《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

110話「セリヌイア会議」

 翌日の昼。



 セリヌイア城の会議室にて、会議が行われることになった。議題はもちろん、ヴァルフィの件だ。



「第一王子に政権を乗っ取られた。酷い差別主義者であるため、助けて欲しい」というのが、ヴァルフィの要求だ。 



 もっと早くに会議を開きたかったのだが、その情報の真偽を探るべくインクが奔走していたのだ。



 インクが情報を持ち帰ったのが今朝。ヴァルフィを追いかけていた騎士たちは、サディ国第一王子の手の者で間違いはなく、ヴァルフィの証言にもウソはないだろうという結果がでた。



 また、国王がサディ国にたいしてどう考えているのかも知る必要があった。「好きにせよ」という返答をもらった。



 攻めるも捨て置くも、龍一郎に任せるということだろう。手腕を試されているのかもしれない。



 ただ「日食」の件に関しては、ゼルン王国全土に通達しておくということだった。



 そこで会議が行われることになったのだ。



「この問題、いかがいたします? 相手は小国ですので、見捨てるという選択肢も充分ありますが」
 エムールはそう切り出した。



 会議室には巨大な円卓が置かれている。円卓を囲むように龍の石造が置かれている。ケルゥ侯爵の趣味だったのだろう。



 円卓には龍一郎、エムール、インク、メイド長、セリヌイア騎士団長、セリヌイア騎士副団長が座っている。龍一郎が個人的に雇っている騎士――つまりは私兵だ。この騎士たちも血質値には関係なく仕官させている。



「しかし、ここでサディ国に恩を売っておけば、ゼルン王国はこれから先、交易という面では非常に有利になるでしょう」



 と、騎士団長のセリオット・グラルダが言った。



 筋骨隆々の男で、龍一郎もたまに剣の稽古をつけられる。もともと冒険者組合でクロエイ退治を仕事としていたそうだが、龍一郎の考えに賛同して、セリヌイア騎士として加入してくれた1人だ。



 エムールと騎士団長がふたりして、返答を待ち受けるように龍一郎の顔を見つめた。



「見過ごすことはできない。サディ国の政治問題に首を突っ込みたくはないが、日食の話が気になる」



 日食が起こり、レオーネ全土が闇に覆われる。そしてクロエイが大繁殖するというのだ。


  
 止める方法をヴァルフィに占ってもらいたいのだが、占いに使う必要のある道具を、第一王子に奪われている――と言う。



「日食というのも、ホントウに起きるのか怪しいものですがね」
 と、セリオットがつぶやいた。



「いちおう真実と考えておくべきだ。ヴァルフィが龍神族であることは間違いはない。龍神族は何かしら特別な能力を持っているはずだから」



「ならば、サディ国の第一王子とやらから、その道具を奪い返す必要がありますね」
 と、エムールが言った。



「その通りだ」
 龍一郎はうなずく。



 エムールは腕を組んだ。
「ただ、そうなると、これはレオーネ全土の問題になります。ゼルン王国の領主たちから援軍を要請するという手もありますが」



 難しい。
 どこが龍一郎の応援に応えてくれるか……。



 たいはんの貴族たちは〝純血派〟に圧力をかけられている。龍一郎の応援にこたえることはできない。
 頼めるとすれば、グランドリオンぐらいだ。



「相手は一城しかない小国。援軍など必要ないでしょう。このオレが騎士を率いて、第一王子とやらを討てば良だけの話です」
 セリオットがそう言って立ち上がった。



「いや。必要ないだろう。オレが行けば良い」
 龍一郎は言った。



 老赤龍さえいてくれれば、それこそたった一城の相手などどうにでもなる。あわよくば降伏してくれるかもしれない。



「いいえ。リュウイチロウさまは、ここに留まり下さい」
 と、エムールが遮ってきた。



「なぜ?」



「今、セリヌイアの領内は乱れております。貴族たちがいつ反乱を起こすかわからないような状況。血質値の低い者たちの御旗であるリュウイチロウさまと、反乱の抑止力となる老赤龍は動かすべきではないか――と」



 先日の、騒動が龍一郎の脳裏をよぎった。
 ガルス男爵が暴れた件だ。
 言われてみれば、そうかもしれない。



「なら、どうすれば良い?」



「グランドリオンからの援軍を借りましょう。そして私とセリオット騎士団長で、サディ国に行ってまいりましょう」



「軍事力的には大丈夫か?」



「心配ありません。サディ国は近隣諸国との交易で成立していた弱小国。それに、あのヴァルフィはサディ国の第一王女。第一王子が国王を暗殺して、王座についたというのであれば、大義はこちらにあります」
 エムールは自信満々にそう言った。



「そうか」



 自国のことではないとはいえ、これはチョットした戦争だ。自分の命令で多くの騎士が血を流すことになるかもしれない。そう思うと気が重たかった。


 兵を動かすのは、はじめてなのだ。

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