《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士

執筆用bot E-021番 

105話「王女の目覚め」

 サディ国。



 エムールの話を聞いたり、書籍で調べてみた。


 サディ国は、たった一城しかない国だった。サディ国は非常に険しい森の中にある国なのだそうだ。



 森は資源の宝庫だ。その物資を武器に各国と同盟を結んでいるのだそうだ。ゼルン王国も同盟国の1つだということだった。



「森の資源というのは侮れません。サディ国は5ヵ国以上の近隣諸国と同盟を結んでいます。どこかがサディ国を独り占めしようとすれば、他の国を敵に回すかもしれない。なので誰もサディ国には手を出せないんです」
 と、エムールが教えてくれた。



「なるほど。しかし、その国のお姫さまが、どうして追いかけられたのか……」



「さあ。それは本人に聞いてみなければ」



 さきほどの女性が目を覚ました――という報せがあった。龍一郎たちは女性のもとへ行くことにした。



 女性は、領主館の寝室に寝かせていた。
 普段は龍一郎が寝室として使っている部屋だ。



 医務室や空き部屋に運び込むという選択肢もあった。だが万がイチ、一国のお姫さまであった場合、簡素な部屋を与えることは失礼にあたるかもしれない。そういう危惧があり、龍一郎自身の寝室に運び込んだのだ。



 龍一郎の寝室は壁がレンガ調になっており、中央には天蓋つきのベッドが鎮座している。くつろげるためのソファとテーブルも置かれている。使ってはいないが、暖炉まである。



「御加減はいかがでしょうか?」
 と、龍一郎は問いかけた。



 女性はその天蓋つきのベッドの上でボンヤリしていた。まだ意識がハッキリしないのかもしれない。



 看病をしていたメイドが2人、女性に付き添っていた。



 気をつかって龍一郎の寝室を使わせたのだが、やはり別の部屋のほうが良かったかもしれない――なんて思っていた。



「あの……」
 と、女性は薄紅色の唇から声を発した。しゃべると唇のあいまから八重歯がのぞいた。それがまた彼女の不気味な魅力を際立たせている。



「なんでしょうか?」



「失礼ですが、リュウイチロウさまと二人きりにしては、いただけませんか?」



「オレは構わないけど」
 いいえ、なりません――とエムールが割って入った。



「見ず知らずの女性と、リュウイチロウさまを2人きりにするなど、ありえません。決して信用していないわけではありませんが、私はリュウイチロウさまの護衛という意味でも同席させていただきます」



 瞬間。
 女性は殺気すら滲ませたような目つきで、エムールのことを見た。瞳が異様に大きいので、凄まじい迫力があった。しかしそれも一瞬のことだ。女性は一瞬のうちにして、ボンヤリとした表情に戻っていた。



「そう――ですか」



「メイドだけでも席を外させましょう。それで良いでしょう」
 エムールが指示して、メイドを退出させた。



 これで部屋には龍一郎とエムールと、得たいの知れない女性の3人になった。



「私の名前は、ヴァルフィ・フォルキア。サディ国の第1王女です」



 彼女はそう切り出した。
 やはりお姫さまなのだ。



 部屋の入口にエムールは待機している。ヴァルフィはベッドに座り、上体だけを起こしているカッコウだ。そして龍一郎はそのベッドの隣にイスを置いて、話を聞いていた。



「王女さまでしたか。オレはまだ若輩の身。つい最近、領主になったばかりなので、作法礼節に失礼な点があるかもしれませんが、どうかお許しください」
 まず、そう先手を打っておいた。



 難癖をつけられて、戦争でも仕掛けられたら最悪だ。



「そんな。失礼だなんてめっそうもない。私はリュウイチロウさまに助けられたのです。龍騎士のウワサは、まことにウワサ通りでした。精悍でたくましく、勇気にあふれて、才知に富んでおり……」



「いやいやいや、言い過ぎですよ。そんな大層な存在じゃありません」



 いったい誰がそんなことを言っているのか。
 いくらなんでも盛り過ぎだ。



 ヴァルフィは潤いを帯びた瞳で、龍一郎の目をのぞきこんできた。ベルと同じ青い瞳をしている。でも、ベルのような澄んだ青ではない。色気があるのだ。昆虫をおびき寄せる毒花のようだという印象を受けた。



「リュウさまとお呼びしても良いでしょうか?」



 龍一郎の手の甲に、ヴァルフィが手を重ねてきた。



「リ、リュウ……ですか」
 そんな呼ばれ方など、地球でもしたことがない。



 照れ臭い。



 失礼だが――と、エムールが割って入った。



「いくら王女とはいえ、他国の領主にベタベタと遠慮もなく触れすぎではないですか? いったい何をしに来たのか、用件を教えてください」



 エムールとヴァルフィの視線が衝突した。
 火花が散っているかのようにも見受けられた。



「私は追われているのです」
「そんなことは知ってます」
 と、エムールが即座に切りかえした。



 エムールは龍のように、火炎でも吹き出しそうな勢いだった。



「とても怖い女性。私怖いです。やはりリュウさまと二人きりでお話しをさせていただかないと、これはサディ国の国家的な秘密にかかわることですから」



「ぐ、ぐぬぬぬッ」
 歯ぎしりがすごい。



 たしかにこの場にエムールがいるのは、マズイ気がした。今にもつかみかかりそうだ。なんとか納得してもらって、エムールには出て行ってもらった。



 その代わりにエムールは部屋の外で張っているので、何かあったらすぐに大声を出せということだ。

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