員揃ってからだって………」
なるほど。しかし、それならばもうそろそろ言われてもいいはずだが………
「いや、どうやら参加者はもう一人いるみたいだね」
クウガが、誰の姿も見えない穴を見て言った。
そしてその奥から………爆発音のような音が聞こえた。
「うがぁぁぁぁぁあ!」
奥からその声は走ってくる。
凄まじい勢い出来ていることがわかる。
そして、それと同時にガリガリと、何かを削るような音がした。
「な、なんだ………?」
ここにいる誰もが思い、感じていることである。
そしてその音は………姿を現すと同時に飛んだ。
そして………左手に持っているものを地面に叩きつけた。
その持っているものとは………
「お、おい……まさか、あれ……」
「ちょっ……やばくねぇか………?」
そう、叩きつけたそのものは。
人間だった。人間の頭を持って叩きつけたのだ。
「ってことは……………陸が上がった……?」
その、叩きつけた本人は。
すごくガタイが良く、もしかしたら、ナードよりも力があるのではないか、と思うほどだった。
そして………立ち上がった。
「なんだァ!この場所はァ!全ッ員弱そうじゃねぇか!今からここで殺し合いでもするのかァ?いや、するよなぁ!?ひゃっはァ!楽しそうだぜぇ?」
その男は笑いながら、そう叫んだ。
しかし何も言い返す者はいなかった。
ふたりを除いて。
「なぁ、なんで人殺してんだよてめぇ…………味方だろーが……」
「弱いってのは聞き捨てならないわね。訂正しなさい。」
俺と、クレナイだった。
しかし、俺はそのままでは勝てない気がした。だから。
拳に力を入れた。何故かはわからない。
だが、それに呼応するように、拳は光った。
さらに。握りこぶしの中から剣を出した。
引き抜いたのではない。現したのだ。
顕現させたのだ。
「あぁ、そうそう。ハーデスなんだけどね」
唐突にクウガが話し出した。
もちろん、俺の耳にはあまり入っていない。
既に……二人は動き出していた。
「ん?──がっ……!?」
その狂った男は、上に吹き飛ばされた。
その男は………二人によって拳で飛ばされた。
クウガはその中でも続けた。
「ハーデスの過去、すごいよ。本当は、時計うさぎも言う予定だったんだろうね。すんなり調べさせてもらえたよ。」
しかし俺は相変わらず聞いていない。聞いているのは、マーリンたちだ。
俺は……連撃を繰り出した。
「秘剣・風竜………!」
少し回転し、連続で切り刻む技だ。
秘剣シリーズは……あのコボルトロードの時以外使えていない。
つまりどういう事か。
俺は、今は一切の落ち着きもなかった。
発動条件は………完全なる怒り、そのものだった。
『覚醒』しているのである。
俺はその秘剣が終わり次第すぐに。次の技へと移行した。次の技は……剣技ではなかった。
「………チェイン・バインド」
魔法を使ったのだ。
そのまま男は、鎖に巻かれ、身動きを封じられた。
俺が完全勝利したのだ。
「てめぇ………何簡単に人殺してんだよ………命だって………大事なんだよ……」
俺は今、悔しそうな顔をしているだろう。
悲しいからだ。その、無意味な死が。
「…………」
その男は、そのまま何も言わず、ただ、大人しく捕まっていた。

「それで?ハーデスの過去がなんなの?」
いつの間にかクレナイは攻撃から外れて、下にいたようで。
俺が戻った頃に、そう切り出した。
「あー、そう。ハーデスの過去なんだけどね。出自が……」
「どこなの?」
「………魔法使いの一族、らしいよ。」
クウガは平然と、しかし言いにくそうに言った。
そして、みんなは驚きを隠せず。
「「「「……………ええぇぇぇえ!?」」」」
驚愕の叫びをあげた。
「黒魔一族って言う、代々魔法使いだった一族で、その血を引いてるんだ。だから、さっきの技とか……」
「で、でも!なんで記憶を消してるの!?記憶が無いのには関係が……」
「恐らくだが……」
今度はナードが口を開いた。
「抜けた記憶は、黒魔一族と会った時の記憶……ではないか?」
なるほど、それなら納得できる。
なぜ、一部の記憶が抜けているのか、記憶が無い期間の前の記憶はあったのか。
「じゃあ………あの魔法の知識は……」
マーリンが呟いた。
みんなはそれを聞き逃さなかったようで、疑問に思った。
「魔法の知識?って言うと?」
「いや、その………陰陽術と魔術との関係性とか、マジックキャンセルとか……魔法についての知識がすごいじゃん?」
「………え?ちょっと待って?」
どうかしたのだろうか。クウガはおかしそうに言葉を止めた。
「なんで記憶を失っているのに………魔法の知識はあるの……?」
………………あ。
「ハーデス、お前もしかして………」
ちっ!ちょっとやばいかなー…………
「魔法使えるってことは知ってたんじゃないのか!?」
…………やっぱり、隠し通せないのか………。
「………はぁ…………バレたら仕方ない。魔法使いってのは知ってたよ。」
魔法についての知識も、魔法の使い方も。
「ただ、記憶が抜けてるってのも本当だし、さっきの剣技とかはわからない。」
魔法についても、多少使えるという程度だ。
「いや………まずさ。」
「………うん。」
「だよね………」
なんだろうか。みんな言いたそうなことがあるようで。
と、思っているとみんなが口を開き一斉に。
「「「使えるんなら最初から言えよ!」」」
叫んだ。
あれ、これもしかして…………俺ピンチ………?

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