《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
119話「ヒューリマン・サディ Ⅰ」
サディ国現国王――ヒューリマン・サディは苛立っていた。
玉座に座っている。
床も天井も木組みになっている。耐火性能の高い『スフィラの樹』で組み上げられている。
左右の壁際には、色とりどりの果実を実らせた花壇が設置されている。室内には果実と樹の香りがただよっていた。女の香りもする。胸当てと腰巻だけをつけた軽装の女たちが、左右にはべっていた。
「ヴァルフィめ……」
ヒューリマンは苦々しくつぶやいた。
玉座から立ち上がり、正面にある大きな窓に近づいた。竜騎士軍の様子を見下ろすことができる。
日食がはじまり竜騎士軍は異様に輝くランタンを灯している。
「いかがいたします? ヒューリマンさま」
騎士のひとりがそう尋ねてくる。
「籠城だ」
「しかし……」
「今、外に出るのは危険だ」
「外にいる者たちがクロエイになるかもしれませんよ」
それを怖れている。
竜騎士軍は血質値の低い者が多いと聞く。なかには、サディ国の村人もまざっていると聞いている。
血質値の低い者たちは、クロエイを引き寄せる。あんな汚らわしき者たちが、城の前にいると思うだけでゾッとする。
オマケに城内の騎士たちも士気がない。ときおり、ヴァルフィが声かけを行っているためだ。
「国王を殺した者に大義はありません」だとか、「暗闇におおわれてサディ国は滅亡しますよ」といった内容だ。
日食がはじまると聞いたから、血質値の低い者たちを殺処分しようと思ったのだ。国王がかたくなにそれに反対した。だから暗殺という強硬手段をもってして、国王を排除した。やり方が強引だったという自覚はある。
「日食がはじまる。クロエイが沸く。血質値の低いものを処分する。それの何が間違えているというのだ」
ヴァルフィは理解してくれなかった。
のみならず、竜騎士軍という援軍を引き連れて戻ってきたのだ。
「降伏いたしましょう。ヒューリマンさま」
「なに?」
「このままでは外にいる者たちがクロエイになってしまい、サディ城はクロエイに囲まれてしまいます。サディ国だけではありません。村や町もすべて暗闇におおわれてしまうのですよ」
「降伏してどうなるというのだ」
「この事態の対処方法を、ヴァルフィさまに占ってもらいましょう」
「ヴァルフィは敵となったのだ!」
ヒューリマンは剣を振るった。
忠告をうながしていた騎士の首がとんだ。見ていた者たちから剣呑な雰囲気がたちのぼっていた。
「片付けておけ」
そう言い捨てて、ヒューリマンは玉座に座りなおした。
(おのれ……)
と、ヒューリマンは下唇を噛んだ。
この国の王になるのは順当にゆけば、ヒューリマンのはずだった。
しかしある日、国王はヴァルフィという女を拾ってきた。そして養子として迎え入れた。ヴァルフィは優秀な女だった。未来を占いチカラは、たびたびこのサディ国を救ってきた。
ヒューリマンはわかっていたのだ。
(父は――)
国王は――。
血のつながっているヒューリマンではなく、血のつながっていないヴァルフィに王座を継承させるつもりなのだ――と。
あんな女さえ来なければ、サディ国の王座も父からの愛情も、ヒューリマンは一身に受けていたはずなのだ。
「な、なにが龍神族だ!」
たしかに優秀な女かもしれない。
しかし、あの女は金の杯さえなければ、何も占うことはできないのだ。ヒューリマンはその金の杯を、おのれの足置きにして一時の優越感に浸っていた。
玉座に座っている。
床も天井も木組みになっている。耐火性能の高い『スフィラの樹』で組み上げられている。
左右の壁際には、色とりどりの果実を実らせた花壇が設置されている。室内には果実と樹の香りがただよっていた。女の香りもする。胸当てと腰巻だけをつけた軽装の女たちが、左右にはべっていた。
「ヴァルフィめ……」
ヒューリマンは苦々しくつぶやいた。
玉座から立ち上がり、正面にある大きな窓に近づいた。竜騎士軍の様子を見下ろすことができる。
日食がはじまり竜騎士軍は異様に輝くランタンを灯している。
「いかがいたします? ヒューリマンさま」
騎士のひとりがそう尋ねてくる。
「籠城だ」
「しかし……」
「今、外に出るのは危険だ」
「外にいる者たちがクロエイになるかもしれませんよ」
それを怖れている。
竜騎士軍は血質値の低い者が多いと聞く。なかには、サディ国の村人もまざっていると聞いている。
血質値の低い者たちは、クロエイを引き寄せる。あんな汚らわしき者たちが、城の前にいると思うだけでゾッとする。
オマケに城内の騎士たちも士気がない。ときおり、ヴァルフィが声かけを行っているためだ。
「国王を殺した者に大義はありません」だとか、「暗闇におおわれてサディ国は滅亡しますよ」といった内容だ。
日食がはじまると聞いたから、血質値の低い者たちを殺処分しようと思ったのだ。国王がかたくなにそれに反対した。だから暗殺という強硬手段をもってして、国王を排除した。やり方が強引だったという自覚はある。
「日食がはじまる。クロエイが沸く。血質値の低いものを処分する。それの何が間違えているというのだ」
ヴァルフィは理解してくれなかった。
のみならず、竜騎士軍という援軍を引き連れて戻ってきたのだ。
「降伏いたしましょう。ヒューリマンさま」
「なに?」
「このままでは外にいる者たちがクロエイになってしまい、サディ城はクロエイに囲まれてしまいます。サディ国だけではありません。村や町もすべて暗闇におおわれてしまうのですよ」
「降伏してどうなるというのだ」
「この事態の対処方法を、ヴァルフィさまに占ってもらいましょう」
「ヴァルフィは敵となったのだ!」
ヒューリマンは剣を振るった。
忠告をうながしていた騎士の首がとんだ。見ていた者たちから剣呑な雰囲気がたちのぼっていた。
「片付けておけ」
そう言い捨てて、ヒューリマンは玉座に座りなおした。
(おのれ……)
と、ヒューリマンは下唇を噛んだ。
この国の王になるのは順当にゆけば、ヒューリマンのはずだった。
しかしある日、国王はヴァルフィという女を拾ってきた。そして養子として迎え入れた。ヴァルフィは優秀な女だった。未来を占いチカラは、たびたびこのサディ国を救ってきた。
ヒューリマンはわかっていたのだ。
(父は――)
国王は――。
血のつながっているヒューリマンではなく、血のつながっていないヴァルフィに王座を継承させるつもりなのだ――と。
あんな女さえ来なければ、サディ国の王座も父からの愛情も、ヒューリマンは一身に受けていたはずなのだ。
「な、なにが龍神族だ!」
たしかに優秀な女かもしれない。
しかし、あの女は金の杯さえなければ、何も占うことはできないのだ。ヒューリマンはその金の杯を、おのれの足置きにして一時の優越感に浸っていた。
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント