《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士
106話「日食」
2人になった。
「リュウさま。もっとこちらに近づいてくださいませ」
「はい」
ヴァルフィは龍一郎の耳元でささやくように話をする。甘い吐息が龍一郎の耳朶をしびれさせた。
「リュウさまは龍神族なのでしょう?」
「よくご存知で」
「私も同じ龍神族なのですよ」
「え!」
ヴァルフィはやんわりと龍一郎のことを、ベッドの中に引きずりこんできた。驚きのあまり龍一郎はベッドの中に簡単に誘い込まれた。
ヴァルフィのカラダからは、毒花の花粉でも散っているかのようだった。龍一郎のカラダはヴァルフィの匂いや感触に陶酔して、強く抵抗することができなかった。
「血質値は100ちょうど。私の血は近い未来を占うことができるのです」
顔が近い。
龍一郎がヴァルフィを押し倒すようなカッコウになっていた。ヴァルフィは龍一郎の首に腕をからめてきた。
龍一郎の心臓が緊張でバクバクと音をたてていた。
「すると、レオーネに13人いるという龍神族のひとり――というわけですか?」
あ、と龍一郎は思い当ることがあった。
そう言えば、ヴァルフィを救い出したときに、老赤龍が何か物言いたげな様子だった。老赤龍はヴァルフィが龍神族だということを知っていたのだろう。
「私の占いでは、リュウさまを頼ると良いという結果が出たのです。こうして直接会ってみると、リュウさまは私の想像よるも、何倍もステキな殿方でした。リュウさまを頼って正解でした」
ヴァルフィが唇を近づけてくる。
薄紅色の唇が軽く突き出された。
龍一郎は理性をふりしぼって、ヴァルフィの小さな肩を押し返した。
「そ、それは良いとして、どうして騎士に追われていたんですか?」
ヴァルフィの脚が、龍一郎の腰に巻きついてきた。積極的というよりも、ここまで来ると淫らとさえ言える。
「少し話が長くなるかもしれませんが、どうか最後までお聞きください」
「もちろんですよ」
「私はこのレオーネという世界の未来から召喚された者です」
「未来人ってことですか」
はい、とヴァルフィがうなずいた。
龍一郎は異世界人。
フィルリア姫は過去人。
そしてこのヴァルフィは未来人というわけだ。
老赤龍はさまざまな世界や時代から、龍神族にふさわしい人物を呼び集めたと言っていた記憶がある。
「私の時代では、人間はほとんどおりません。村や町といったコミュニティはなく、人々は放浪して過ごしておりました」
「どうしてコミュニティがないんです?」
ヴァルフィの表情がかげる。
このときはじめて、どうしてヴァルフィが不気味に見えるのが気づいた。ヴァルフィは大きな左目をしているが、右目は髪に隠れてほとんど見えないのだ。
「集団で生きるほどの人口がないのです。大半の人間が暗黒病にかかり、クロエイになってしまったのです」
「そんな……」
クロエイと化したクラウスやマチス侯爵のことが、龍一郎の脳裏をよぎった。みんな、ああなってしまうのかと思うと、戦慄をおぼえる。
「絶望の日は近づいております。近いうちに日食がはじまる」
「日食!」
太陽が影になる。
それはレオーネにとっては、重大な意味をなす。
「はい。3日3晩、太陽が覆い尽くされて、暗闇が訪れます。太陽が隠れることにより、普段の夜よりもクロエイが活発化する。それが人類滅亡のはじまりなのです」
ヴァルフィのささやきには、深刻さが帯びられていた。
「どうすれば防げるんですか?」
「私の血による占いで、その方法がわかるはずなのですが、私の占いには独特な器が必要なのです」
「その器はどこに?」
日食がはじまるというのならば、すぐにでもその対処方法を導き出してもらわなくては困る。
それが私の追われている件と関係してくるのです――とヴァルフィは続けた。
「私は、龍神族としてのチカラを認められて、サディ国の王女という立場になりました。王女という立場を利用して、血質値の低い者たちを虐げないような政策を進めてきました」
しかしです――とヴァルフィは続ける。
「先日、サディ国の国王が暗殺されてしまいました」
「国王が――暗殺ですか」
それは物騒な話だ。
龍一郎も〝純血派〟からの暗殺の危機があるために、他人事とは思えない薄ら寒さを感じた。
「国王暗殺により、サディ国の政権は第一王子がにぎることになってしまった。その第一王子が、私の占いに必要な器を持っているのです。私の占いを利用しようと考えているのでしょう」
「それで、第一王子に利用されるのを嫌って、ヴァルフィさんは逃げてきた――ってことですか」
「はい。第一王子は酷い差別主義者なのです、血質値の低い者を次々と殺してまわっているのです」
「つまりさっきの騎士たちは、そのサディ国第一王子の手の者――って認識で間違いないですか?」
「さすがリュウさま。ご明察のとおりです」
明察というか、そこまで聞いたら誰でもわかる。
抱きついてくる。
ヴァルフィの乳房が、龍一郎の胸板に押し付けられていた。
温かくて、やわらかい。
「第一王子は私のチカラを利用しようとしているのです。私はサディ国を第一王子の悪政から救うために、リュウさまのおチカラを拝借しようと、こうして参ったのです」
「だいたい事情はわかりました」
そのとき。
トビラがノックされた。
龍一郎はあわててヴァルフィから離れようとしたのだが、ヴァルフィはそれを許さなかった。
「失礼します」
入ってきたのはベルだった。
龍一郎とヴァルフィがベッドの上で抱き合っているところを、ベルに見られたのだった。
