《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
108話「すれ違い・ベル」
ベルは領主館の空き部屋を掃除していた。
サディ国の第一王女であるヴァルフィ・フォルキアはしばらく、このセリヌイアに留まるということだった。そのため、ヴァルフィの寝室をつくる必要があったのだ。
「はぁ」
ベルはため息を落とした。
リュウイチロウがそのヴァルフィとベッドの上で、睦まじくしている場面を見てしまった。それが脳裏にこびりついて、離れなかった。
(私ごときでは……)
他の女性のように、リュウイチロウさまから見てもらうことは出来ないのだと思った。
カワイイ。
美しい。
そう思ってもらえるように、ベルはいろいろと努力している。髪を伸ばしてみたり、マツゲをカールさせてみたり、顔をマッサージしてみたり……。
しかし、ムリがある。顔の傷だけは誤魔化せない。白粉を塗ったりしているが、逆に不気味になってしまう。
(それに……)
リュウイチロウの周囲には美しい女性が多い。
赤毛に凛々しい顔をしたエムール。少年のような清らかさのあるインク。ゾッとするほどの美貌を持つフィルリア姫。そして、不気味ではあるが、それが魅力であるヴァルフィ。
それだけではない。リュウイチロウが貴族たちからお見合いを申し込まれていることも知っている。
(私が食い込める隙なんてない)
そんなことは、わかりきっている。
けれど――もしかすると――と期待してしまうのだ。
リュウイチロウはフィルリア姫ではなくて、ベルのことを選んでくれた過去がある。それに、「付き合ってくれ」と面と向かって言われたことだってあるのだ。
「あう……」
ホウキを掃く手をとめた。
思い出したのだ。
付き合ってくれと言われたのは、風呂場でのことだった。互いに裸と言っても良い状況だった。
自分もずいぶんと大胆なことをした覚えがある。
赤面をおぼえた。
「はーい。こっちに持って来てちょうだーい」
と、メイド長がメイドたちに指示を出して、ドレッサーを運び込ませていた。ベルは床を掃きながらそれを見ていた。ドレッサーにベル自身の顔が映しだされた。醜い傷だらけの顔だった。
「はぁ」
右まぶたから左唇にかけて、ただれた皮膚に手を当てた。
このケガさえなければ、もっと大胆に、もっと奔放に、リュウイチロウさまの胸に跳びこむことができるのに――と唇をかみしめた。
「ここが私のお部屋になるのですね。メイドさんたち、ありがとうございます」
と、入ってくる者があった。
紫色の髪を長く伸ばしており、右目が前髪に隠されている。左目が不気味なほどらんらんと輝いている。スタイルが良くて、胸元が大きくふくらんでいた。
ヴァルフィだ。
目があった。
ベルは負けじと見返したのだが、ヴァルフィは「ふん」と小さく笑って顔をそらした。
(私は……)
ライバルとさえ見られていないのだ。
それはトテモ悲しいことだったが、ベルは心を強く持った。リュウイチロウさまは、やっぱり気位の高い人と結ばれるべきだ。自分は2番目でも、3番目でも――あるいは、眼中に入っていなくとも良い。
ただ、彼の近くにいられるだけで、それだけで良いのだから。
ベルは再び部屋の掃除をつづけた。
サディ国の第一王女であるヴァルフィ・フォルキアはしばらく、このセリヌイアに留まるということだった。そのため、ヴァルフィの寝室をつくる必要があったのだ。
「はぁ」
ベルはため息を落とした。
リュウイチロウがそのヴァルフィとベッドの上で、睦まじくしている場面を見てしまった。それが脳裏にこびりついて、離れなかった。
(私ごときでは……)
他の女性のように、リュウイチロウさまから見てもらうことは出来ないのだと思った。
カワイイ。
美しい。
そう思ってもらえるように、ベルはいろいろと努力している。髪を伸ばしてみたり、マツゲをカールさせてみたり、顔をマッサージしてみたり……。
しかし、ムリがある。顔の傷だけは誤魔化せない。白粉を塗ったりしているが、逆に不気味になってしまう。
(それに……)
リュウイチロウの周囲には美しい女性が多い。
赤毛に凛々しい顔をしたエムール。少年のような清らかさのあるインク。ゾッとするほどの美貌を持つフィルリア姫。そして、不気味ではあるが、それが魅力であるヴァルフィ。
それだけではない。リュウイチロウが貴族たちからお見合いを申し込まれていることも知っている。
(私が食い込める隙なんてない)
そんなことは、わかりきっている。
けれど――もしかすると――と期待してしまうのだ。
リュウイチロウはフィルリア姫ではなくて、ベルのことを選んでくれた過去がある。それに、「付き合ってくれ」と面と向かって言われたことだってあるのだ。
「あう……」
ホウキを掃く手をとめた。
思い出したのだ。
付き合ってくれと言われたのは、風呂場でのことだった。互いに裸と言っても良い状況だった。
自分もずいぶんと大胆なことをした覚えがある。
赤面をおぼえた。
「はーい。こっちに持って来てちょうだーい」
と、メイド長がメイドたちに指示を出して、ドレッサーを運び込ませていた。ベルは床を掃きながらそれを見ていた。ドレッサーにベル自身の顔が映しだされた。醜い傷だらけの顔だった。
「はぁ」
右まぶたから左唇にかけて、ただれた皮膚に手を当てた。
このケガさえなければ、もっと大胆に、もっと奔放に、リュウイチロウさまの胸に跳びこむことができるのに――と唇をかみしめた。
「ここが私のお部屋になるのですね。メイドさんたち、ありがとうございます」
と、入ってくる者があった。
紫色の髪を長く伸ばしており、右目が前髪に隠されている。左目が不気味なほどらんらんと輝いている。スタイルが良くて、胸元が大きくふくらんでいた。
ヴァルフィだ。
目があった。
ベルは負けじと見返したのだが、ヴァルフィは「ふん」と小さく笑って顔をそらした。
(私は……)
ライバルとさえ見られていないのだ。
それはトテモ悲しいことだったが、ベルは心を強く持った。リュウイチロウさまは、やっぱり気位の高い人と結ばれるべきだ。自分は2番目でも、3番目でも――あるいは、眼中に入っていなくとも良い。
ただ、彼の近くにいられるだけで、それだけで良いのだから。
ベルは再び部屋の掃除をつづけた。
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