「リュウさま。もっとこちらに近づいてくださいませ」
「はい」
ヴァルフィは龍一郎の耳元でささやくように話をする。甘い吐息が龍一郎の耳朶をしびれさせた。
「リュウさまは龍神族なのでしょう?」
「よくご存知で」
「私も同じ龍神族なのですよ」
「え!」
ヴァルフィはやんわりと龍一郎のことを、ベッドの中に引きずりこんできた。驚きのあまり龍一郎はベッドの中に簡単に誘い込まれた。
ヴァルフィのカラダからは、毒花の花粉でも散っているかのようだった。龍一郎のカラダはヴァルフィの匂いや感触に陶酔して、強く抵抗することができなかった。
「血質値は100ちょうど。私の血は近い未来を占うことができるのです」
顔が近い。
龍一郎がヴァルフィを押し倒すようなカッコウになっていた。ヴァルフィは龍一郎の首に腕をからめてきた。
龍一郎の心臓が緊張でバクバクと音をたてていた。
「すると、レオーネに13人いるという龍神族のひとり――というわけですか?」
あ、と龍一郎は思い当ることがあった。
そう言えば、ヴァルフィを救い出したときに、老赤龍が何か物言いたげな様子だった。老赤龍はヴァルフィが龍神族だということを知っていたのだろう。
「私の占いでは、リュウさまを頼ると良いという結果が出たのです。こうして直接会ってみると、リュウさまは私の想像よるも、何倍もステキな殿方でした。リュウさまを頼って正解でした」
ヴァルフィが唇を近づけてくる。
薄紅色の唇が軽く突き出された。
龍一郎は理性をふりしぼって、ヴァルフィの小さな肩を押し返した。
「そ、それは良いとして、どうして騎士に追われていたんですか?」
ヴァルフィの脚が、龍一郎の腰に巻きついてきた。積極的というよりも、ここまで来ると淫らとさえ言える。
「少し話が長くなるかもしれませんが、どうか最後までお聞きください」
「もちろんですよ」
「私はこのレオーネという世界の未来から召喚された者です」
「未来人ってことですか」
はい、とヴァルフィがうなずいた。
龍一郎は異世界人。
フィルリア姫は過去人。
そしてこのヴァルフィは未来人というわけだ。
老赤龍はさまざまな世界や時代から、龍神族にふさわしい人物を呼び集めたと言っていた記憶がある。
「私の時代では、人間はほとんどおりません。村や町といったコミュニティはなく、人々は放浪して過ごしておりました」
「どうしてコミュニティがないんです?」
ヴァルフィの表情がかげる。
このときはじめて、どうしてヴァルフィが不気味に見えるのが気づいた。ヴァルフィは大きな左目をしているが、右目は髪に隠れてほとんど見えないのだ。
「集団で生きるほどの人口がないのです。大半の人間が暗黒病にかかり、クロエイになってしまったのです」
「そんな……」
クロエイと化したクラウスやマチス侯爵のことが、龍一郎の脳裏をよぎった。みんな、ああなってしまうのかと思うと、戦慄をおぼえる。
「絶望の日は近づいております。近いうちに日食がはじまる」
「日食!」
太陽が影になる。
それはレオーネにとっては、重大な意味をなす。
「はい。3日3晩、太陽が覆い尽くされて、暗闇が訪れます。太陽が隠れることにより、普段の夜よりもクロエイが活発化する。それが人類滅亡のはじまりなのです」
ヴァルフィのささやきには、深刻さが帯びられていた。
「どうすれば防げるんですか?」
「私の血による占いで、その方法がわかるはずなのですが、私の占いには独特な器が必要なのです」
「その器はどこに?」
日食がはじまるというのならば、すぐにでもその対処方法を導き出してもらわなくては困る。
それが私の追われている件と関係してくるのです――とヴァルフィは続けた。
「私は、龍神族としてのチカラを認められて、サディ国の王女という立場になりました。王女という立場を利用して、血質値の低い者たちを虐げないような政策を進めてきました」
しかしです――とヴァルフィは続ける。
「先日、サディ国の国王が暗殺されてしまいました」
「国王が――暗殺ですか」
それは物騒な話だ。
龍一郎も〝純血派〟からの暗殺の危機があるために、他人事とは思えない薄ら寒さを感じた。
「国王暗殺により、サディ国の政権は第一王子がにぎることになってしまった。その第一王子が、私の占いに必要な器を持っているのです。私の占いを利用しようと考えているのでしょう」
「それで、第一王子に利用されるのを嫌って、ヴァルフィさんは逃げてきた――ってことですか」
「はい。第一王子は酷い差別主義者なのです、血質値の低い者を次々と殺してまわっているのです」
「つまりさっきの騎士たちは、そのサディ国第一王子の手の者――って認識で間違いないですか?」
「さすがリュウさま。ご明察のとおりです」
明察というか、そこまで聞いたら誰でもわかる。
抱きついてくる。
ヴァルフィの乳房が、龍一郎の胸板に押し付けられていた。
温かくて、やわらかい。
「第一王子は私のチカラを利用しようとしているのです。私はサディ国を第一王子の悪政から救うために、リュウさまのおチカラを拝借しようと、こうして参ったのです」
「だいたい事情はわかりました」
そのとき。
トビラがノックされた。
龍一郎はあわててヴァルフィから離れようとしたのだが、ヴァルフィはそれを許さなかった。
「失礼します」
入ってきたのはベルだった。
龍一郎とヴァルフィがベッドの上で抱き合っているところを、ベルに見られたのだった。
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